焼岳2025〜歩きたいには理由がある
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歩きたいには理由がある
ここ数年、地形と地質の勉強会で上高地に毎年の様に訪れる。そして、大正池から望む焼岳もよく見るようになった。
このお山は活火山で、溶岩流や山頂部の溶岩ドームが異様な姿を見せているのが最大の特徴。よって2000mを超えて辺りから植生は乏しくなり、崩れる谷も規模が大きい。
活動は現在も続いていて、大正池はこの火山の爆発による泥流で堰き止められた。山頂のドームは2300年前に爆発した溶岩と習う。
じっと見ていると噴煙を上げていることがわかる。
そんな山に登れる!?
南峰は崩壊は激しいので登山禁止だが、北峰(大正池から見える一番のピーク)は登頂できるらしい。機会があれば、あの山頂から上高地を見てみたい!
先日、乗鞍剣ケ峰に立った時も、焼岳が槍穂高の手前にど〜んと見えた。南側、それもちょっと上から見ると“丸っこい山”だな、あれなら歩けるかもと思ってしまった。
そして、我慢できずに、歩くことにした(笑)


登山口は既に1600m 穂高が見える
15台程度で満杯になる駐車場になんとか停めると、そこから穂高が垣間見える。
富山から来たという二人連れは「槍かな」と言っているので、「穂高ですよ〜」と話しかける。「テンション上がるなあ」皆で共感。
歩き始めは樹林帯を歩く。すでに亜高山の雰囲気。植林帯でなく、いきなりの自然林、あまり人の手が入っていないのだろう大きな樹木も多い。
夏ということもあり、緑は元気。天気は快晴!
南西側から歩きだしているので、まだ上高地側は見えないが、山頂からの景色は抜群だろうと期待に胸を膨らます。



亜高山の植生
最初はプロムナードでゆるやかな道が続くが、まもなく、九十九折りの山道で高度を稼ぐ。
植生は針葉樹は、「コメツガ」や「シラビソ」が多いだろうか。葉っぱを触って確かめる。シラビソだ。日本海側に多いオオシラビソはなさそう。
落城樹は「ダケカンバ」が目立ったが、カエデ属の「オガラバナ」も多く見ることが出来た。
いずれの樹木も亜高山性。
どの葉っぱも青空に映えて美しい! 元気な葉っぱを見ているとこちらも元気がもらえる。



傾斜はそうキツくはない。ただ、盛夏のまっただなか、上りが続くので、汗を拭き拭き歩く。
山全体が火成岩で出来ていると思われ、大きな溶岩の塊があるとそれを超えて階段が付いていたりすると急に傾斜がきつくなる。これが地味に苦しい。
ただ、この火成岩地帯にこれだけの豊かな植生があることに驚く。
ダケカンバはフロンティア植物だが、亜高山帯になると寒さに耐える樹木は少ないので、シラビソなどが優占種になるのだろう。
針葉樹のお陰で、太陽光が直接当たらないし、時折吹く下からの風が気持ち良い。
駐車場がすでに埋まっていたという事は、他の登山者は既に歩き出しているということ。
夏はやはり、出だしを早くするという事か。 高山とはいえ遅めの出発は暑いことに今更気が付く(汗)



下堀沢 出合
いったん緩やかになり、広場という眺めの良い場所過ぎると最後の急坂となる。
下堀沢出合 標高2050m・・・大きなえぐられた谷との出会い。
ここを過ぎると山頂の溶岩ドームの先端(つまり山頂)が見えてモチベーションが上がる。
ただ、植生が乏しくなり高木が無くなる。つまり、それは日陰が無くなることを意味する。
夏で標高は2000mは超えるし、理論上基本は約14℃も下界よりは低いので、涼しいだろうという考えはまったく甘かった。
直射日光を全身に浴び、とにかく暑い。幸い水は多めに持参しているし、スポーツ飲料もあるので熱中症にはならないだろうと思いつつ、
一歩一歩、ガレ場を上に上にに歩く。それにしても辛い。秋にすればよかった。
11時を過ぎると、過ごしやすくなってきた。雲が出てきた。 はあハアと喘ぎながら、山頂方向を見上げると。雲が流れている。
むむっ、これは「上高地の風景」が視界不良ではないのか!?という疑念が頭をよぎる。?
雲の日陰で山頂まで行けそうだが、最大の目的である“山頂からの上高地”が見えない、見えないなら「撤退する」選択肢もあるなと弱気になる。
どうする????? どうする?
結局、最悪でも“山頂を踏むという達成感”は味わえると腹を決める。



溶岩ドームと火山火口
北峰と南峰のコルまで来た。想像を超える溶岩ドームと火口湖の迫力。
溶岩ドームからは噴気が恐ろしい音をたたて硫黄臭の水蒸気を大量に流している。
余りの距離の近さに、こんな場所を登山道にしてよいのか?
温泉地にいけば、地獄谷といって温泉の源泉近くに、噴気が多く出ている場所はなんども経験しているが、この勢いは凄い。
登別、箱根、別府、草津など地獄谷がある温泉地は記憶にあるが、こんなだったか?
恐る恐る、溶岩ドームの大噴気の直下の道を通り、小さな幾つか噴気孔を横目に見ながら3点支持にて山頂を目指す。
Youtube動画〜シューという噴気音と共に歩いてきたコース、最高峰の南峰、火口湖、溶岩ドームと360度を30秒で

破砕溶岩丘
溶岩ドームを横を通って、上高地からの登山道の分岐にくると最後の登りとなる。
これがまたちょっと怖い。登山道の脇に小さな噴気孔がある。黄色い硫黄色がそれ。
本当にこれって登山道!?とまたしても思う。
左側の円筒形の岩塔は、「破砕溶岩丘」
マグマの吹き出し口である「火道を冷却されたマグマが礫上になって現れたものと思われる」(「地学ノート」by地形写真家 竹下/信大名誉教授 原山先生)。
これを巻いた向こう側に山頂がある。
本当にこれ登山道!?
登山者の姿が見えるので間違いはないので、足元に注意しながら、恐る恐る一歩づつ慎重に歩く。
ここまで来たら山頂を踏まない手はない。

山頂と上高地
標高2393m 北峰に到着・・・スタートから3時間45分、標準時間が3時間なので実にゆっくりとしてペース。
はたして、山頂から北側に広がる上高地は見えるか!?
雲は流れている。時々、うっすらとそれらしきものが確認できる。噴気音を聞きながら、昼飯を食べながら待っていると、見えた!
上高地、大正池から河童橋、ということはその左側は岳沢湿原か・・・穂高連峰は雲に隠れるが、その奥深さが雲を通してでも想像できる。すごいなあ。
12000年前 この焼岳の南側にある白谷山の火山活動で梓川が堰き止められて5000年の長きにわたり湖底だった場所(上高地ネイチャーガイド協議会 原山先生監修)
この平らな盆地は、湖底だったなんて、その壮大な自然史を目の当たりにして感動。
日本にこんな場所があることが奇跡ではないかとさえ、思う。
半信半疑、喘ぎ喘ぎ歩いてきた。これを見たいが為に。その達成感は半端なし!
2025年8月2日日[登山日] 8月3日[記]
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