奥上高地 地形・地質 勉強会

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5月17日、河童橋から横尾山荘に向かう、天気は快晴、足元には春の花が咲き、見上げれば新緑が眩しい。
徳澤園ではハルニレ樹下に一面のニリンソウ。
集合場所の横尾山荘では主催の大森さんと原山先生に大量のスイカとニコやかにお出迎えいただく。
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「上高地クラブ」主催 昨年秋の上高地に続き、2回目の地質と地形の勉強会。
先回は、大正池から明神辺りまで、今回は横尾山荘をベースとした奥上高地。 

横尾山荘は槍ケ岳からの槍沢、穂高連邦から続く横尾谷が両流している処に位置している。
槍沢と横尾谷の双方を、原山先生による氷河地形と地質・岩石の現地講座。
今回もまた万年前の世界を想像しながら、新緑の谷を歩く。

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事前に復習を兼ねて、地質図を見返す。
上高地は「地学ノート」(by原山先生/写真竹下さん)によると大きく4つのステージに分かれる。この本は実に分かりやすい。
横尾山荘は図のやや右上、槍沢と横尾谷に合流視点。
・約1億5000万年前の堆積岩である砂岩/泥岩/チャート(黄色)
・約6400万年前に地中からマグマで上昇して出来た花崗岩(ピンク色)
・約176万年前に槍・穂高がカルデラ火山だった頃の火山灰などによる溶結凝灰岩(肌色)
・一番、新しいのが約12万年前から現在まで尚活動している焼岳周辺の火成岩(左下茶色)
尚、滝谷花崗閃緑岩(赤色)は槍・穂高の噴火を起こしたマグマが地下で冷えたものが後に隆起して現れた岩石。

横尾山荘から前穂高を眺めながら「岩稜を形成しているのは溶結凝灰岩、左になで肩形状は風化しやすい花崗岩」「地形に地質の特性が如実に現れる」(原山先生)
スイカをいただきながら(笑)、解説いただく。なるほど、あそこがピンクと肌色の境界かとピントくる。
そんな風に眺めると山の形状も、やはり興味深い。

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出発前に先生が山荘前の石を拾って並べ始めた。
左から時代順となる。
堆積岩は横尾山荘周辺の砂岩泥岩チャート(黄色)、ホルンフェルスは泥岩ベースで熱による変成で出来たもので上流から、
花崗岩(ピンク)は槍沢か横尾谷の上部から、
閃緑斑岩(茶色)は横尾谷最上部から、
溶結凝灰岩(はだ色)は槍沢か横尾谷の上流から流れてきたことがわかる。
焼岳の火成岩は下流にあるはずで・・・人為的にここに持ってきたか?!
石を並べるだけで、上流の様子が分かるなんて、やはりとても楽しい!
誰かが石をとって眺めて適当に元の位置に戻した・・・「その位置ではありません。時代が違います」と先生にたしなめられる(笑)

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横尾谷を上流部へ向かう、ここからは氷河地形を中心に記録する。
横尾谷は「約6万年前に氷河」に覆われていた。
その氷河が運んだのが「屏風の孫石」、とてつもなく大きい。300tもあるらしい。
岩石は「南岳凝灰角礫岩」、先述の地質図には載っていない。
穂高・槍カルデラが火山灰で埋まったときに陥没した処に周辺からの土砂や礫が堆積した・・・(原山先生)
確かに角礫がある。
こんな大きな石が氷河の上に乗っかってきたので、ゴロゴロ回転して小さくなることもなく、この大きさを保った。
単純にすごいなと思う。
「何万年後に氷河期が来てここが氷で埋まって、下流に流れ始めると、この岩は転がされて小さくなるんですかね」なんて、独り言ち。
6万年前と次の氷河期の数万年後、万年単位の過去と未来を楽しむ。

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その先に、「横尾岩小屋」なる真っ二つに割れた大きな岩がある。
これも「南岳凝灰角礫岩」。
登山者には有名な岩で、昔はこの岩の隙間で寝泊まりをしたそうだ。
こんな狭いところで、たいへんな思いをしてたんだなあと思っていたら、中に入れるという、
四つん這いになりながら中に・・・確かに入れた。
意外に広いぞ(笑)
しばし、昔のクライマー気分でしゃがんで天井を見上げる。

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更に進むと最近、登山道の整備の為に斜面を削ったが故に現れた「氷河の運んだ堆積物」を見れる場所がある。
氷河は岩盤を削りながら流れていき、その削られた岩片や泥は末端に堆積する」(「北アルプスジオガイド 穂高・涸沢」)
「多種の石があることでこの場所の石でないこと、丸い石がないことから河川で運ばれてきていないこと、から氷河が削りとって運んできたとみている」
「きっとここは氷河の末端でモレーンの一断面を見ている」(原山先生)
なにげに見る新しい露頭から、石の種類や形状からそんな推定ができるんだと感心しきり、地層や岩石を見るって面白いと改めて思う。

槍沢を上る。槍ケ岳に端を発する梓川の源流にあたる。
美しい渓谷を眺めながら、途中の槍見河原で頭を覗かせる槍ケ岳に感動しながら歩く。
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一ノ俣を過ぎると、地質が堆積岩(砂岩・泥岩・チャート)から花崗岩へ変わるポイントがある。
先生が倒木を超えて対象の地層に近づく・・・しかたなく(笑) 生徒の私たちも後に続く。
ここは花崗岩が筋状に堆積岩に入っている。黄色の二本線の間が花崗岩。
熱で堆積岩が溶け、これを「ストーピング」、花崗岩が入り込むことを「貫入」。
垂直方向に上昇して貫入したが、その後、なんらかの理由で水平方向に傾斜した。
花崗岩の年代は、「同位体識別法」というのがあって、花崗岩の中にある「ジルコン0.01mg」にレーザー光線を当てて蒸発した気体の質量を分析する。
時間と共に「ジルコン」は変化するのでその変化度合いで時間が測れるらしい。例えば、「ウラン」は時間と共に「鉛」に変わる。
そんな先生の解説を眺めながら聞くと、特に「 」の地質学の専門用語を偉そうに使うと、なにやら自分も地質学者になった気分!
どこまで理解して正しく書いているか、はなはだ怪しいが(汗)

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二ノ俣を過ぎると、「V字谷」を見ることが出来る。
水の力で深くえぐれた谷、なにげに流れる水は一本の線となり、深く地面を削ることで急な斜面を作る。
典型的なV字を描いている。
だたし、これは氷河地形ではない。
この谷も6万年前は氷河に覆われていた。
V字谷はまだない。

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さらに上流部に槍沢ロッジまで行くと「U字谷」を見ることが出来る。
これがまさに氷河がゆっくりと眺めて削った典型地形だということだ。
その上でババ平まで行けば「日本一美しいU字谷」を見ることが出来るらしい。いつか行きたい!
6万年前にU字谷が出来て、その後氷河が消えてから川がU字の底を削り、U字+V字谷を作ったと。
槍沢ロッジでまったりとしながら、頭の中で空想空想、目の前の樹木をデリートすれば
・・・氷河の底にいる自分がU字がはっきりと見えてくる! そのU字の底に小さなV字まで!
上高地と奥上高地の勉強会、この勉強会のお陰で6万年の時を想像する力が、身に着いたか(笑)
「地形と地質はすべての物のはじまりだから」という先生の言葉が印象的だった。

更に上がるとババ平では日本一美しい「U字谷」が、更に天狗原まで行けば天狗原という氷河公園ともいわれる氷河地形のオンパレードらしい。いつか必ず行ってやる(笑)
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2024年5月17日ー19日【現地講座日】 5月26日[記]

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