乗鞍岳剣ケ峰2025

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“肩の小屋から山頂まで 景色はよく、位ヶ原山荘が模型のように見えた”

・・・高校時代のワンゲルの登山記録。
初めての夏合宿 初めての3000m級の山とあって心が躍っていた。
大阪から松本まで中央線、そこからタクシーの乗り合いで位ヶ原山荘まで。
翌日 8月22日6:55分に山荘を出発して、肩の小屋を経由、9:51分に山頂に到着している。

そして、2025年 半世紀近くが過ぎようとしている、再びその山頂に立った。
ただし、畳平までシャトルバス、そこから90分で山頂に行って往復するという楽勝コース。
当時は、出発時は霧が濃かった。“途中、道に2度迷った。ハイマツ帯を通って何とか肩の小屋についた”とある。
霧で方向を見失ったに違いない。どの道を歩いたかな〜となつかしく眺める。
高校時代に自分が書いた文字を ほほえましく読みながら、当時の素直な感想を書いた文章を感じながら、読み返していた。

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肩の小屋からは同じ道を歩く。一歩一歩。
既に森林限界は超えており、火山岩や火山岩系地質で植生は乏しい。
雲が流れるが天気は良い。当時も早朝の霧はもうなく晴れていた。

“それに、風が割と強く、ポンチョが膨れ上がっている人がいた”

・・・そうか、風が強かったか。今日は穏やかな日だな。
ポンチョか、まだまだこの時代 装備も未熟な時代。セパレートタイプのゴアテックスの雨具などなかったんだろう。
「おい、時代を感じるぞ」 高校生の自分に話している。

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山頂は3026m。初めての3000m峰だった。当時はひどく感動した。
山頂は人混みにあふれていた。山頂で記念写真を撮る人の行列が出来ていて30分ほど待った。
あの時も人はいただろうが、そんな山頂で行列などなかったはず。私の前はアジア系のインバウンド登山者。
「Would you taka our picture ?」
「Off cource, I can!」
なんて英語で会話する。半世紀を経て人も時代も変わった。

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“山頂の視界は良く アルプスが一望出来た ”

・・・時代も人も変わったが、360度の展望は何も変わっていない。
真南には目の前に御嶽山、北側には北アルプス、槍・穂高・遠くに遥か白馬まで見えた。南東方面は南アルプス 千丈ケ岳・北岳、中央アルプスと絶景が続く。
初めての3000m峰、アルプスの山座同定など出来ているはずもなく。山座の同定は顧問の先生や先輩に教えてもらっただろうが、記録にはない。

「おれさ、あの後に北も南も中央アルプスも歩いてるんだよね」
「そうか、乗鞍のこの展望から始まったんだ」
「今、思い起こせば そうかもしれないな」

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“権現岳が神秘的な色をしていた ”

「真夏だがまだ雪渓があって、美しい色だ」
「だろう、当時もこの色が印象的だったんだ」
「記録には書かなかったが、なあ、空が青いだろう。藍色、宇宙に近づいた気がしない?」
「なんか、色が違うな。美しい」
「これが3000m級の山の空の色か〜」
「そうだな 半世紀前にくらべればちょっとくすんだ気がするが、確かに青い。藍。なつかしい青だ。」

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「俺はこの後、高天原で昼食をして、野麦まで歩いたんだぜ」
「確かにお前の記録にも山頂9:51分、8km歩いて、野麦15:40とある」
「途中 急坂もあって、さすがに疲れた〜」
「そう書いてあるな。今はもう歩けない道になっている。貴重な体験だったな。歩けたとしてももう俺の体力では歩けないが」
「お前も年食ったな〜(笑)」

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“高天原には高山植物がたくさあって、非常に見とれていた。特に良く目にとまったのがチシマギキョウで、体は小さいのにおおきな美しい花をつけると感動していた。 ”

「実はチシマギキョウも探したのだが、見つからなかった。イワギキョウはたくさん咲いていたのだが…」
「チシマギキョウは砂礫地に多くて、花弁に細かい毛があって、霧などから少しでも水分を取る工夫をしているらしいと先生が言ってたぞ」
「そうそうそれは知っていたので、砂礫地も探したのだが、残念。また見つかるよ。高天原に行けないけど」
「顧問の先生は知識量がすごかった。この花以外もたくさん咲いていたが、全部説明してくれたんだろうな〜覚えてないが(笑)」
「大丈夫、今の俺は、今更ながら復習しているから、だいぶ分かるようになったぞ」

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“乗鞍と野麦の宿が見える場所は、なかなか素晴らしい眺めだった。あそこから下って来たのかとつくづく感心した。 ”

「しかし、よく歩いたな〜」
「野麦から乗鞍を歩いたなんて信じられないが、きっと達成感が半端なかっただろう」
「みんなの顔の表情に充実感や達成感が現れてるね」
「もうこの当時の元気さやバイタリティはなくなったけど、今回はそれを思い出しただけでもとても良い収穫だった。ちょっとは元気をもらったよ。」
「やっぱり、お前は年食ったなあ(笑)」
「この当時の仲間とは定期的にあってるんだぜ」
「そうか、それは良いことをやっているな」
「今回のお前との会話も、今度あったら話しておくよ」
「そうだな、俺も話しておこう! チシマギキョウを見つけたらまた話にきてくれよ! それじゃ、また!」
・・・
2025年7月12&19日[登山日]  7月20日[記]

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