キンモクセイの生存戦略
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夏が終わり、初秋に”匂い”で感じさせてくるのは、キンモクセイ。
中国原産で観賞用に江戸時代に日本に輸入された。
オリーブ目なので、葉っぱも匂いもなんとなく似ているが、匂いはとにかく印象的。
なぜ、そんなに”匂う”のか?
そこには、おそるべき植物の生存戦略が隠れている。
そもそも植物はもちろん、生物の最大の使命は、「子孫を残す」こと。
動物と違って植物は、動くことができない。 そんな環境の中でどうやって「子孫を残す」のか・・・
まさに植物にとっての死活問題であり、生存している植物の種は 試行錯誤を繰り返して、それぞれの戦略をとっている。
動けない植物が「移動」できる唯一最大のチャンスは種子の時代。
風を使い、重力を使い、水流を使い、虫を使い…あらゆる方策で種子を作り育て運ぶ。
そこには植物のしたかたな戦略を見ることができる。
さて、キンモクセイの場合の生存戦略はなにか!? 最大の特徴は、強烈な花の匂い。
それも、その匂いが強くなるのが、湿度の高いタイミング、夜とか雨の前後。
そもそも、このネタを書く切っ掛けが、友人からの「なぜ、キンモクセイは夜になると匂いが強いの?」という質問だった。
鋭い! 言われるまで全く気が付かなかった。
あの匂いは、特定の昆虫を呼ぶ匂い。 アブの一種である「ホソヒラタアブ」が好むらしい。
このアブを独占する戦略。
ヒラタアブは、秋が繁殖期で夜が活動的になるらしい…まさにキンモクセイはこれを狙っている!?
ここまで、ターゲットを絞って戦略を練っているとすると、そら恐ろしい。
ただ、とても残念なことに・・・
この樹木 雌雄異株で、日本には雄株(オス)しか存在しない。
花付きがよく匂いが豊かなのが雄株で、中国からの輸入は雄株だけだったとのこと。
キンモクセイはそんな生存戦略を持っているのだが、実は日本ではその戦略では実ができない=子孫を残せない。
現実の繁殖は人力で挿し木で簡単に増せる。 子孫繁栄には一見問題がなさそうですが…
実は挿し木は、遺伝子が同じものつまりクローンを増やしているに過ぎない。 この遺伝子に悪影響を及ぼす病害が発生すると、その主が絶滅する恐れがある。
本来の植物は、雄株と雌株が、雄花と雌花が、違う遺伝子の融合が主の多様性がうまれ、環境への対応が可能となる。
将来のリスクを回避して、キンモクセイを存続させるには、雌株を広めるか… はたまたキンモクセイが単一遺伝子ながら何らかの進化を遂げるかの戦略をとらねばならない。
妄想が始まる。
今、キンモクセイは自分で雌株は輸入出来ない。 こういう事実を広めて、人間に雌株を輸入しれもらうか・・・
残された道は・・・雄株専門から、雌花か雌株をいつか発生させるのでないか。
オスしかいない世界はおかしい・・・すでに約200年 日本のキンモクセイはそんな世界で生きている。
動物と同じで、遺伝子が「メスがいないとさみしい」とおもっているに違いない。
動物でもオスからメスに変換できる種もいるが、そろそろキンモクセイもこれを狙っているのではないか。
生物とは、子孫繁栄の為なら どんな戦略でも取れる、進化ができる に違いない。
そんなマニアックな思いに浸りながら、めくるめく植物生存戦略の世界を(=キンモクセイの匂いを)楽しんでいる。(笑)
2016年10月23日 [記] 2023年10月15日[改編]
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