花を愛でる
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■私版「山がくれた百のよろこび」25■
奥上高地を5月に歩いた。標高が2000m辺りはまだ雪が残るそんな季節、登山道には春から初夏の花が途切れることなく続く。
歩いて眺めているだけで“心が躍る”
ニリンソウ:キンポウゲ目キンポウゲ科イチリンソウ属
・・・最も有名なのがこの花。河童橋から奥上高地の梓川沿いに緩急を付けながら、ずっと咲いている。
「山野の湿ったところに群生する高さ15〜25cmの多年草。根生葉は3全裂し、さらに2深裂する。茎頂に2〜3個、直径約2cmの白色花を開く」
「花弁はなく、花弁上の顎片は5〜7個、裏面はときに帯紅色」(「山に咲く花」山渓ハンディ図鑑)>
最も有名なのが徳澤園のニリンソウ群落(冒頭写真)
昭和初期までは牧場だったらしい。大きな扇状地で伏流水が豊富なのだろう。
大きな群落がハルニレの森を覆う。
上高地の真ん中は梓川が流れ込むが、そこへ双方の山々から無数の支流が流れ込む。
おのずと湿った場所が多く成り、ニリンソウの対適地となっている。
すっくと伸びた茎に白い花、黄色い蕊(しべ)、なにより立ち姿が可愛い!
この季節、延々に続く道沿いをあるき、この花を愛でるだけでも十分に価値がある。
スミレ・・・キントラノオ目スミレ科スミレ属、これは覚えるには禁断の属!?であまりの種類の多さに覚える気がしない(笑)
たまたま詳しい方と歩いたので、二つだけ覚えた。
オオバキスミレ 、日本海側の山野、亜高山草原の下部や沢のへりに群生。
葉っぱがキスミレは3〜4cmだが、これは5〜8cmもある。確かに大葉。
ミヤマスミレ、 山地から亜高山の針葉樹林帯には生える。
葉は2〜3cmの卵心方で先端は尖り、基部は深い心形、花は淡紅紫色。
スミレというと低山や道端で見かける。過酷な環境でもけなげに咲く印象がある。
深山では、葉っぱも花も元気だ。それも結構な群落を形成しいる。
これもこれを見るだけでも上高地を歩く価値がある。元気をもらえる。
これは可愛い!
コミヤマカタバミ:カタバミ目カタバミ科カタバミ属、深山の針葉樹林内に群生する多年草。
花は2〜3cm、白色、特に脈が淡紅紫色を帯びる。ミヤマカタバミにはない!? 花期は6〜8月。
基部に黄色の班が入る。オオミヤマカタバミは小葉が3〜6cmと大きい。
ソワーニュの森で見たのは、ミヤマカタバミかもしかするとこれか!
白い花に紫のストライブ、基部が黄色・・・このセンスが良い色合いが最高ね(笑)
これは全体の姿が素敵です。
ツバメオモト:ユリ目ユリカ科ツバメオモト属、亜高山隊の針葉樹林内に映える多年草。
20〜30cmで広く円形に広がり、花茎は数個の白い花をつける。花期は5〜7月。
果実は濃藍色で美しい・・・らしい。
群落してはいないが、時折現れるこの姿に癒される。
イチヨウラン:キジカクシ目ラン科イチヨウラン属、深山の林内に生える多年草。
葉が一枚、花も一つというシンプルなラン。
なかなか貴重なランで、長野県では準絶滅危惧種。
ラン科は特徴的な形状の花が多いが、諸説あるが被子植物の中で最も進化した花、
放射称相型(キク科など平面)から左右称相型(立体)へと進化した科だと言われている。
そのラン科の中でも・・・葉っぱが一枚というシンプルなものは初めてみた!
深山に生える草本で一番のお気に入り
サンカヨウ:キンポウゲ目メギ科サンカヨウ属
山地から亜高山に生える多年草。北海道と本州中部以北に自生。高さ30〜60cm、下の葉は大きく、盾上につき、上の葉は小さく無柄。
茎頂に約2cmの白い6花弁花を数個付ける。果実は藍色。
福井の深山で初めて見てからほれ込んでいる。
大きな葉、小さな葉、頭を出す小さな白い花のアンバランス差が不思議。
白い花弁は朝露などに濡れていると透明となり、なにやら妖艶な雰囲気を帯びる。
この奥上高地でも小さい群落を何度か見ることが出来た。
「花の命は短くて」とよく言われるが、多年草は地面から上がなくなるだけで地面で生きている。
ただ樹木に比べれば単体での命は短いかもしれないが、短い周期で子孫を残して遺伝子は脈々と続く。
短い周期で遺伝子のバトンをつなぐ方が、変化への対応力があると言われる。そういう意味では進化している。
こんな山奥深く、日差しも限られ、雪も深い、この厳しい環境の地で、咲く花は、樹木が葉っぱを広げて太陽光を奪ってしまう前に花を咲かせ子孫を残さねばならない。この時期に一斉に咲く。
命を繋ぐ息吹! そんなことを思いながら、まだ新緑前の肌寒い奥山を歩けば、足元に咲く花がよりいとおしくなる。
そんな山歩きも楽し。
2024年6月29日[記]
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