故郷がなくなるということ

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2023年秋、とうとう故郷(ふるさと)がなくなった。
「故郷がなくなる」というのは、自分が生まれ育った家が無くなるということ。
この春に父が他界、母は4年前に既にいない。この秋にその実家を手放した。
街にはもう知り合いは数少ない、幼稚園から小学校まで近所にあれほどいた友人はこの街を離れ、中学生の友人との付き合いは少ない。
高校時代の友人は付き合いは続くが元々違う街にいた。大学時代の友人の故郷は全国に散らばる。
幼稚園も小学校も中学校も高校も姿は変えたが、まだその場所にはあり、登下校などの思い出は深いが
20年以上をそこで過ごしたこの実家を手放すとは、故郷を手放したに等しい。

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赤ん坊の時は覚えていないが、物心ついた小学生の時には自分の部屋があった。工作が好きだったので、「工作室」などど落書きをしてた部屋。
部屋の一番奥に机があって、まどから町工場が見えた。
あまり、机にかじりついていた覚えはないが、受験勉強時は足炬燵にくるまって半分眠りながら机にいた。
母親はインテリだったせいか、学習本だけでなく本なら、なんでも買ってくれた。
塾通いや家庭教師もいた。母親はインテリで教育へのお金は惜しまなかった。
ガリ勉だった記憶はないが、中学生までは勉強は出来た。
中学の時はBCLが流行って、大きな受信機(もちろん買ってもらった)で夜に海外短波放送を聞くことに熱中した。海外との出会いはそこから始まった。
高校は進学校だったが、本人の出来は相対的に相当悪かった。
物理の実力テストで1点を取った経験があるのが自慢だ(笑) 0点でないことがポイント。それほど出来が悪かった。
ワンダーフォーゲル部に入り、人生の影響を受けた恩師に出会った。山歩きが好きになり、部室にいるか本屋にいるか部屋で山歩き関連の本を読んでいた。
今でも山歩きや歴史や文化が好きなののは、この部活のお蔭だ。
大学では語学を専攻したが、あまり勉強はしなかった。バイクにハマって閑があれば仲間と北は知床から南は佐多岬までツーリング三昧。
山歩きもそうだが、外に出て知らないものを見るのが楽しかった。 今でもそれは変わらない。
かように、年を経る毎に部屋の思い出は薄くなるが、それでも学生時代の思い出がたくさん詰まった部屋だ。

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実家は商売をしていた。父方も母方の親戚は商売人が多い。
時計宝石屋、こんぶ屋、呉服屋、などなど。
二人とも才覚があったのか、小さい店だったが私が物心がついたときは高度成長期の波に乗れたのか、裕福ではないが貧しくもなかった。
ただ、商売は忙しかったが、お店と自宅が同じ場所なので団欒はあった。
母は料理は上手ではなかったが、母の味はあった。今思えば、忙しい中、子供に飯を食わせるのはたいへんだったろう。
父親は外商をしていたので、よく付き合わされた。あっちこっちの会社に行って商品を並べて・・・すごく覚えている。
週末は山歩きに連れて行ってくれた。父の趣味でもある。高校でワンゲルを選んだのも父の影響かも知れない。
商売は商店街でしていたので、飯を食べれば外に飛びだして、皆で遊んだ。小学校、中学校・・・
夜も20時までは電気がついているので、遊び放題。 
ドッチボール、野球、ケンケンなどなど、アーケードがあったのでご近所の方はうるさかったことだろう。
一体、いつ勉強していたのやら(笑)
高校になると近所のガキどもとは別の道を歩みだすので、あまり遊ばなくなった。
行動範囲も広くなる。大学になると日本中に拡大する。

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父と母、晩年は仲は良くなかった。
でも、同じお寺に納まっている。このお寺は10年に一度、集まったお骨で仏様を作っている。
母はすでに仏様となり、納骨堂の正面に鎮座している。

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父の遺骨を納骨しにいったら、その仏様の下に安置された。
「ああ、母の足下に父が・・・喧嘩しませんように」
数年後に父も仏様に身を変えて、母仏の横に座ることになる。
このお寺は命日など30年間は葉書で連絡をくれる。あと30年も私が生きている可能性は低いが、なんとも面倒見が良い。
父は3月、母は2月が命日なので2ケ月連続で連絡が30年間続くことになった。
このお寺にはこれからも幾度となく、お参りをすることだろう。その度に実家を故郷を思い出すに違いない。

最後の日に、商店街でお世話になった近所の人とひとしきり思い出話をした。
「戻ってくる家がなくなると、思い出多きこの商店街にも来なくなってさみしいなあ」
「そうだね、さみしいね」「でもいつか私もそうなって人が少しずついなくなる。そういうことですよ。」
それはわかっているのだが・・・やはり ひどく寂しい。
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2022年10月24日[記] 2023年3月5日父の一周忌[写真追加]

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