オキナワ ウラジロガシの森を歩く

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ドングリの種類は数あれど、日本で一番大きいドングリは「オキナワ ウラジロガシ」・・・といつも説明するが、見たことがない。
ブナ科コナラ属アカガシ属、奄美大島から西表島に自生するカシ。常緑で高さ10〜20m、ウラジロガシ同様に葉っぱは細めで裏が白い。
1月 石垣島で捜索開始。ネットで調べると分布の場所は、非石灰岩質を好む、於茂登岳やバンナ岳にある。沢筋に多いとの情報もある。
アプローチが容易なバンナ岳を選択、日本最南端の広域公園で目的別にエリアの特徴がある。Dゾーンの自然観察エリアと当たりをつける。

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石垣島は南部が平らで人口が集中している。地質図によると、人口が集中しているエリアは水色の石灰岩地帯。つまり昔はサンゴ礁だったのが石灰化したエリアと予想できる。
於茂登岳はピンク色で花崗岩、地中深くで出来た火成岩が隆起したのだろう、526mで沖縄最高峰。
バンナ岳はその南側のグレー、堆積岩などいつつかの岩石が混在している山であることが分かる。標高230m、いずれも非石灰岩なので分布しているのだろう。
左下の竹富島は真っ平の島だが、ほとんどが水色なので石灰岩地帯。
真ん中の小さなオレンジ色はジュラ紀のチャート・・・大昔、太平洋上に岩礁があって周りがサンゴ礁に取り囲まれていたのか・・・そんな想像が楽しい。

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西口から入り第1駐車場に停める。木道がしっかりとしていて、歩きやすい。
ほとんどが常緑樹なので、真冬とは思えない景観。さすがに亜熱帯。
右から大きく張り出しているのは「ホソバリュウビンタイ」だろう。大きなシダ科の植物。
奥の白い幹は、目指すオキナワウラジロガシ・・・?? 幹が白っぽいし違うな、葉っぱがないので更に樹種もわからない。
尾張地方ならブナ科の植物はカシでもシイでも見分けることが出来るが、この森では見渡しても知らない樹木ばかり・・・で楽しい(笑)
でも樹名板もあるのでそれを元に幾つか記録しておこう。

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クスノキ目クスノキ科クスノキ
・・・茨木以南から沖縄までの暖温帯・亜熱帯に自生。
亜熱帯の森にあると違和感があるが、そもそも暖かい地方を好む。樟脳に代表されるあの香りは、虫よけの為だがかように昆虫が多い処にもその理由があるのかも。
幹も太く比較的大きくそだった個体。この競争が激しいエリアでも高く抜けてていて、樹冠辺りの葉っぱの確認ができない。

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ムクロジ目ウルシ科ハゼノキ
・・・関東から沖縄の暖温帯・亜熱帯に野生化または自生。かつてロウ採取の為に栽培され沖縄以外は野生化と言われる(樹木の葉)
あの特徴的な複葉が遠目に見えていて、それと分かる。
これも中部では、よく見る木だが、沖縄が元々の自生地だったのか。
樹名板には「秋に真っ赤に紅葉する」とあるが、この真冬に青々として(ちらほらと紅い葉はある)沖縄でも紅葉するののだろうか?
こんな新鮮な発見があって、とても面白い、

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キントラノオ目コミカンソウ科アカギ
・・・日本では南西諸島に分布、石灰岩質が生育するがいろんな条件にも耐える。タブノキとともに極相林を作る。
小笠原諸島に移植され、固有種を駆逐するので日本の侵略的外来種100に指定されている(Wikipedea)らしい。
南西諸島も日本なのに表現がおかしいが、強い樹木であることがわかる。
10mほどの小高木だが、成長は早い。葉っぱは三出複葉で互生、雌雄異株。幹が赤い!
なぜか愛読書の「樹木の葉」に載っていない。
実に興味深い、いつの日か温暖化が進んでくると尾張にも進出してくるかも。

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イラクサ目クワ科ギランイヌビワ
・・・八重山群島以南、石灰岩地帯に群生
雌雄異株、単葉互生、15m以上の常緑高木になる、幹に球形の実をつける(林野庁)
ギランとは宣蘭、台湾の地名。
この丸い実が実に印象的。
この樹木はそれが故に、特徴的なので知っていた。 
数年前に於茂登岳を歩いた時に、登山口で初めて見てすぐに覚えた。
板根が発達していて、もっと多くの実がなっていた記憶がある。
それにしても変わった樹木、八重山諸島以南ということは沖縄本島にはないのか。
離島はそれぞれ離れているので、植生も境界がそれぞれ違う。
北海道と青森の間にあるブランキストン線、奄美大島の北にある渡瀬線は知っていたが、植生も離島間には複数の分布境界線があるんだなあ・・・と知る。

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ここまで樹名板を参考に紹介してきたが、本命の「オキナワウラジロガシ」の捜索が難航していた。
あまりに見つからないので、地元のご夫婦に「日本一の大きなドングリの木を見たことないですか?」と聞いてみると、「小さいドングリを見たことあるけど、その名前で探しておくよ!」と言ってくれた。

そして、やっと見つけたブナ目ブナ科コナラ属オキナワ ウラジロガシ
・・・日本の固有種で、奄美大島、徳之島、沖縄島、久米島、石垣島、西表島の湿潤で肥沃な非石灰岩地に分布(Wikipedea)
葉は披針形、ふちは目立った波打ち、前半部に浅い鋸歯、これだ!
樹皮はふつう緑灰黒色で皮目が目立つ、これだ! 実は日本のカシの仲間では一番大きく直径2.5cmにもなる(林野庁)

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どんぐりはどこだ! 
と地面を探すが、なかなか見つからない。
“イノシシの好物なので容易に探し出せるような場所には残っていない”(ちゅら海熱帯魚)
捜索開始から約1時間、どんぐりを発見した。 直径は2.2cm、ちょっと小ぶりだが、まさに夢見たドングリ(笑)
傍からみれば1本の樹木の前で、小躍りをするおじさんがいるに違いない。

幸い誰もいない静かな石垣島バンナ自然公園の森。
それにしても、なぜ、ずんぐりした大きなドングリになるのだろう? 温度が上がるほど、主旨は大きくなるのか? ど
「一つの可能性としては初期成長の速さが生き残りに重要な性質なのかも知れない。xxxやんばるのオキナワウラジロガシはほとんど土壌のない岩の凹みのようなところで発芽し、生育している。
たっぷりと栄養をため込んだ大きな種子は暗い森の中で少しでも他の植物の上に葉を広げ、一定期間を生き延びるのに効果的な形質であることは想像できる。」(やんばるの森事情by家内塚務)

なにか白っぽい粉が付いているのでふき取とる。虫に食われていないかを入念にチェック。
記念に樹木を背景に、ドングリを記念撮影 (嬉)

元旦から、なにをやっているんだかという家族の声を想像しながら、実に達成感のある瞬間だった。
帰りがけに先述のご夫婦にも再会「良かったね〜」と心から祝ってくれた。
石垣島は良い処だ。


2025年1月1日[捜索日] 1月3日[記]

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