森林総合研究所 多摩森林科学園

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■山の自然学クラブ 現地講座 講師:石井誠治先生■

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2019年3月23日(土)、「山の自然学クラブ 現地講座」があった。関東圏が多いのだが、年に数回参加している。
今日は、クラブの理事、樹木医、森林インストラクターでもある石井誠治先生が講師。
これは行かねばってことで、
場所は中央線高尾駅から徒歩10分にある「多摩森林科学園」です。 国立研究開発法人 森林総合研究所が管理運営している研究機関。
昭和初期から運営が始まり、7ヘクタールの土地に樹木約500種、6,000本が植えられている。
この科学園、見せ方も工夫されていて、たいへん面白かった。

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メインの話題は「さくら」、石垣島のカンヒザクラを含めると原種は10種、さまざまな種類のサクラはほぼこの原種の交配の組み合わせ。
ここには、導入元と導入時の名称を栽培ラインと呼び、それが500、総数にして約1500本があり、30年以上にわたり研究されているそうだ。 

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サクラの基本的なことは知っているつもり、森林インストラクター2年目ですからね。
他家受粉、メリットは遺伝子の多様性に繋がるとか、デメリットは花を目立たせるエネルギーを要するとか、などなど。
しかし、「サクラは他家受粉、自分の花粉は受け入れない=授精しない」とか「蕊(しべ)は最初は白いが、“閉店”すると赤くなる」とか、
先生は、なぜなぜを問いながら、その仕組みを解説いただける。 解説がわかりやすくて面白い。

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オオシマザクラ、「耐潮性があるので漁師町で薪材と使われ、伊豆の港に広まった」「江戸城に持ち込まれたカンヒザクラとたまたま交配して発見されたのが河津桜…」そんな歴史話も楽しい。
写真はヤブザクラ、マメザクラとエドヒガンとの交配種のようだが、どんなドラマで出来たのか。 この高尾の名前を冠するものもあった。
咲く時期xエリア+人為行為が様々な偶然が重なりなって種は増える。人為の代表格はソメイヨシノだが、今やサクラは600種以上もあるらしい。

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ふと、
落ち葉の葉っぱの穴を指さしながら、「これは虫が食ったわでなく、気孔から菌が入った跡なんだなぁ…自爆して自分で落とす」とか
「自爆」ってなにと思っている間に、「このヨモギに水滴が綺麗に乗っているでしょう、これは葉っぱに毛があって…雨だから見れるんだね!」と話題は次々にうつろう。(笑)
少し元気がないサクラをみて、「こんな谷の水の流れの上では育ちにくい」とか地形と樹木の関係など、範囲も広い。 
話題は変幻自在、話術と経験と深い知識とあくなき探求心、こんなインストラクターになれれば良いなぁ。 

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サクラがメインではあったが、第1樹木園ではたくさんの樹木も紹介いただきました。
シキミ:マツブサ科シキミ属に分類される常緑小高木。有毒。花は柑橘系の匂い。
有毒で食中毒による死亡事故も起こっており、土葬の時代にお墓に置くと、動物が掘り返すこともなく安全だったということで、お墓や宗教と結びついた。
仏花のベースにある葉っぱはシキミか…子供の頃によく近くの花やに買いに行ったが、そんな由来があるとはね。
となりにミヤマシキミがあり、こちらはミカン科ミヤマシキミ属で別種。 どっちもシキミが付いてややこしい。葉っぱが似ているからかなぁ。
なぜ、そうなったのか、生物学的に違うものと外見が似ているので名前が似るものが混同される良い例だ。
こんなのも、もうちょっと深く勉強して、生活文化と植物の関係をまとめると、植物に興味を持つ人が増える良い題材かもしれない。
歩いては立ち止まり、おもしろおかしく解説しながら、落ち葉や実をサンプルで見せながら、いかに参加した人に関心を持っていただくかを考えた所作。
話す量が半端ないので、時間が足りません(笑)

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この季節は足下に注意すべし、
ナガバノスミレサイシン:早春に咲く、関東以西の太平洋側。葉っぱが三角形で長い。花の後ろに伸びた距が丸く太い。 昨日歩いた大月の高川山にもあったやつだ。
日本海側はスミレサイシン。 樹木でも草本でも、日本海側では独自の分化が進むものが多々ある。  

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アオイスミレ:山野の湿り気の多いところに生える。葉っぱが二葉葵に似る。花弁はあまり開かない。

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エイザンスミレ:山地の木陰に映える。葉が3つに深裂し、さらに2回に分かれて鳥足状に。普通は淡紅だが色には変化が多い。日本固有種で比叡山のスミレの意味。

まあ、スミレはね
「スミレの仲間は現在盛んに種分化が進行していると考えられるため、非常に変化が激しく、日本では各地の変種や色変わりをも含めて、学名があるものが250もある。分布は沖縄から北海道までの全土に渡り、各地に固有種がある。道ばたや野原に咲くものもあれば、山奥の渓流のほとりに咲くもの、高山のお花畑に咲くものまで、様々である。」(By Wikipedia)
たいへんです。 理解するのに100年かかるな(笑)

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昼食を食べて、そのへんをうろうろしていると水たまりに、オタマジャクシを発見。 
なんだろうと思っていると、先生が横から「アカガエルだな」とさも当たり前のようにおっしゃる。
思わず「どうして分かるんですかっ???」と聞いてしまった。
「この季節に卵からカエルのはこの種類だけだから、カエルは卵を産んでオタマジャクシになる時期がそれぞれ違う。生きていく自然の摂理かな」と
外見の特徴で識別するだけでなく、「時期で判断する」という選択肢か!? 言われればそうだが、実におもしろい。 
先生は時期だけでなく 外見的特徴や動きも瞬時にみて、その2つの要素から同定したのかも知れませんが。

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最後は入口にある森の科学館にて、締めくくり
「早春は足下から、上を見上げるんでなくて目を落として季節を感じる良いシーズンです。若葉が茂りだすと情報量が多くてね、ポイントを押さえれる良い季節でした。」
「全部覚えようとしてはダメ、忘れるのが人間。 理解したら人に説明してみる、なるべく早く、それができると自分の理解度が分かる」

この季節、あまり見るものがないと思っていたが、視点を変えれば 実は「良い季節」であることを再認識。
4月上旬に名古屋東山植物園にてサクラ観察会がある。今日の講習も糧として、参加者が楽しんでいただける観察会にしたいと思うわけです。
2019年3月24日 [記] 3月30日[改]


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