西穂独標2025〜ピークからの景観展開が秀逸

空と雲と山歩き>山歩き>西尾独標2025

画像

画像

岩石の境目を知りたかった
西穂山荘や丸山より下部は「滝谷花崗閃緑岩」という花崗岩の一種。
176万年前 槍穂高が大爆発を起こしてカルデラ火山になった。そのマグマが冷えて地上に出てきた。
その隆起速度は世界最速で約140万年前のものがすでに見ることが出来る。世界一若い花崗岩。
噴火した火山灰などがカルデラに溜まったのが「溶結凝灰岩」(「地学ノート」原山先生/竹下先生)。
その境目はかつてはカルデラの底だったことも意味する。その豪快な自然史の境目が丸山と独標の間にあるという。
そんなマニアックな観点で、この斜面を登りたかった。
丸山を過ぎ、ガレ場を登り始める。この石はまだ花崗閃緑岩だろうか? 
白っぽい岩肌に暗い灰色のまだら模様らしいが・・・割っていないので新鮮な断面が見れない(笑)
植生も・・・岩質で変わってくるのだが、丸山を過ぎると2500mの森林限界となるので、植生はそもそも乏しくなる。
地形も・・・岩質でわかってくる。溶結凝灰岩は岩峰になりやすい。

ただ、実はそんなマニアックな目的は途中で忘れてしまった。
それほどに、この日は快晴で、北アルプスの壮大な展望を眺めることができた。

画像


2,367m 西穂山荘
標高は既に2300mを超えるこの山荘。初めて泊まったが立派で大きい。冬も含めて通年営業。
朝食は5時半で、ゆっくり準備をして6時半に不要な荷物はデポして出発。
本当に気持ちの良い朝、それも雲一つない快晴。山荘からはいきなり、大岩がろごろろしている斜面を上る。
ちょっと上っただけで、小屋の向こう側には乗鞍岳が朝日に浴びて輝いている。 
昨日午後、山荘やその周辺も雲の中・・・今日は本当に天気に恵まれた。

画像


笠ヶ岳が聳え立つ
登山道は尾根道を歩く、西側には俣谷を挟んで、笠ヶ岳。
深い谷の足元から2,897mの山頂まで、まさに聳え立つ姿が目の前に現れる。
足元の中崎尾根の末端が新穂高温泉なので標高1090m。
ということは約1800mの標高差が眼前に展開していることになる。
まだ太陽は谷に届かず、山頂付近が照らされて、その明暗の違いが奥行きを増して、迫力が倍増している。
真ん中あたりの急峻な尾根が、笠新道に違いない。稜線に出るまでに標準時間で6時間20分もかかるという。
なんという長いそして急峻な尾根道なんだろう。とうても体力のない私は歩けないだろう。
そんな大きな山容に圧倒されながら、尾根道を行く。

画像


独標 発見
ハイマツ帯を徐々に上がると間もなく、今日の到達目標の独標(どっぴょう)が見えてくる。
ここから見ると手前に一山ありそうだが、あれは尾根があそこから緩やかになるためピークに見えるが、事実上の最初の峰はその左側の台形の頂。
独標とは「独立最高点」の略で地図を作る為に測量したポイントを指す。
あそこを11峰となり、大小11の険しい岩稜地帯が連続して最後が西穂高岳となる。
なるほど、最初の独立最高点か、当然測量するので展望が良い分けで、登山の目標にもなりやすい。
標準コースタイムは90分、そんなに遠くない。

画像

画像

ヘルメット装着
独標が眼前に迫った来た。
足元は間違いなく「溶結凝灰岩」。岩稜地帯の間を縫って歩くので、〇×でコースを分かりやすくしてくれている。
確かに、一度間違った×に進んでしまったが、すぐに足の置き場に躊躇するエリアになる。先の〇印を注意深く確認しながら歩く。
ここで初めてヘルメットを頭にする。
ブラックダイヤモンドのちょっと高いやつ。これからも使うことはあるだろうと。安全には多少の出費は仕方ない。
ベルトで調整すると頭にピタッときて締まる。頭が締まると体に緊張が走って身体も締まる感じがした。
核心部というと大げさだが、あの台形はほぼ垂直に登っていきそう。北穂以来の岩峰にちょっとワクワク。

画像

画像


独標をよじ登る
3点支持で昇る。ポールは邪魔なので、ザックにしまい。一歩一歩、マル印を見つけながら登っていく。
先行者がルートを間違っていて立往生しているので、正しいルート〇印を教えてあげる。
足の置き場までは書いていないので、なるべく大股にならないように小さく刻んでいく。
1ケ所クサリ場があったが、それに頼らずとも行けそう。
ただ、荷物が重かったり、風がよっぽと強ければ怖いだろう。ちょっとでもふらつくとバランスが崩れやすくなり危ない。
三点支持をしながらも自分の重心がどこにあるのか、この3点で支えることが出来るのかを考えながら進む。
標高差は20m程度だろうか、意外にあっさりと抜けた。
岩稜登山の登竜門と言われるらしいが・・・短くそれを体感できるレベル感、登竜門というほどではない感じがした。

ピークからの展望は素晴らしい。
どの方向を見ても見渡す限りの山々という単調な景色でなく、まるで絵画のように場面展開する。
劇場の舞台が目まぐるしく変化するような感動の連続。

画像

西側の展望
笠ヶ岳、山荘から稜線歩きの間、ずっとこの山が伴走してくれていた。
堂々とした体躯、笠ヶ岳から弓折岳、双六岳・・・どこまでも続く北アルプス最奥部。
大きく深い谷を挟んでそびえる巨人の様。
高山の奥深さを感じさせる一服の絵画のような風景。

画像

南側の展望
南側は山荘から歩いてきた稜線がほぼ見える。
一番奥は高校時代に歩いた乗鞍岳、この夏歩いた焼岳、昨晩宿泊した山荘
そして、今朝から歩いてきた道
遠景から近景まで連続する美しい景色が連続する絵画。
・・・達成感と感動の風景。

画像

東側の展望
目の前には、六百山と悪沢岳。
眼下に、うねる梓川と上高地。左の岳沢から続くのは岳沢湿原だろう。
この平らな谷、特別名勝・特別然記念物。上から覗いても美しい風景。
あの谷からの見えるのこの穂高連峰があってこその特別な空間。
その岩峰の一角に立っているという満足感。

秀逸なのは北側
独標は実は11峰、ここからカウントダウンが始まり目の前はピラミッドピークは8峰、その奥は最後の西穂高岳。荒々しい岩峰が目の前に展開する。すごい迫力。
今日はジャンダルムと奥穂を超えて奥穂山荘まで行くという猛者がいた。かれは今どこを歩いているだろう。
見渡す限り、ず〜〜〜と岩稜のアップダウンが続く、ここまで来たら奥まで行きたい。奥穂と前穂の吊り尾根も歩きたい。
そんな妄想が頭をよぎる。まてまて、まだまだ、その為には体力と技術を磨かねば・・・いつの日か。

画像




2025年9月27日[登山日]  9月28日[記]

現在地:空と雲と山歩き>山歩き>西穂独標2025