山笑う

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■山笑う〜そして、山滴る■

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「山笑う」俳句の季語。春になると真っ先に思い出すこの言葉。
山が笑う、「草木が萌(も)え始めた、のどかで明るい春の山の形容」(大辞林第三版)。
冬枯れの山、寒い冬の山が終わり、太陽が温かくなり草木が芽生え始めたころ、山がパステルに色付く・・・そんな風景
山が喜んで笑っているように見えるのか。
「故郷やどちらを見ても山笑う」正岡子規・・・故郷の愛媛に戻ってきた時の俳句だろう。
山が笑っているというより、それを見た人が春が来たと喜んでいるとうのが正しいと思う。
季語らしく5文字で音の切れが良い。笑うという文字の意味も軽々で明るい感じが良い。

冬枯れから芽吹きは、一目瞭然で変化がわかる。
尾張の里山の様子、1月18日と4月9日の定点観測
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なんと言っても、この辺りの里山の春に笑う樹種の筆頭はコナラ、笑わせる主犯。
ブナ科コナラ属:コナラの芽吹きは美しい。
萌黄(萌える黄色)、太陽の当たり具合でキラキラする。
落葉樹の芽吹きの美しさは、冬枯れが終わったことを明確に主張する。
冬の山がパステルな緑色に染まり始め、時々サクラのうすい桜色も混ざり混ざり、
山全体の色調が明るくなっていく。
それで、山笑う。
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そこから、この萌黄色はこれから一気に濃くなる。

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新緑の季節。
「山滴る(ヤマシタタル)」、これは俳句の季語でない。
山笑うほどメジャーな言葉ではないが、なかなか良い。 なんとなく意味が分る。

双方とも出典は、北宋時代「臥遊録」“「真山水之烟嵐,四時不同,春山淡冶而如笑,夏山蒼翠而如滴…”春山淡冶(たんや)にして笑うが如く、夏山蒼翠(そうすい)にして滴るが如く…」
漢詩を中国語で読むと、濁音がない韻が音楽のようで本当に美しい(学生時代にかじっていた)。日本語に訳してももちろん良いが。
春の山は萌黄色がうっすらと艶めいて笑っているよう、夏の山はあおあおとしてみずみずしく緑のシャワーを浴びているよう・・・こんな感じだろう。
春山淡冶(たんや)には明るい艶めかしいという意味がある、蒼と翠も青や緑にもっと意味を持たせた味わい深い漢字。実の意味は意外に深い。

一番のお気に入りは、どちらも樹木一本一本を語らず、山全体を表現しているところ。
漢詩と山の景観が、しっくりと感性にマッチすると、すばらしい情景となる。
この続きに秋と冬があるが、それはまたの機会としよう。
2020年5月10日[記]


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