室堂平【2,450m】

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2013年8月13日(火)、家族と室堂平のミクリガ池周回コースを散策しました!

(本当は雄山にでも登りたかったのですが、家族が息子娘がついて来るはずもなく)、このコースを歩きます。

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チングルマの花畑がまだまだ真っ盛りでした。
チングルマ、別名イワグルマ、バラ科ダイコンソウ属
高さ10cmほどの小低木、茎は木質でよく枝分かれして、岩を這うように群落を作ります。
小さいけれど、立派な“木”、そんなところが良いです。

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茎1本に花一輪
雄蕊と雌蕊は多数あり、花のあと、そう果につく花柱は羽毛状になって3cmほど伸びます。
そう果が集まった集合果は、放射線状に延び
風になびく姿は、たいへん風情があります。この変身が故にこの花のファンも多いのでは!
和名は稚児車…また趣が深い

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さて、
周回コースは約1時間ほどですが、せっかくここまで来たのだから、ゆっくり2時間かけていろんなものを観察しながら歩きました。
前後に立山関連の博物館を訪問したりして、ゆっくりと立山を味わいました〜〜。



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一つは(大好きな)地形です。
狭義に立山と呼ばれる雄山や大汝山は火山ではありません。
立山火山と呼ばれる火山の中核は、その南側の“立山カルデラ”にあります。

写真のジオラマでよく分かりますが、室堂平や弥陀ヶ原の南側に大きく崩れた場所がそこです。
でも、噴火口跡ではなく、断層による破砕や浸蝕によりできる日本でも有数の大規模崩落地です。
黒部アルペンルートが走る弥陀ヶ“原”や天狗“平”、室堂“平”などは大規模なマグマや火砕流が造った台地なんです !!
安政5年(1858年)にも大鳶崩れがあり、下流に甚大な影響がありました。
その崩落の可能性は今でもあり、 その溜まっている土砂量は、富山平野を1〜2mを埋めてしまいます。

年間40億円を費やす大規模な砂防事業が続いています。これはほぼ永遠に必要な事業だそうで、恐るべし、自然の力…
詳しくは、立山駅前にある「立山カルデラ砂防博物館」へ。

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もう一つは、立山の山岳文化です。
日本三霊山として有名な立山ですが、特に興味深かったのは芦峅寺の集落でした。
芦峅寺は、古来から立山登拝の拠点として、南北朝時代から立山信仰の中心地でした。
多くの宿坊が軒を並べました。

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平安時代は修行者が、後期はしだいに仏教の影響を受け、地蔵信仰や不動明王信仰などと混ざりあい、鎌倉時代以降は阿弥陀信仰を基本に置いた立山信仰が確立していきます。
大きな役割を担ったのが宿坊です。
立山曼荼羅の絵解、「諸国檀那廻り」などの布教活動を始め、宿坊はその宿泊施設以上の役割がありました。



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訪問したのは、「教算坊」です。
江戸後期、ひと夏三千人と言われた時代の立てられました。
木造平屋の宗教建築で、右が生活空間、左が接客空間という特にな構造になっています。
庭園は素朴ですが、中央に立山杉がどっしりと構え、客間からは視覚的に安定した風景を見ることが出来ました。
入口の門構えは、京都から移築したものだそうです。
檀那場は北は青森、南は宮崎まで及んだそうですから、そんな布教活動とも関係があるのかもしれません。

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室堂には、その名前の由来にもなった「立山室堂」があります。
享保11年(1728年)! 日本最古の山岳宿泊施設。
こんなふきっさらしの場所に、風雪に耐えてきた脅威の建物だと関心しきり。
ここから雄山を眺めれば、立山信仰の最前線を感じることが出来るかも。

明治以降は、廃仏毀釈により、立山信仰の衰退します。
そんな歴史の積み重ねで、この地は昔から優秀な山案内人や山小屋経営者を多数輩出してきた。
戦後は山岳ガイドの集落として知られました。
映画「剱〜点の記」にもこの集落が描写されております。詳しくは、芦峅寺にある富山県「立山博物館」

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そんなマニアック!?なお勉強をした後、立山を見るとみる眼が変わります。
偉大な自然、人々の信仰…やはり 立山は一味違います。
立山は他のアルプスと同じく褶曲山地です。
プレートとプレートのぶつかりありで、大きく盛り上り、その後の浸蝕作用でこんな姿になっています。
火山の中心は、冒頭の立山カルデラですが、この辺りにも地獄谷や水蒸気爆発で出来た窪地が散在します。
左の写真は、みどりが池ですが、その窪地に水がたまって出来た池。
そんな成立ちの違う風景が織りなす風景です。
“逆さ立山”です。美しい〜〜〜。

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ミヤマリンドウだけでなく、タテヤマリンドウも咲いていました。
白いタテヤマリンドウは初めて見たので、感動しました。
白花が印象的!! 

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みくりが池も同様です。

室堂平、最大最新の池です。水深15m。
立山信仰では、八寒地獄であり、、山岳信仰では「ミクリ」という名は「御厨」と書き、「神の厨房」という意味を持っているそうです。
世の中には、表と裏の両面がある。
時には、表、時には、裏…。

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血の池です。
池底に酸化鉄があり、血の色に見えるそうで。
これまた立山曼荼羅信仰のなずけでしょうか? 

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八月中旬の室堂はまだ花盛りでした。
ガイドさん曰く「今年の立山は下界と違って温度が低い。それまで花が残っている」とのこと。
地獄にも天国にもなるこのエリアの天国の部分です。

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立山三山、一番右が雄山(3003m)、その奥が大汝山(3015m)、最奥が富士の折立(2999m)!
純粋な褶曲山地で、隆起と氷河浸蝕が繰り返されてできた、美しい山岳風景です。
しばし、この自然が造った山岳造形美を家族で見惚れていました。


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雲がかかってきたな〜と思っていたら雷鳥が出てきました。
アルプスには約3000羽の内、立山周辺には約300羽ほどいるそう。
写真をクリックすれば左下におりますが、なんとも保護色が見事です。
捕食者を避ける為、曇った時に活動し、冬も夏も保護色となる生きる遺伝子を持っているこの鳥
氷河期を生き抜いたこの鳥、なんとかこれからも生き抜いてほしいものです。





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大地の褶曲と氷河が生むあらあらしい風景
火山活動の末の湖との景色の融合
驚異の自然を崇拝する人々
人命を守るため自然と戦う人々
美しい高山植物や動物
今度は、山の上からこの景色を眺めるぞ〜〜〜〜〜〜!!!!!





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