下を向いて歩こう

空と雲と山歩き>森歩き>下を向いて歩こう

画像


樹木・環境ネットワーク協会の愛知研修会が「三河の葦毛(いもう)湿原」と「尾張の海上の森」であった。
普段の活動は、対象が地形・地質と植生、特に樹木が多く、遠くや上を見上げることが多い。
今回は樹木だけでなく、草本や昆虫も詳しいプロの方々と一緒に歩く、学びは「下を向いて歩こう」!

画像


イネ目イネ科ヌカススキ属ハナヌカススキ、瀬戸の町中の駐車場・・・小さい穂を糠(ヌカ)に例え、全体が花(ハナ)のように見えるのが由来か。
「美しい」!!!
その辺に生えているのをプロが見つけてくれた。「美しい」と言ってくれないと、決してまじまじと見ない(笑)
確かに美しい。穂が細かく分岐してバランスよく、可愛くそして美しい。
いつ帰化したが不明らしいが、ヨーロッパ原産。ヌカススキの近類種らしいが、花が小さいく先端の突起が一つ(ヌカススキは2つ)がポイントらしい。
鑑賞用に輸入されたのか、ドライフラワーや束ねて色を付けて樹木としてジオラマにも使うこともある。
道をなにげに歩いていると、見逃してしまうが、一見の価値ある造形美。

画像


イネ目イネ科ヌカボ属ヒメコヌカグサ、葦毛湿原。
これも、小穂を糠(ヌカ)に例えた。
半日陰の湿地などに生育する多年草。根茎は短く株をつくらずほとんど単生する。(京都府レッドデータブック)
株を作らないとなると、あまり目立たない。造形が美しいわけではない。
でも、
全国の湿地は減少傾向にあり、準絶滅危惧種。(三河の植物観察HP)
そうか、珍しいのか。
コヌカグサという近種もあるが小穂の密度が濃いらしい。

画像


イネ目イネ科コメガヤ属コメガヤ、葦毛湿原・・・米粒のような小穂。わかりやすい和名。
北海道から九州まで広い範囲で自生する。
イネ科の植物の中では、特徴のある姿で同定が容易にできる。うれしい。
風にそよそよ揺れると一服の絵になる。庭にあっても良いかもと思わせる。

改めて「イネ科」とはなにかを調べてみた。
キク科とならんで種子植物で最も大きい科
「外形はみなよく似ており、茎とひげ根、線状で2列に並ぶ平行脈、独特の構造の花(小穂)を持つ点でほかの類とは明確に区別できる」(ブリタニカ国際大百科事典) それこそイネ科イネ(稲)が真っ先に頭に浮かぶ。
「全世界に700属と8000種が属する被子植物単子葉類の大きな科」「花粉媒介を風によっておこなう風媒花へと進化したものである。そのため、その花は花弁などを失い、雌しべは長くて毛が生えていることが多い。また、花序が変形した小穂と呼ばれる偽花を単位とし、これが集合して穂を形成する。」(Wikipedea)なるほど。
花を退化させる方向に進化した」(「里山さんぽ植物図鑑」)退化させて、進化した!?
「森林や高山に生育するものもあるが、草原はイネ科の植物を中心に構成されることが多い。」(同上) 侮るなかれイネ科と再認識する。

画像

画像


イネ科だけではない。研修会の対象範囲は広い。
フトモモ目アカバ科チョジタデ属ミズユキノシタ…東京ではめったに見れなくなった水草らしく、関東から来られた方々は熱心に調査していた。
まったくの素人には、だたの葉っぱ水につかっているようにしか見えなかった。
本州から九州の池沼や湿地に生息する沈水〜湿生植物。ユキノシタ目のユキノシタとはまったく別の植物。
アメリカミズユキノシタやセイヨウミズユキノシタなど外来種もあるが、葉が互生なので、これは自生種とわかる・・・らしい。
学名「ルドウィジア・オバリス」という名前でアクアリウムなどで利用されることもあるらしく、水槽など沈水状態で育てると葉っぱや茎が赤く美しくなることがあるそうだ。
普段は池や沼の草本には目がいかない。
以外に身近で、水槽に入れて熱帯魚と一緒に鑑賞するほどに美しい水草なのだと認識が新たになる。

画像


イネ目カヤツリグサ科スゲ属オキナワジュズスゲ・・・関東以南から南西諸島の路沿いや林縁に自生する。
オキナワの数珠(ジュズ)のような果胞(雌しべを包む袋状の器官)が連なっているのが由来か。
ジュズスゲが近いようで、プロが時間をかけて議論していた。
果胞が小さく基部の鞘が濃紫色〜暗赤色となる事で区別されるらしい。
確かに、このスゲは基部が赤い・・・ように見える。
このレベルとなると全く付いていけない。
この議論に限らず 参加者の方々の熱量がすごい。なにかを発見しては、どこでも入って行って観察する。そこに皆さんが集まり小議論が始まる。
その繰り返し。どこからその情熱が湧いてくるのか、そんなに人を引き付ける世界なのか! と圧倒された2日間。

足元には、イネ科だけでなく多くの植物がある、更に上回る種類の昆虫もいる。美しい…アオマダラタマムシも見せてもらった。
数字でいえば日本の種子植物は約3,700種類、イネ科を含む草本は約2,800種類!
そこには、樹木に比べて短い時間で世代交代を繰り返し、環境変化に適応して生きていく生存戦略があるはず。名前や形状だけでなくそれを知りたい。

知らない宇宙がそこにある。
そのためにも「下を向いて歩こう」そして「じっくり観察して、どういう生き方をしているのか勉強しよう」と思った。

2023年5月20‐21日[研修日] 5月27日[記]

現在地:空と雲と山歩き>森歩き>下を向いて歩こう