印象的な林
空と雲と山歩き>森歩き>印象的な林の記憶
六甲の摩耶山を歩いていたら、カゴノキの林に出会った。この特徴的な幹は間違いない。
普段歩く尾張の山ではそう頻繁に見ることはなく、最初に見たのが大きな個体でしげしげと眺めていたら、辺り一帯がカゴノキも林だった。
カゴノキ:クスノキ科ハマビワ属
・・・東北南部から沖縄の暖温帯に自生。成長が早く高木になる。鹿の子の模様に似ているので鹿子木というのが由来。
京都の神社にもあった。カゴノキを「火護(かご)の木」にあてて、火伏(ひぶせ)の木となっている。こんな林(=単一樹種が多く占める一斉林)になるとは知らなかった。極相林を形成しているのだろうか?
・・・調べるとやはり陰樹のようだ。
そういえばと、記憶に残る「林」をまとめてみた。


ダケカンバ:カバノキ科カバノキ属
・・・高木、北海道から中部地方、四国の亜高山・冷温帯に自生。森林限界周辺や高い標高の林など明るい場所に普通。(「樹木の葉」)
横に主幹を張り出すのは、唐松岳の登山道、標高は約2300m辺り。
登山道の左右の急斜面にそびえているのは、本谷橋を過ぎて涸沢へ向かう途中、標高は約2000m辺り。
いずれも高山の山頂へ向かう途中に現れる。この樹木が出てくると「高山を歩いてるなあ、もうすぐ森林限界か」と思う。
シラカンバ同様に開けた処にまっさくに出てくる先駆植物で陽樹のはず。
教科書的には極相を形成しないはずだが、亜高山という環境は他の樹木が成長するには厳しいのだろう。
環境が厳しい証拠に、風雪に耐えた大きな樹木を良く見かける。


ブナ:ブナ科ブナ属
・・・高木、北海道西部から九州の冷温帯に自生。自然性の高い山地に普通。適湿地に林をつくり、乾いた場所ではミズナラが優勢となる。(「樹木の葉」)
適湿地とはある程度の水分が必要なので、水気のない尾根、多すぎる川沿いにはあまり見かけず。
緩やかな斜面、安息角の緩い傾斜に自生する“よい子ちゃん(笑)”とガイドの方に教えてもらったことがある。。
日本海側の冷温帯には有名なブナ林が多い。
豪雪と寒冷な気候が他の植物を阻んでいるのではないかと言われている。
菌類と共生して菌根を形成、広大なネットワークを地中に張り巡らしているらしい。これが、他樹木を阻んでいるのかもしれない。
写真は青森の白神山地と福井の赤兎山、両方とも日本海側、見事な森を形成する。
雪が多く、特に山地は春の訪れが遅く、それが理由ではないかと信じているのだが、一斉に出てくる新緑の息吹がすばらしい。
歩いてても本当に気持ちが良い。
秋は寒暖差も大きいので、黄葉もすばらしい。
中欧では「民族の木」とも言われ、広大なブナの森がある。同じく、新緑と黄葉の季節は森全体を覆う。

アカガシ:ブナ科コナラ属
・・・高木、東北南部から九州の主に暖温帯に自生。山地から丘陵の尾根付近にやや稀。自生地では個体数が多い。
カシの中で最も高標高まで分布し、ブナとも混生する。(「樹木の葉」)
写真は滋賀の北部、山門水源の森。標高400m。
アカガシロードという道もあるほど、アカガシが多い。ブナと同じく菌類と共生して菌根を持つ。“自生地では個体数が多い”のもそれが理由かも。
カシの中では最も大きく幅広い、鋸歯がほどんどないのも特徴。材が赤身を帯びているのはアカガシらしいが、外見では赤くは見えない。
ブナもそうだが、同じ樹木が続くと、なにやら異世界に足尾踏み入れたような、なにか監視されているような(笑)
そんな独特の山歩きを楽しめる。

ヤマモモ:ヤマモモ科ヤマモモ属
・・・高木、関東南部から沖縄の暖温帯・亜熱帯に自生。沿海の照葉樹林にやや普通。雌雄異株。(「樹木の葉」)
写真は六甲山系 東おたふく山へ向かう山道、標高は約200m辺りか。
神戸の北にそびえる六甲は暖温帯で瀬戸内でもあるので穏やかな気候、瀬戸内海を望む「沿海」地になる。
葉が密生し、暑さに強く丈夫な樹種なので、街路樹・公園樹・防風林に植栽される。
尾張の山地ではここまで群生しているヤマモモを見たことがないので、驚いた。
白っぽいと幹と独特の皺が印象的な林で、暗い森でこの白い幹がたくさんあるとちょっと不気味。
近くの植物園の入口には雌木があって、赤い実がなる。つまんで食べるとおいしい。樹木の実はあまりたべないが、これは良い。

ウバメガシ:ブナ科コナラ属
・・・小高木〜低木。関東南部から沖縄の暖温帯に自生。海岸の岩場や沿海の乾いた低地にやま稀。しばしば林をつくる。(「樹木の葉」)
写真は紀伊の姫越山、登山口から行きなるこの森というか林。標高100m辺り。
葉はコナラ属の中で最小で、丸っこい。小さい鋸歯があるがぱっと見は全縁にみえる。
葉裏には星状毛があって結構葉は厚い。潮風に耐えるにはそれなりの頑丈さがいる。
成長が遅いので硬い!そして、樹皮も縦に深く裂けているので厚くみえる。なんといっても、紀州備長炭になる。
ヤマモモやアカガシは局所的な林??だったが、これは登山道にずっと続く。おそらくこの辺りの山はウバメガシの比率が高い。
これは林。

ヤエヤマヤシ:ヤシ科ヤエヤマヤシ属
ヤシ科は熱帯から亜熱帯に広く分布するが、この属は石垣島と西表島に自生する日本固有種。
直立した姿はダイオウヤシ(Roystonea regia)やココヤシ(Cocos nucifera)に似ているが、褐色の葉鞘を持ち、世界でも美しい姿のヤシとして知られている。(「ウイキペディア」)
写真は石垣島の自生地。沖縄最高峰 於茂登岳の北側 米原の群落。
確かに立ち姿は美しい〜 す〜〜と伸びて25m程度あるらしい。
熱帯や亜熱帯は、その暖かさ、雨量の多さなどからジャングルをイメージして、林というが大きな1種による群落があるいイメージはない。
が、ヤシ科はなにか特別な他を排除してグループを形成する戦略なのだろうか・・・まだまだ知らない世界がある。

気候区分マップ上にプロットしてみた。
北は白神山地、南は沖縄と幅は広いがまだまだ見てみたい林はたくさん!
鳥取のダイセンキャラボク(イチイ科)純林、伊豆のヒメシャラ林、伊豆大島のヤブツバ、八ヶ岳のシラカバ群落・・・などなど
そもそも、なぜ林を作るのか、群落をつくるとなにか種の繁栄に良いことがあるに違いない。
逆に、ヤマザクラのように群落をつくらず、ギャップに生きる種もある。
ネット―ワークで他種を排除しているのか
過酷な条件でグループで生き抜く戦略なのか・・・
山を歩いていると、急にその辺りの世界が変わる「林(・・・1種での群落)」様子にはなにか理由がある。
そんな世界をまだまだ歩いて、自分の眼でみて体感して、そして知りたい。
2025年6月14日[記]
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