ヤマシャクヤク
現在地:空と雲と山歩き>山で思うこと>ヤマシャクヤク
■私版「山がくれた百のよろこび」22■
なかなか出会えない花はある。花は季節も限られ、花期も短い、個体数も少ないものなら尚更。
思いばかりが募る。
ヤマシャクヤクはそんな花だった。ボタン科ボタン属、ボタンは樹木だがこれは多年草の草木。
丸い可愛い白い花弁が紫の3本の雌蕊と黄色の多数の雄蕊を包み込んでいる。
たくさんは咲かない・・・茎の頂に一輪だけ。
群落の自生地、鈴鹿山地の北部は石灰岩地帯で、それを好むらしい。
ブナなどの落葉広葉樹林帯の下、半日陰に白い丸い花が浮かび上がり、実に美しい。
虫媒花、ハナバチはこの丸いボールに迷い込むとぐるぐると動き回り、花粉を身体中に付ける。
花は全開しないので、脱出する頃には花粉まみれ。
花から花へ、雌蕊はかなりの確率で受粉することだろう。丸く可愛く見える花にも戦略がある。
環境省のレッドリストでは「準絶滅危惧種」、一部の都道府県では「絶滅」している。
シカの食害の影響は少ないようだが、
WikiPediaによると「総個体数は約20,000、平均減少率は約40%、減少の主要因が園芸用の採集、森林の伐採、林道工事であると推定されている」
この大柄な花は見栄えがする。
平均減少率の意味が良く分からないが、野生のものは減少傾向にあるのだろう。
なによりこの環境にあるからこその感動がある。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」とは美人の立ち居振る舞いの例えだが
芍薬は平安時代に中国から伝わって、今でも園芸用に重宝されている豪華は花ではあるが、あまり好みではない。
ヤマシャクヤクは日本の野生種、シンプルな一重の白い花。
森の中に、日陰に、楚々として、凛と立つ、その姿に一目ぼれした。
その花弁に触れるとその柔らかさはどうだろう。 この出会った感動をどう表現しよう。
いつまでも、この季節この地で、変らず咲いていてもらいたい。
2022年4月24日[記]
現在地:空と雲と山歩き>山で思うこと>ヤマシャクヤク