自然環境とブナ林の関係
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■三頭山とブナの不思議■
ブナなど樹木と地形の関係が面白い
三頭山、みとうさん、ここで「山の自然学クラブ」の現地講習があるという。
2018年11月3日(土)。
どこやねん、それ、と思ったら、東京の奥多摩、山梨との県境あたり、なかなか遠い。
が、これはたいへん勉強になった。これぞ、「山の自然学」!
先生は小泉 武栄先生のお弟子さんの増澤直先生、このエリアを30年以上調査されている。
いきなり、斜面と樹木の関係について、問われます(笑)。
小さい石が重なるこの場所と樹木について。
2本の巨木はトチノキ、斜面の1本はホオノキ。
斜面は中生代の砂岩が崩れ自然に堆積した、小さめの岩の斜面。
約30度の安息感、安定する角度。
トチノキとホオノキは、こんな湿潤でやや不安定だがそれなりに安定しているこんな場所が大好きらしい。
砂岩ってやつは、長年圧縮されるとコンコチに硬くなる。
ちょっと柔らかいのがシルトと泥岩、ちょっと脆い。
因みに、泥岩・砂岩・礫岩は推積岩の砂屑岩の三種。
この種の岩は、川に削られると典型的なV字谷を造る。
なるほど、都民の森の入り口まで、つづら折りの道路で谷底を覗いて高度感におどろきながら来たわけだが、それがV字谷だったのか。
東京の山奥(といっても山梨県境)にこんな場所があるなんて。
少し進むと、稜線と斜面が良く見える処…紅葉が美しい。
が、良く見ると常緑樹が枝を水平に張って良く目立つ。
緑色の濃くて固まっているのがツガ、黄緑に見えて枝が水平なのがモミ。
不安定な急斜面の尾根で生き延びることができるらしい。
モミはやや標高が高いことろを好み、ツガは高くなるとコメツガへ変わっていく。
なるほどなるほど、こうやって現地で目で見て解説してもらうと良く分かって、また面白い!
ちょっと谷に差し掛かった時に、この木はなんでしょう (笑)。
武骨なちょっと形が崩れているが、「ケヤキ」。
あのほうき形が有名な、街路樹で1〜2位を争うあの「ケヤキ」。
肥沃の深層土壌を好むらしい、水気のある(ありすぎるとダメ)湧き水辺りや河岸段丘によく天然木の巨木がある。
この木も直径1m、樹齢は250年はあるという。成長が早いので条件が良ければもっと早くこの太さになる。
数年毎(2〜3年)が種の豊作年に、今年はその年、地域差があるらしいが。
葉っぱを数枚種と一緒に、くるくる回転しながら飛んでいく〜〜 風頼り。
そんなことは知らなかった、種だけでなく葉っぱを使って飛ぶか、なるほど。
尾根に黄葉する樹木があった、これは裏山でも見かけるやつ。
ブナ科イヌブナ、落葉高木 25mぐらいまで大きくなる。
ブナは日本海側、イヌブナは太平洋側としか知らなかったが、地形的観点からは急斜面でも生きていける。
この木も、切通しされた道で、こうやって根っこを踏ん張って頑張っている。
ブナは頑張れないらしい(笑)、イヌなんて呼ばれるが、よく見ると黄葉も綺麗だ。
散策コースでは一番の見どころが、この大滝。大滝専用の橋まである。
地形的にはなぜここにあるかがポイント。
砂岩にマグマが割り込んで相当硬くなったフォルンフェルスという変成岩で、
川や滝の浸食はここで止まっているらしい。それほど硬い。
滝は百年単位でみればその岩を浸食し、奥へ奥へと移動するものだが、この滝は何万年ここにどろまっているだろう。
よって、この上部は川に浸食されていないんので谷は深くなく、本日のメイン樹木の住みかとなっている。
滝の上部は、こんな岩がごろごろしている。
石英閃緑岩(せきえいせんりょくがん)といい、変成岩の斑糲岩・閃緑岩・花崗岩の内の真ん中の種類。
花崗岩との区別がつかんが、硬い。磨けば黒御影になるらしいが…
ブナ沢と先生がなずけたとか!? 浅い谷になる。
川沿いは、1992年の台風で土石流が起こったようで、ここもまだ荒れていて、川沿いの樹木はまだ若い。
その川筋から少し離れた場所に「シオジ」の巨木がある。モクセイ科落葉高木。
川から少しだけ離れた場所にあり、(枯れつつあるが)その土石流での生き残り。
その近くの沢側に「サワグルミ」、この2種が沢沿いの代表格。
サワグルミは成長が早く50〜60年で大きくなるらしい。数十年に一度起こる反乱のサイクルで成長して子孫を残す必要があるので、このスピードになったようだ。
植物にとって沢という良い環境でも、リスクがある環境で、自然のサイクルに合わせたダイナミズムを持っている。
何度でも言おう、恐るべし植物の生存戦略!!
ブナ尾根を、斜面を這いつくばって歩かされます…歩きます。
ブナ-ブナ科ブナ、幹は直立して30mもの大木になる。
ハルニレやミズナラとブナは同じような条件で育つが、急斜面にはミズナラ、より条件の良い所にブナがあるようだ。
或る意味、わがままな“良い子ちゃん”、イヌブナみたいに逞しくない。
この地域のブナの特徴の一つは下草ががないことらしい。
日本海側はブナ+チシマザサ、太平洋側はブナ+スズタケ、ここには無い。
日本海側の葉っぱは大きくて薄い、この辺りは小さくて数が多くて少し厚め。
太平洋側のブナは太陽光競争が激しく、小回りが効い必要ありか。
北海道のブナは成長速度が2倍で、100年で直径1mに達する短期決戦型という。
寒すぎて生きるのが厳しいのかも知れない。
ブナも良い子ちゃんなりに、生存戦略が地域に合わせて進化していく。
ただ、この地のブナは絶滅方向らしい。もう温暖化で気候が合わないのか…跡継ぎの幼木が少ない
ブナ尾根で、ザックや弁当が転げ落ちるのを気にしながら、みんな(20名程度)で、その話を聞く。
永遠に続かないが故に黄金色の輝きが美しい。
かように、この講座は実にマニアックで楽しかった。
地形と地質と植物と気候は相互に影響しあいながら生きている。それを知るのが楽しい。
2018年11月4日 [記]
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