本読みと山歩き

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■私版「山がくれた百のよろこび」28■

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□登山家が語る

本人が書いた本は、迫力が違う。
加藤文太郎「単独行」、植村直己「青春を山に賭けて」・・・
・「単独行」者の困難を克服するが故の達成感の気持ちは想像は出来るものの、とてもマネできない。
単独で危険に立ち向かうとは、高度な技量と多くの経験、周到な準備、すべてのリスクを一人で背負うということ。
私も単独で動くことが多いが、“ワンダラー”の域を出ることはない。当然、能力がないので“単独行者”にはなれない。
・植村直己さんの「青春を山に賭けて」は感動するし、泣ける。
決して器用ではない著者が5大陸の最高峰を制覇、アマゾン川を下り、南極大陸を横断する。
1984年マッキンリー (現在のデナリ山)で消息が不明になってしまう・・・惜しい!
文章もお世辞にも上手くないが、その素直で朴訥な文体は心を揺さぶらせる。

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海外の作品は、日本語にするとまどろっこい訳になるのであまり読まない。
が、この古典的名作だけは、ともておもしろく読めた。
エドワード・ウィンパーによる山岳文学の古典的名著「アルプス登攀記」、マッターホルンに初登頂するノンフィクション。
1865年・・・ヨーロッパでは近代アルピニズムの黄金時代・・・日本は江戸末期。
古い時代に(今から見れば)古い装備でこの山を“制服”するのは並大抵でない苦労が書かれてる。
なにがアルピニストを、その命をかけたチャレンジを、駆り立てるのか。

ツェルマットでマッターホルンを見た、博物館で「切れたザイル」も見た。
安宿の窓からマッターホルンが見た。ソファに横になり。ぼんやりと山頂を眺めていると、山稜を上る登山者のヘッデンが点々と見える。
現代の最新技術やガイドがいるとは言え、今でも命がけだ。のうのうとコーヒーを飲んでいる自分とのギャップに愕然とする。
最後はグリンデルワルドでアイガーを眺めながら、この本を読み終えた。
偶然にも、お墓がこの地にあったので、お墓も訪ねた。
そんな思いで深い本。

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□小説家が書く

文書のプロの小説は、数あるが、名だたる小説は読んだ。
夢枕獏「神々の山稜」、井上靖「氷壁」、新田次郎「聖職の碑」、横山秀夫「クライマーズ・ハイ」、高村薫「マークスの山」・・・
命を懸ける 登山者の壮絶な絵模様を描いた重厚な作品。
さすが文章のプロ、まるで映像が目の前に現れるような作品ばかり、自分がその世界に入り込むような没入体験が出来る。
・「羽生の生き方をバカとというやつもいるが」真剣にエベレストなどの危険な山に向き合う姿
・魚津と小坂とナイロンザイルの複雑な関係、舞台となった氷壁の宿「徳澤園」に泊まるとその前穂を望むことが出来る
・赤羽校長と高等小学校37名が歩いた桂木場から木曽駒への道も歩いた。「遭難記念碑」の前で手を合わせる。
・クライマーズハイはだだただ泣ける。
・マークスの山は重厚な推理小説、北岳山頂が最後の舞台、肩の小屋のテラスで読んだ。
「マークスの山」以外は、史実に基づいた小説、その場に立つと、小説の感動が甦る。
山好きにはお勧めできるすばらしい作品ばかり、本当はそのお山も登りたいがアルピニストの世界ばかり、ただ聖職の碑は天気が良い快晴の日に歩いてほしい。

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□ノンフィクション作家は主張する

佐藤稔「狼は帰らず」、羽根田治「空飛ぶ山岳救助隊」、泉康子「いまだ下山せず」、吉村昭「熊嵐」、星野道夫「旅をする木」・・・
・狼とはアルピニストの森田勝さんが山に挑戦し、グランドジョナスに散った・・・危険な山は人をそれほど惹きつけるほどに魅力的なのかと思わせて作品
・ヘリコプターによる救助に命をかけた萩原さんの物語、1000人以上の命を助けた2002年に救助中に失命
・遭難した仲間の行方を半年間追い続けた“捜索者”視点のノンフィクション、遭難とはなにかを考えさせられる名作
・大正時代 天塩山頂の麓の開拓村を襲った史上最悪のヒグマ被害を克明に臨場感あるれるタッチで描ききっている記憶に残る作品
・星野さんはアラスカに魅せられ、アラスカに住み、極北の野生動物を撮影した写真家、アラスカで亡くなった。静かだが、語り口ガ熱い、ぜひ読んでほしい作品
どの作品も、徹底的に史実を調査するが故に仔細な事実の積み上げに、プロの作家の視点を交えて迫力ある作品になっている。
ノンフィクション作家はすごいと感心もさせられる。

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□エッセイストは想う

エッセイも多くある。その多種多様な視点は山歩きの魅力を増してくれる。ここはひとくくりにするのは難しいが、実に面白い作品が多い。
畦地(畦地)梅太郎「山の眼玉」、辻まこと「山からの絵本」、西丸震也「山の博物誌」、櫛田孫一「山のパンセ」、池内紀「一つとなりの山」・・・
・あれって思うがよく見ると味わい深い視点の版画が満載、独特の書きぶり気候もおもしろい。燕(山頂の小屋)という版画がお気に入り。
・絵本、辻まことさんの代表的な画文集。
・山の知識があまりに広くいっぱいつまっているガイド本、言い回しが独特で面白い。木崎湖にある西丸震哉記念館があり、立ち寄った。
・櫛田孫一さんは尾崎喜八らと山の文芸誌『アルプ』の創刊に携わったらしい。山にまつわる思想、思索を平易な文章で綴った随想。
・池内紀(おさむ)さん〜ドイツ文学者だが、実にいい! 
 「ひとつとなりがいい。人気のある山、良く知られた山のひとつとなり。」・・・いいでしょう!
 山頂で「風景のシミになる」をよく使わせてもらうが、確かこの人の言葉。一人登山の真骨頂に共感できる。

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□山人はつぶやく

伊藤正一「黒部の山賊」、田中康弘「山怪」、工藤隆雄「山小屋主人の炉端話」・・・山番さんや山で生計を立てる方々の不思議物語。
・雲の平の山荘と登山整備に尽力なさった黒部の主、伊藤正一さんの著書。いつか訪れて“山賊”に会ってみたい。
雲の平で読みたい、表紙は畦地梅太郎さん。
・「日本の山には何かがいる。生物なのか非生物なのか・・・何かがいる放浪フリーランスカメラマンによる山の怪物の話。表装も怖い・・・
山には山神様がいらっしゃる。深山におそれをいただくのは、正しいことの思う。
山とは関係ないが、空想の科学という本を昔読んだ。疲労が蓄積すると人は非日常の体験をすることがあると科学的に説明してくれる本。まだまた山には
・山小屋主人が語る本も面白い。北岳の肩の小屋の山番さんとの会話を思い出す。


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□著名人が宣う

たくさんの著名人が、山に関する本を書いている。山は他分野でも活躍する方を魅了するのだなあと思う。
不破哲三「私の南アルプス」、三浦しおん「神様なあなあ日常」、北杜夫さん「青春の山」、ヤマケイ「山がくれた百のよろこび」・・・
・元共産党の委員長は山好きだった。政治思想とは全く関係ない山愛にあふれた作品。政治面での主張しか知らない人物の違った側面が伺えて親近感が湧く。
・林業にチャレンジする若者の物語。映画にもなった。軽く楽しく読める。
・どくとるマンボウこと北杜夫先生は登山に関する著書もある。これは短編のユーモアあふれるエッセイ。「穂高を見る」という詩が心を打つ。
「白きたおやかな峰」も読んだ。カラコルム遠征隊に医師として参加した過酷な自然を描いた本。

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□山はくれる

「山がくれた百のよろこび」、いつも手元に置いている。このホームページの副題にある「私番 山がくれた百のよりこび」はここから頂いたいる。
“山に行く朝”手塚宗求さんに始まり、“西の果ての最高峰”向一陽さんで終わる。
多くの著名人によって山の思い出が語られている。実に短い。
 題名も実にいい。“ただ山道をてつてくと登る、そんなところが好きだ”・・・いいでしょう!? 
“長い長い宿題”“一足の山靴”・・・どんな物語があるのか読んでみたくなるでしょう!?
“愉快な仲間と「お笑い高所順応」"は私がお会いする機会に運よく恵まれる冒険家 大蔵喜福さんのエッセイ。とても魅力的な人だ。

読んだ本はまだまだあるのに、紹介しきれない。山は人を魅了する。それが本となる。
本を読みことで、山の世界が大きく広がる。山を歩くだけでなく、この自分が知らない世界とコラボすることで一層に山歩きが楽しくなる。
この題名の「本読みと山歩き」は昔やっていたブログの主題で、紹介した本は100冊を超える。
記録に残そうと思い立って作品をめくり始めたが、時間がかかって仕方ないので、今回はこの変でいったん区切ろう (笑)

2025年12月27日[記]

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