春植物の秘密 

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■スプリング・エフェメラルの生存作戦■

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2月とある日に伊吹山の麓を歩いた。
日本海側に近く伊吹山の西側にあって、伊吹山同様、日本海側の気候で、石灰岩質。
フクジュソウが咲き始め。スプリング・エフェメラルの代表。
キンポウゲ科フクジュソウ属、「北海道から九州に自生、山地のやや明るい林内に生える多年草、xxx枝先に黄色い花を上向きに咲かせxxx花弁は金属光沢がある」(山渓ハンディ図鑑)

ここには、何故そうなるかは記載されていない。 
ポイントその1、「明るい林内」、落葉した樹木がまだ新芽を出す前、厳寒の峠を越え、太陽の陽があたたかめに差し込み始めるタイミング、花を咲かせる。
そんな太陽光を獲得できるタイミングに咲く。
ポイントその2:多年草、花が咲いて受精が終わり結実すると花は用済み!?となると、上部は枯れて根っ子が残って年を越す。
ポイントその3:黄色い花・金属光沢、黄色は蜂やハエを呼び寄せいる色、光沢は太陽光を集めて熱あったかくして虫たちを誘う
なにげな文章の裏に、そんな理由がある。

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セツブンソウ、これもキンポウゲ科・・・関東以西の中国地方まで落葉広葉樹の林床、半日陰地に自生。
同じ場所で、結構な群落がある。
外側から、緑、白、黄色、淡紫・・・カラフルで可憐だ。
緑は苞葉、白は花弁ではなく萼片、黄色は花弁が退化した蜜槽化、紫は雄蕊ので雌蕊の周りに多数。
地中に塊茎があり、多年草。

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これも美しい・・・ユキワリイチゲ キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草、本州西部から九州までに渓谷沿いや林内に生える。
淡い紅紫を帯びた白い花弁に見える萼片、黄色い雄蕊、緑の雌蕊。
雪割という言葉も一華というネーミングもスプリング・エフェメラルにぴったり。

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鈴鹿山地の最北の山、霊仙山も春花が有名で、キクザキイチゲにも出会っている。
これもキンポウゲ科で、イチリンソウ属で多年草。
北海道と本州の近畿以北に自生する。
この固体はまだまだ、生長しきっていないが白い花弁が印象的だった。
こうやって、春花=スプリング・エフェメラルの代表格を見てみると、パッと咲いてエネルギーを貯めて、ぱっとなくなる。
他の春から夏に咲く花とは違う作戦で生きている。 
殺風景な冬枯れの林に咲いて花も小さくてかわいくて華憐! カラフルで虫を呼び寄せるが、人も呼び寄せる(笑)

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スプリング・エフェメラルといえば、ブラッセル郊外の「ハルの森」の印象が鮮明。
ブナの芽吹きの前に、一斉に花を咲かせる紫色の花。
絶景だった。
花は、ユリ科のブルーベル、日本の比べると植生が少ないこの地、単一種が群落を造る光景をよく目にする

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フクジュソウと同じく、葉っぱの芽吹きの前に鮮やかな花を咲かせて太陽を獲得、鮮やかな色で虫を誘う。
同じ場所で、マルハナバチも見かけた。
北方系のハチで全世界に約250種、日本にもいるが欧州では普通のようだ。
このころは全くそんな知識はなかったが(笑)

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日本で春植物で群落を作るとういうとカタクリ
ユリ科カタクリ属。漢字で片栗と書く、片栗粉の片栗。
この植物の生活史は、興味深い。
開花するまで8〜9年かかる。なにせ、葉っぱが太陽光を受けるのは2ケ月ほどしかない。
ちょっとずつ葉っぱを出して光合成をして鱗茎にエネルギーを蓄える。
花を咲かせるには凄いエネルギーがいるということ。
花もぱっと咲いて、虫を誘き寄せて受粉して子孫を残す。
ぱっと咲いて、ぱっとなくなる。スプリング・エフェメラルとは「春の儚い命」
花は儚いが、カタクリ自身は40〜50年の寿命があるという!!! まったく儚くない(笑)

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カタクリなどスプリング・エフェメラルは里山に多い。
高山では見かけない。
この写真も山梨の大月市にある高川山という里山。
温かい処では生きていけず、寒冷ではあるが落葉広葉樹がある林床が条件。
この種は、寒冷な氷河期の生き残りとか言われているが、一部は照葉樹林の寒冷な里山にもある。
「約1万年前の最終氷期の終焉に伴い、縄文人が森林の一部に一定の手入れを続けて、里山や草原の原型を作り出してこの環境を維持し続けたという説もある
その場合、日本の照葉樹林地帯に見られるスプリング・エフェメラルは、縄文人による生態系操作によって間氷期を生き延びて現在に至っていることになる。(By Wikipedea)」
温暖化が進み、里山の荒廃が進めば、この種も絶滅するかも知れない。
「春の儚い命」が本当に「儚い」命にならないことを祈るばかり。

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スプリング・エフェメラルは時に蝶々がそう呼ばれることもある。
ギフチョウやウスバアゲハなど。
写真は春日井三山で見かけたギフチョウ
春に成虫になって、すぐに卵を産んで夏には蛹となって越冬する。
まさに、他の昆虫が動きだす前に花から蜜を取りエネルギーを確保して、早々に子孫を残す生き方。
まさに、その生きざまはスプリング・エフェメラルそのもの。

温かくなり花が咲き、昆虫も活動を始める。昆虫もあの花、この花と目移りがする。
その前のわずかな期間にぱっと目立つ花を咲かせて、子孫を残す作戦。
春植物、スプリング・エフェメラル…大競争を避けて、事前にしっかりと準備をして、スピード勝負の生きていく作戦、なかなかの作戦。

ウスバアゲハも美しい(らしい)、いつかお目にかかりたい。

2020年2月9日 [記]  3月1日[改]

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