大遠見山 2,104m
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麓は朝霧に包まれていた。松本平も朝霧だったが、常念山地は雲の上に浮かんで美しい。
朝霧は温度が上がると霧散するという先入観は見事にはずれ、北に行くほどに濃くなった。仁科3湖を過ぎると谷は狭くなり、白馬村から見上げる山々は全く見えない。
どうしようかと迷ったが、テレキャビンに飛び乗った。
1650m アルプス平は真っ白、ここには遊歩道もあるが、ほとんど人がいない。
天気も悪いので、早朝からそうは人はこないか。
地質は蛇紋岩なので、夏は特有の高山植物が美しいだろう。
黄葉は綺麗だ。ナナカマドの赤い実に朝露が光り、この辺りはもう秋深いことを教えてくれる。
さて、ここまで来たら、腹をくくって、歩いて行こう。
展望が悪くても、視界に納まる紅葉と黄葉はよかろう。
1740m 見返坂、歩いてきた山道と白馬村が見下ろせるポイントだが視界ゼロ。
大丈夫、黄葉は美しいと言い聞かす。
ナナカマドのたわわな赤い実、チシマザサの緑、アサノハカエデの黄色・・・
色にはそれぞれ意味がある、鳥が見つけやすくする 植物生存戦略から来る「赤」、常盤(ときわ)だと人が好む常「緑」、化学的には光合成の必要がなくなり葉緑体が抜けたあとの「黄」
その3色を綺麗だといって楽しむ人、季節の移ろいに心を動かされる、落葉は人生の旅路の果てという思いと重なると“物悲しく”なるのもの人のサガかな。
そんな事を思いつつ、ゆるやかな稜線をゆっくりと、紅葉と黄葉を眺め眺め歩く。
1950m 二ノ背髪を過ぎ小遠見山が見え始めると、雲を抜けた!
稜線の向こう、雲に見え隠れしながら、五竜岳やその左に鹿島槍が見える。景観の展開がドラマティック。
立ち止まる人が多く、この突然の光景に簡単の声を上げる。
こんな瞬間が山歩きの醍醐味
樹林帯を抜けた時、稜線に出て反対側が見えた時、読図で読めるが、雲が晴れて目の前にアルプスが見えるって展開は予想外が故に劇的
遥かに五竜岳が2814m、手前のこんもりした山が目的地の「大遠見山」2106m、
その稜線は赤と黄の彩りの道、心が躍る。
その向こうに、森林限界を抜けて岩稜がむきだしになっているどっしりした五竜岳、
なんとココロオドル景色
小遠見山まではハイカーがいるが、そこを超えると本格的な山道となる。
真正面に五竜を眺めながらの、稜線歩き。これだけ晴れていると“スライライン歩き”といいたい。
黄色はカエデ、落葉している白い幹の樹木はダケカンバ、常緑の針葉樹はオオシラビソか。
今年の赤は発色が悪いと誰かが言っていたが、時折出会う赤はナナカマドかドウダンツツジ。
ドウダンの小さい葉っぱの「赤」は今年も綺麗だ。
北アルプスでは西洋人に出会って会話することが多くなった。
こちらは喘ぎ喘ぎながらも、稜線を歩いていると、同様のペースで歩く単独行の男性と出会った。年齢は私より上に見える。
「どこまで行くんですか?」
「五竜まで」
「すごいです」
「冬もスノーシュウで五竜までいった」
「すごいすごい」
「でも今日は2時がタイムリミット(テレキャビン最終に間に合うタイミング)で行けるとこまで」
「私は大遠見まで」
「きっと山頂にはいけないけど頑張ります」
「Try as far as you can!」
息はだいぶ乱れているので私より疲れているとお見受けしたが、そのチャレンジ精神が凄い。
若い元気の良い二人ずれのお姉さんとも出会った。服装は町中を歩いてそうな、軽装で・・・違う意味で、そのフィーリングが凄い。
二人ではしゃぎながら、日本語で「キレイ〜」を連発しながら走るように大遠見へ向かっていく。
日本人とは違う、山歩きへのアプローチの方法や物の考え方が基本的に違うという不思議な感覚。
文化が違うんだな〜変わっているなあ〜と思うのでなく、
同種の人と接していると似てきてしまうとうか、自分で壁を作ってしまっているのではということに気づかせてくれる。
中遠見から大遠見までは降りて登り返すという苦行があったものの、実に楽しい山歩き。すれ違うと人と「素晴らしい」「キレイ」「最高の日より」と何回話したことか。
2106m 大遠見にある池塘で逆さ五竜を撮って、紅葉と五竜・鹿島槍を眺めながらお昼をいただく。至福の時間。
2024年10月14日[登山日] 10月19日[記]
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