三河 石巻山【358m】〜2億年の旅路の果て〜

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なんとも興味深い名前。「石」が「巻」く山。

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麓に石巻神社の下宮、中腹に上宮がある。巨大で硬い石灰岩の塊、故に里から見えるこのピラミダルな山容は、不思議な力があると思ったに違いない。
式内宮で三河の国の4大神社の一つ。社伝によると9世紀の創建とか…古くからの信仰の山。
決して大きな立派な神社ではないが、手入れが行き届き、そんな今でも大切にされている神様であることがうれしい。
地元の高校生の数十人が階段を使って訓練をしている。「おはようございます!」との挨拶が気持ちよく、眩しい。

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安全祈願、健康祈願、幸せ祈願、山歩きを開始。
といっても、標高は358mの低山なので、ゆっくりと歩く。

植生が面白い。
三河湾に面して、暖温帯の真っただ中、照葉樹林帯。高木はクスノキ科のタブノキ、低木はアオキが目立つ。
どちらも良く育ち、想定以上に高く、鬱蒼とした森を造り、海洋性の温かい場所であることを実感する。
針葉樹ではカヤの大きな樹、ピカピカ光ってチクチク痛い。
山頂部は石灰岩質の山で、石巻山石灰岩地植物群落 国指定天然記念物にも指定されている。
神域でもあり、植生は天然記念物で保護されている。歩いていても物珍しさで、目移りしながら歩くので歩は遅い。

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山の成り立ちがとても面白い。
矢印で示した水色の点が石灰岩、ポツンとある。その周辺の緑色が玄武岩の塊、東西に筋状にある。

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日本列島は大部分が「付加体」で出ている。大陸プレートに海側からプレートが潜り込み、"上澄み"の出っ張りが重なり合って大地となった。
海側からのプレートは億年単位をかけて、南海の小島も運んでくる。そこは火山島で噴火しマグマは玄武岩となり、周りにはサンゴ礁が出来て、それが石灰岩となる。
ポツンとある水色の〇はそんな火山島にあるサンゴ礁の名残でもある。
2億年前〜1億4500万年の出来事。

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登山道から少し離れたところに「奥社」がある。
白い石灰岩の崖にポツンと小さな社と湧き水と池がある。巨木が守るように聳える。大きな自然と小さな祠が対照的。
とても低山とは思えない、山深い幽玄な、厳粛な聖域・・・を感じさせる。
この巨大な白い塊が、巨木を育む植生が、この山を信仰の山に違いない。

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山頂に立つには、最後に巨大な石灰塊を梯子を使ってよじ登る。
岩の山頂に立てば、東側には南アルプス山系の南端となる弓張山地の主稜線、その稜線からは眼下に浜名湖、遠くに富士山が見えるらしい。
南側に豊橋市の街と三河湾。三河湾は太平洋に、そして今でも南海に繋がる。

石巻山・・・2億年前の旅路を経て、この地にたどり着き、酸性の雨で化学反応を起こした石灰岩は荒々しい山塊となった。
山容や巨大な塊は時にはトグロをまいて見えたに違いない。
人々は畏怖し、やがては、信仰心に変っていったことは想像に難くない。

ゴツゴツした山頂の岩場に腰掛け、そんな事を想いながら、プロテインバーをかじった。

2020年2月23日<記>

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