水木沢天然林
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「水木沢天然林」・・・木曽川の源流の里、木曽地方の北の端・木祖村の山の奥にある。見事な天然林の森。標高は1200m〜1400m。
コースは2つ、原始の森と太古の森。
明治から戦前までは、皇室の所有地である御用林だった。
針葉樹と広葉樹が混生する地域、エリア内の樹木は98%は樹齢200年以上らしい。
巨木たちが太陽光の獲得を競い合う。
光を求めて針葉樹だけでなく、広葉樹もぐんぐん上に成長して高木の森になっている。
秋の紅葉には少し早いが、秋の晴天。
太古の森は登山道が崩壊して立入禁止なので、「原始の森」を森林インストラクターの先輩と歩く。
コースは時計回り、谷沿いを登り、尾根に出て展望台にて休憩、緩やかな尾根を下り、出発点の谷に戻ると、標準だと1時間弱。
樹木の観察をしながら、ゆっくりと歩く。癒しの森歩き。
立派な熊鈴が数百m毎に設置してある。管理棟では熊鈴の貸し出しもしているほどのクマ出没地帯。
「ここはクマが良く出るんですね」という愚問に、
「ここはクマの住みかで、人はそこにおじゃましているという感覚で歩いてね」と管理人さんのお言葉。
“クマが良く出る”のではなく、クマの立場に立ては“人が良く出る”ということか…
自然に足を踏み入れるとはそういうことと改めて肝に命じる。
樹齢200年以上の樹木が林立(まさに)! 広葉樹二つ。
灰色で縦に裂けた樹皮は「サワグルミ」、クルミ科サワグルミ属・落葉広葉樹、奇数羽状複葉だが樹木が高くて葉っぱが見にくい。
沢胡桃の通り、沢に多い。
灰色で平滑でも地衣類が付いているのが「ブナ」、ブナ科ブナ属・落葉広葉樹、ブナ林のように林を造るイメージがあるが、この地では競争が激しい為か、そんなに目立たない。
でも現存する個体は立派。これも見上げる。
ブナの実もたくさんあったので、先輩に食べ方を教えてもらう。クマの気持ちになってほじって実を割って種を出すが小さくて飛び散り食べにくい(笑)
熊はきっと丸ごと食っている。
まっすぐに立ち姿が美しいのは針葉樹!
赤褐色の樹皮で縦に軽く裂けているのが「ネズコ」、ヒノキ科ネズコ属・常緑針葉樹。
中部地方より北に多くコメツガなどと混生。ヒノキと違った植栽は稀で自然林に見ることができる。
別名 クロベ。
樹皮が網目状に裂けているのが「ウラジロモミ」、マツ科モミ属・常緑針葉樹。
ツガより高緯度にあり、標高1000m〜1800mの山地でシラビソなどと混生する。
写真は広葉樹と太陽光の獲得競争で凌ぎを削っている様子が良く分かる。
珍しく低い位置にあった葉っぱを子細に見てみるが細長い気孔が目立つ。これが裏白!?の由来か。
白っぽい樹皮、すっくと伸びた幹「サワラ」、ヒノキ科ヒノキ属。
この森の主役と思えるほどサワラは目立った。足下に立っている先輩と比してもその巨大がが分かる。上部で二つに分枝。
奥の巨木もサワラ、こっちの方が年寄らしく 樹齢550年の大サワラとある。
本当に550年なら室町時代・・・素直に樹木の生命力はすごい。この迫力は写真では伝わらない…現地でしかわからない。
周囲には明るい緑の広葉樹があるが、トチノキが多い。トチノキも大きくなる。ここのは背が高い。
針葉樹と広葉樹が混生する、それも大木が混生する貴重な森。温暖化が進めば、やがて広葉樹が優勢樹種になるのだろう。
最高到達地点は展望地、ちょっとしたピーク。南側の展望が開ける。
真正面に木曽駒ヶ岳など中央アルプスを北から眺める。
遥か遠くに南アルプスの塩見岳の山頂部も見えるほどの秋の好天。
ミズナラ林の緑のシャワーを浴びながら弁当をいただく。黄葉には早いが、ドングリがボタボタと落ちる音に秋を感じる。
このピークには御料林三角点があった。きっと明治時代のものだろう。
皇室の所有地であったお蔭か、伐採を免れた巨木が林立する貴重な森。いつまでも残したい日本自然遺産の森でもある。
2021年10月2日[登山日] 10月3日[記]
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