植物の寿命 

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■一本の樹木に寿命はないのか■

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屋久島の山や森を歩いたことがある。
「ヤクスギ」と呼ばれる巨木が多くある。スギではあるが、油脂分が多く丈夫で、暖かく、雨量が多い土地柄、よって巨木になる。
ヤクスギと呼ばれるものは、寿命が1,000年越えのものだけ。1,000年未満はコスギ!?と呼ばれるそうだ。
写真は「紀元杉」、推定樹齢が3,000年らしい。 
有名な縄文杉は、各種の測定や推定がされていて樹齢は2,170年〜7,200年と幅がある。

正確な年数は、放射性炭素年代測定法で測ることができる。
地球に存在する炭素は3種類C12とC13とC14、
この中でC14(炭素14)だけが放射線を放出してN14(窒素14)へ変化する性質を持つ。
半減に5,730年かかる、いわゆる半減期。これを使って年数を測定するようだ。
ちなみに、「C14(炭素14)の地球上の量は一定、N14(窒素14)は宇宙線にぶつかって炭素14へ戻る。「(美しい生物学講義) by 更科功」
この測定法で、縄文杉を測ったら2,170年だった、ただし中心部は腐っていたので測定不能で、正確には2,170年以上になる。
それでも、紀元前の世界から生きている。
ちなみに、
放射性炭素年代測定法には誤差がでるが、「樹木の年輪がキャブレーションとなり正確な時代を測る世界標準のものさし」になっている。
1年1年と確実に年を刻む樹木の年輪とC14とN14の変化数を確認すれば、5,730年を補足できる。それを化石となった古木も含めて年輪を繋いで
・・・「樹木年輪の記録は1万2600年まで伸長している。つまり、この時代の14Cは極めて正確に補正できる。(「人類と気候の10万年史) by 中川毅」
樹木の年輪は偉い(笑) 現在は、福井県の水月湖の年稿が世界標準へ。相当横道にそれた・・・

それにしても、樹木というのは、条件がそろえば何年生きるのか・・・

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ソワーニュの森を歩いていると、切り倒されたばかりのブナに出会った。
切り株をみると分かるが、切り口は褐色の心材と白い辺材に分かれている。
辺材は形成層があって、導管などで水分や養分が通りって生きているが、心材はもう生きていない=つまり死んだ細胞ということ。
樹木はそうやって、外へ外への成長して、幹が太くなっていく。年々の成長は年輪となる。
この年輪を一生懸命数えると約200あった。日本では江戸時代。
人的に切り倒されたので、そこで寿命が途絶えたが、
理屈上は、太陽が降り注ぎ、二酸化炭素と水分が十分あれば、葉緑体が光合成をして、生長に必要なエネルギーが全体に行きわたれば植物は永遠に成長する。
寿命は外的要因〜自然環境変化(強風、極度の温度、火事、カミナリなど)、動物によるもの(病原微生物の侵入、動物の攻撃、人による倒木)〜に左右されるということか。

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琵琶湖の北に菅山寺、山門に菅原道真お手植え(伝承)のクスノキが2本。時代は平安末期。大宰府に左遷される前の事になる。
樹齢は1,100年、山門を守るかのように2本が両脇にあってなかなかの壮観な森だった。
この樹は、その年の台風で右側が倒れた。まさに自然環境による外的要因。
1,000年以上生きてきても、どんな要因で寿命が終わるか分からない。
そんな場に遭遇すると、樹木の寿命ってなんだろうと考える。

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白山への修験道の途上にある「石徹白の大杉」、樹齢は推定1800年余年と言われている。
縄文杉が発見されるまでは、日本有数のスギだった。国の特別天然記念物。樹高24m、幹囲14m。
半分は枯れているが半分は生きて、緑を茂らせている。

巨木や古木は、その空気感と存在感が半端なく、存在そのものが奇跡だ。
まず、種子が芽を出す確率は、ひどく低いだろう、その上1,000年以上を生き伸びるとなると確率は低い。
植物の寿命は永遠かと問われれば、条件が揃えば永遠だろう・・・現実には、いつかは、なんからの理由で寿命が来る。

ここまで考えたが、そもそも、寿命を考えることに意味はあるのか!? と思い始めた。
寿命が長いってのは、植物的にどうなんだろう、なにかメリットがあるのか!?
植物には1年草に始まる草本もあるが、彼らは新しい種子を残して翌年に新しい芽を出す。サイクルは1年。多年草もある。
木本類は、種子を残して成長するという工程は同じで、サイクルは長いだけだ。たくさんの種子を残せるってのはある。
最大の使命は子孫繁栄だ、サイクルが長いと繁栄する確率は高いか!? 子孫を1世代でたくさん残せる。
ウイルスなどに侵されると同質の子孫は絶滅する。もしかするとサイクル短く世代交代が進む1年草の方が環境適応能力が高い!
・・・もしれない。
夜も眠根なくなってので、ここまで。 植物に学ぶこと、考えさせられることは多い。

2020年2月22日

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