木曽駒 植生調査2025
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高山植生モニタリング
5年振りに参加した。木曽駒ケ岳周辺で15年間以上も続いている下野先生主催、山の自然学クラブが中心母体。
「2008年に多様な植物群落を含むような調査地を選定し、1m×1mの調査区を56個設置し、同じ場所で植生調査を続けている」(東邦大学 植物生態学研究室 下野先生)。
調査場所は、中岳と木曽駒が岳の鞍部の風衝地や東側の雪田、中岳山頂東側の岩稜違いなど
全体工程は2泊3日で頂上山荘に宿泊、1mx1mのアルミの枠を組み立てて調査枠を組み立てて、2mx2mの折尺と記録用紙を持って、複数あるチームで調査場所に赴いて調査をする。
スタートが平日のことが多いので、途中参加で1泊2日に参加させていただくことが多い。
今回 私が参加した日と翌日は快晴だった。先回は低気圧が近づきつつある気圧配置で1日近く山頂で沈殿していた記憶がある。
ただ、初日は夕方に集中豪雨があったようで、ほとんど何もできなかったようだ。
参加者は先生をはじめ山の自然学クラブの主要メンバー、NPO法人 生物多様性研究所の方々、国立環境研究所の方など 山や植物に関するプロが今回も集まっている。



調査方法*調査風景はNさんに頂く
極めて単純なので、素人の私でも、慣れれば出来る。
保護地域に入るので、先生が事前に調査許可を得ており、その証明である「調査中」の腕章をはめる。
定点の調査場所を探す。金属棒の目印がある。そこに2mの折尺をあてがい場所を固定して、1m四方の調査区を4つ作る。
4つの調査区は、左上からZに順番となり、AーB−C−D枠となる。写真はD枠。
枠には10cm単位に仕切られており、1m四方の調査区を5x5=25に更に区分けする。
その10cm単位のエリアに、どんな植物がいるのかをひとつづつ調べるという調査方法。
このエリアなら、ガンコウラン、ミヤマダイコンソウ、ウラシマソウ、スゲ科などが生えている。
他エリアなら、コケモモ、ヒメククロマメなどエリアによって植生は変わる。
この地道な活動とは別に、写真から被植率を出したり、土壌温度を測る温度計のデータを改修したり、各種調査も実施される。
1回ではわからないが、過去に何回か参加していると、ハイマツの被植率が上がっていたり、ハイマツが増えるとその陰になる矮小植物がなくなるまたは移動するなど興味深い植生移動がミクロに見える。
なにもわかってないくせに(笑)、これって気候温暖化?、今年の酷暑?、勝手に理由を考えて、先生に素人質問をしている。
数年前からライチョウを中央アルプスで繁殖させようという取組みの成果か、ライチョウも見かけた。
ライチョウはコケモモの実も食べたりするそうで、地球温暖化の影響は勿論、食草の増減がその繁殖にも影響することを再認識したりもする。

ツツジ科スノキ属 オオバスノキ
調査エリアを移動する時は、その他の植生を勉強するチャンス!
誰もがプロなので、不明な植物があればすぐ聞ける。
中岳の岩の隙間にあった左の植物、葉っぱを触るの実にすべすべしている。右の大きなやつは「ミヤマダイコンソウ」で調査区でもしばしば登場する。
こんな高山にも、葉っぱが毛無で気持ち良い!?葉があるんだと喜んでいる。
先生に「(おそらく)オオバスノキ」と即答して教えてもらえる。
北海道・本州の主に日本海側・四国の寒冷地に分布するスノキの亜種。スノキは葉柄がほとんどなく、噛むと酸っぱいのが特徴。(樹木の葉)
高山にはツツジ科が多い。それはエリコイド菌根菌との共生関係にあって、酸性土壌の低温化でも栄養吸収を助けるそうだ。
先生の講座でも教えてもらった。ガンコウラン、コケモモ、ミネズオウ、アオノツガザクラ・・・みんなツツジ科。
そんな事を思いだしながら、この種も眺める。
ありがたいのは、聞くとすぐに反応してくれて、教えてもらえる。
今回も何種類か聞いたが、わからない種はなかった。ある意味凄い。

夜の山小屋談話
なにより面白いのは、皆さんとの夕食後の会話。
今回は生物多様性研究をしているNPO法人のメンバーが多く、特にクマの生態のお話を聞けたこと。
奥多摩のツキノワグマから北海道のヒグマの最新の動向まで範囲は幅広い。
ヒグマはエゾシカを食べるとか、その個体が何かを契機に人肉を覚えると襲うようになるとか
山菜、特にネマガリタケを取る人はその場所を他人に教えたがらない、一方でツキノワグマの食物でもあるので、遭遇する可能性が高くなるとか
特に印象的だったのは、ツキノワグマから身を守る方法。
クマは人と遭遇すると驚いて最初の腕の一振りで相手をビビらせるらしいので、最初の一発が回避できれば、生存率が高まるという話。
最初の一撃をどうやって開始するのか・・・それが問題だが。
先ほどのは、遭遇後の対処方法だが、これは遭遇しない方法、タバコの匂いを嫌うらしい。蚊取り線香も効果があるとか・・・本当だろうか!?
シカの食害がひどい話から、私はニホンオオカミを日本で復活させればという話題を振ると、皆さんいろんな視点から話が盛り上がる。
ニホンオオカミがなぜ絶滅したのか人為的という説、増やすと人を襲わないのかと動物学的視点から話をして下さるか方
どんな話題でも、実も会話が興味深く、
普段は自然物とは全く関係のない普通のサラリーマンの私には、“知らない世界に生きる人々”との会話は実に面白い。
夜を挟んで24時間にも満たない高山での生活だったが、数年振りに参加させていただき、実に充実した時間だった。
2025年7月25日ー26日[登山日] 7月27日[記]
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