植物の進化と変化
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■植物の進化と被子植物の花■
森を歩いていると、ギョっとすることがある。
緑の中に、突然現れる 大輪の花。直径は15cmほど、白くてデカい!
キンポウゲ目キンポウゲ科センニンソウ属「カザグルマ」、環境省レッドリストに準絶滅危惧種。
キンポウゲ目は被子植物の中でも古い花の形態を持っている。
花弁に見えるのは萼片、雄蕊だけでなく雌蕊もたくさんある「多心皮」という原始的な構造らしい。
原始的とは・・・「形も色もシンプルで、大柄な花」のイメージだが・・・さて、
そもそも「原始的」とは?
植物の進化から復習してみよう! と思い立つ。
4.7億年前(古生代)にコケの仲間が、海から上陸する。水が必要な植物には一大革命だったはず、いまでもコケ類は湿気を必要とする。
4億年前(古生代:節足動物が上陸)、シダ類が分かれて、「根と茎と葉」に分化していく。つまり、機能が分かれた。
3億年前(中生代:爬虫類の出現)、種子植物(裸子植物)が分岐、今まで水が必要な胞子という増え方から、「水なしでも受精して種を作って増えていく」と画期的な方法を編み出す!
1.4億年前、とうとう被子植物が分岐、「花を特殊化」して動物や昆虫と共生しながら、受粉して種子をつくる確率を更に高めている。
現在は、被子植物全盛の時代、種類も37万種(裸子植物は1千種)と圧倒的!
植物の系統は、1998年からDNAのゲノム解析による科学的に整理されている。APG体系という。2016年には第4版まで来ている。この絵の系統図は2009年の第3版。
左から時間が流れ、1.4億年前に被子緑物が現れてから右端は今。 分岐が早いほど、古くからある種となる。だいたいね。
基部被子植物・・・スイレン目、センリョウ目、モクレン類(コショウ目、クスノキ目、モクレン目など)、この辺りは相当古い。
それから単子葉類・・・キジカクシ目、ラン科もここ、そして、ツユクサ類。
真正双子葉類・・・バラ類、マメ類、アオイ類・・・キク類、シソ類、キキョウ類。
なんとなく、わかるような・・・わからないような! やっぱり難しい。
さて、分類の「目」毎に気になるものを見てみる。普段は「xx科」までしか見ないのだが、大きな視点だと「目」を見たほうが良いことに気づく。
スイレン目・・・なるほど、「古代の花」と呼ばれる由縁。花も大柄でシンプル。
ちなみに、睡蓮は「眠る蓮(はす)」、アジア〜欧州、北米に自生する。日本ではヒツジグサが有名、未(ヒツジ)の刻に花を咲かせる(=その時以外は眠っている)のが名前の由来。
モクレン目・・・モクレン科シデコブシ、コブシの仲間で愛知や岐阜の一部の地域にしかない古い花。
ちなにみ、木蓮(モクレン)は木に咲く蓮(はす)の様な花って意味。モクレンって名前が付くのは中国原産、コブシって名前が付くのは日本原産。
スイレンもモクレンは「多心皮」の代表で、雄蕊や雌蕊が多数ある。大柄で花がシンプルで、どこが似ている。
水にいた蓮(はす)が、陸上に上がってモクレンになったのかなぁ〜なんて想像逞しくなるが、きっと違う(笑)
冒頭の、「カザグルマ」はキンポウゲ目だが、これもスイレンやモクレン同様に、古い系統の植物と言われている。
系統図上も早期に分岐している。(ように見えるが・・・ここが難しい)
“花弁が単一的に並び、雄蕊や雌蕊が多数あり時に螺旋状、簡単な色彩・・・”が共通項(=これが原始的って事か!?)で、
レピック(1950〜60年代に活躍した植物学者)によれば、“知覚能力が単純なレベルに留まり高い段階に達していない甲虫類やハエによって訪問される”とある。
なるほど、なるほど、そう思って花を眺めていると、(マニアック)に面白い!!
学説が古いけど、これがすっと腹に落ちる。
まだユングラー体系から抜け切れず、APGでもこの考えが適用できているかは不明。
それでは、進化系とは?
単子葉植物での進化しまくっているのが「キジカクシ目ラン科」となる。確かに、幾度も分岐して新しい「目」(「科」)のように見える。ツユクサ目の方が後だが…。
この写真は「サギソウ属サギソウ」。
とにかく、ラン科は「被子植物で最後に地球上に現れた植物」(By Wikipedea)。 特異な形状、鮮やかな色彩・・・サギソウは真っ白でまさにサギが羽を広げたよう!
後ろ側に緑色に垂れているのが距(きょ)、長さが約3〜4cmほどらしいがこの長さに意味がある。
距の長さに見合った長さの口吻を持つセスジスズメなどのスズメガ科昆虫が来訪者。
つまり、ラン科の特異な(人にとっての美しさ)形状や色は、それぞれターゲットがの昆虫がいるってこと。特定の来訪者に特化して進化している。
これを進化と呼ぶか、変化と呼ぶか、昆虫類と共に「共進化」していると言うらしい。
双子葉類の中では、キク類キキョウ類キク目キク科が最も進化し分化している。
この黄色い花は、「キク科ウサギキク属ウサギキク」、高山を歩く人は良く知っている高山植物の一種。
先述のレピック氏によれば、花の形態は、
単純型(スイレン、モクレン)→放射相称型(キンポウゲ)→数軸相称型→立体型(オダマキ)→左右相称型(多様な特殊な左右相称:トリカブト、ラン)と進化するらしい。
キク科は左右相称型の小花が密集し一つの花のような偽花を形成し、中心部の花と周辺部の花が分化するという複雑な形態・・・になっている。
なぜ、この複雑な形態が最も“進化した”ものと分かるのかはまだ勉強中。 (理解できたら追記予定・・・いつになるやら)
なんだか、キク科の花は、ヒマワリが典型だが、どばっと上向きで押しが強い花なので、あまり好きでなかったが、多少見方が変った。(笑)
なぜ、こんな形に色に匂いに?、と思うのが大事。そこには、きっと長い長い歴史がある。
ともに進化する昆虫ももっと知りたい、知れば知るほど「未知」が増えていく! 知的好奇心がくすぐられる、うれしい!(笑)
ゲノム解析でもっといろんなことが分かってくるだろう。むずかしい話は学者にまかせて、素人は「なぜなぜ繰り返し新しい事を知ること」を楽しもう!!と思う。
もうちょっと、APGについて科学的記述についてはこちらへどうぞ。
2020年8月10日[記] 8月19日[一部改]〜新型コロナウイルスのお陰で山の日イベントを不参加となった時間を使って
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