敦賀 野坂岳

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敦賀三山の一つ、野坂岳
春を楽しむなら日本海側の山が良い。雪国の新緑やお花は躍動感にあふれている。
このお山は914mの山ながら、標高に伴い変わる植生が興味深かったので、それを中心に記録する。

歩く前、麓から写真を撮る。朝の7時台、気温は10度、少し肌寒い。最高気温は22度になるらしい。
昨日の夕方までは小雨だったが、その低気圧も東に動き、今日は高気圧に覆われるので快晴になるはず。
きっと、山頂の雲も霧散するだろう。

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標高200m、登山口はアカマツ林が目を引く。
アカマツ:マツ科マツ属
高木、北海道南部から九州の温帯に自生または野生化。山頂から沿海の乾いた場所や尾根、やせ地、岩場に普通。林を作りコナラ・ミズナラとよく混生する(以下 植物の説明は「山渓ハンディ図鑑 樹木の葉」から引用)
アカマツは太平洋側でも良く見かけるが、尾根沿いの乾燥する場所に自生する印象だったが、この地は違った。
この山の主な岩石は花崗岩で、乾燥しているらしい。(福井県 野坂山自然観察の手引き)
乾燥ややせ地がポイントで尾根でなくとも他の植物が生きにくい場所で林を作ることが改めて理解が深まった。
尾根筋出ないためが、まっすぐに伸びるアカマツが印象的。

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標高300m辺り、植林地帯を歩く。
シロダモ:クスノキ科シロダモ属
東北南部から沖縄の暖温帯・亜熱帯じ自生する。
沖縄で見た記憶はないが、クスノキ科は鋸歯もなく亜熱帯域まで自生するものが多い。南から北上している植物なのかもしれない。
クスノキ科は三行脈が特徴だが、これは若葉が飛び出し白く際立つ。
植林地帯でそう明るくない林内では、不気味なほどに白く輝いて見える。
鈴鹿の霊山山の麓でも似たような風景に出会った。

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標高400m辺り、谷沿いを登りながら植林地帯を抜けると自然林が見えてくる。
積雪がある日本海側、落葉広葉樹林が多く、そして新芽が展開する新緑は美しい。この季節にこの辺りを歩くのはこれが目当て。
トチノキ:ムクロジ科トチノキ属
高木、北海道西部から九州の冷温帯に自生。山地の谷沿いにやや普通。
日本産広葉樹 最大の掌状複葉で7枚前後の小葉が輪状に広がりで一つの葉っぱとなる。ホオノキに似るがあちらは単葉の集合体。
晴れつつあり、青空と新緑が美しい。トチノキは豊富な水がいるのだろう、川沿いに目立つ。
足元に白い たぶん花崗岩の石がある。栃ノ木地蔵。植物の名前がついてお地蔵様は珍しい。このお山は弘法大師が登山道を開いた信仰の山。

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オオヤマザクラ:バラ科サクラ属
標高450m辺り、これはヤマザクラでなくオオヤマザクラだろうか?
日本海側なのでカスミザクラの可能性があるが、色は白でなくピンク色なので違う。
紅い若葉と同時に展開しているのでヤマザクラかと思ったら、葉っぱの鋸歯が粗くて目立っている。
それにしても多くな木だ。存在感がある。
これがオオヤマザクラなら、初めて見た。
サクラは群落をつくらないが、これも例外ではなく、ポツンと一本だけ巨木に育っている。

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カヤ:イチイ科カヤ属
標高500m辺りだろうか、低木の針葉樹。葉先を触ると痛い・・・カヤ
高木から低木、東北南部から九州の温帯に自生。丘陵からや山地の林内じやや普通。多雪地ではしばしば群生する。
ここは多雪地帯、確かに群生している。でも全部が低木で地を這うように登山道沿いに自生している。
なるほど、こんな生え方もあるのだと勉強になった。

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標高600mあたり、だんだん標高も高くなってきて敦賀の見晴らしも良くなってくる。行者岩というポイントもある。
斜面にはカエデ属をよく見かける。なにかで10種類ほどあると見たような。
ハウチワカエデ、ホソカエデ(かテツカエデ)をよく見かけた。
アカイタヤ:ムクロジ科カエデ属
イタヤカエデは北海道から九州の主に冷温帯じ自生、特徴は葉が全縁であるので見分けやすい。
アカイタヤはその亜種で5裂・葉身の底辺は直線的、北海道と本州日本海側の山地で普通(by樹木の葉)という言葉が決め手。
亜種はなんと7つもある。
太平洋側に多いエンコウカエデ、北海道南部から九州にあるオニイタヤ、関東から近畿の先が尾状に伸びたイトマキイタヤ(上高地で見た)、北海道・東北・北陸・隠岐に隔離してあるエゾイタヤ、ウラジロイタヤ、タイシャクイタヤがある。いずれも全縁。
アカイタヤの由来は、芽吹きは赤身が強いらしい。これも初見。

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ユキバタツバキ:ツバキ科ツバキ属
標高700m辺り、ツバキ群落が続いている。これはヤブツバキか日本海にあるユキツバキか・・・その雑種か
雪に耐える為に樹高は低い、花は開平しているものが多い
でも鋸歯はそう尖っていない、雄蕊の筒部は短くない
・・・前日寄った「ブラントピア福井」によると福井県内にはヤブツバキか雑種のユキバタツバキかどうちらからしい。
ということでユキバタツバキとした。ユキツバキは更に雪深い場所らしい。
雪国の端にあるので、“雪端椿”という漢字名がしっくりくるが、正しくはどう描くのか
それにしても広い範囲でツバキ群落が続いていた。
やはり、日本海側の植生は普段見慣れていない植物が多くて楽しい(笑)

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標高800m辺りになるとブナ林が優勢となる。
一の岳を過ぎて、急な傾斜が少なるなりブナが好きなゆるやかな角度になる。
ブナ:ブナ科ブナ属
高木。北海道西部から九州の冷温帯に自生。自然性の高い山地に普通。適湿地に林をつくり、乾いた場所ではミズナラが優勢となる。
登山道脇ややや斜面では幹が雪で曲がっていたが写真はまっすぐに伸びていたなかなか壮観な森。
まだ新緑には早く、若葉が出始めてた頃。青空だ見える。
太平洋側ももう初夏の兆しとなるが、日本海側で1000m弱の山はまだ春が到来したばかりとなるということが良く分かる。
鼻歌をうたいながら、緩やかな登りを歩く。

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標高900m辺り、山頂まで最後に少し急坂がある。
そこにはたくさんの春の花が咲いていた。イワカガミ、エンレイソウ、タムシバ・・・
カタクリ:ユリ科カタクリ属
山頂付近はまだ早春なのかカタクリが咲き始めだった。スミレはタチツボスミレか早春に咲くアオイスミレか
結構な群落。カタクリの咲く場所は少し冷涼な日陰のイメージだがここはおひさまが当たる場所にも元気に咲いている。
日当たりは関係なく、ひんやりしていれば咲くのかと認識を新たにした。
スミレは日当たりを好みそうなので、そういう意味ではこの組み合わせはあまり見ない組み合わせ。

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山頂付近の樹木は風衝地となっていて高木はない。
樹木はやっと目覚め始めたばかりで、萌芽を見ることが出来るが…私の実力では同定が難しい。
常緑のイヌツゲと花があるアセビは分かった。
写真はきっと矮小化された樹木と思われ、右側がブナか・・・左下がカエデ属のハウチワカエデか・・・
900mを超えるとまだ初春、これから本格的な春を迎える。
次回は、夏になって葉っぱが出るタイミングか秋の紅葉の時に歩いて、この樹木の同定を楽しみとしよう。

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一等三角点がある山頂は標高914m(正確には913.5m)
山頂小屋には弘法大師由来の「野坂嶽権現」が安置されいた。今日も安全登山に感謝のお参り。

展望は360度、北側には登山口のある敦賀市と敦賀湾(日本海)が見える。
敦賀市の北東には白山が別山がうっすらと見える。冠雪した白山連峰。
写真にはないがそこから両白山地が続き能郷白山まで見渡せた。天気がよければ南側に琵琶湖も見えるらしい。
日本海で豪雪地、麓には暖温帯植物、標高を上げるにしたがい冷温帯と多雪地帯の植生を観察できる。実に楽しい植生の山歩きだった。

2025年5月3日[登山日] 5月4日[記]

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