ランとは何者か!?

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「ラン」とは、被子植物 単子葉類 キジカクシ目ラン科の総称
世界には749属2万6000種(by世界のラン図鑑2020)、日本には240種(日本分類学会連合HP)・・・単子葉植物で最大種の科で、現在も分化が進んでいるという。
「根に内生菌を持つ多年草。花は左右対称。顎は背顎片1個、側顎片2個、花冠は側花弁2個と唇弁1個からなる。昆虫との共進化の例が多数知られる」(「高山に咲く花」山渓ハンディ図鑑8」)
「コチョウラン:コチョウラン属」
最初に思いつくのはこれ! 実は、日本にあるのは園芸種で、原産は熱帯になる。
写真は京都植物園で撮影したコチョウラン。実は「着生」ランといって土壌に根を下ろさず、樹木や岩盤ので自生する植物のこと。街でみかけるコチョウランは鉢にあるが、熱帯では樹木の上に自生している。
水分は厚い葉やバルブ(偽球茎)に蓄える。着生ランが全体の70%を占めるという。もう一つは「地生」ラン、地面に根を張り光合成で生きている。よって葉っぱは広い。 
ランは最も新しく地球に現れた植物グループらしい。約8000万年前の後期白亜紀にランの祖先に当たる植物の分化が始まり、今も分化が爆発的に進んでいるい。(オークマガジンHP)
おそるべしラン科!

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「フウラン:フウラン属」
・・・関東以西から沖縄に自生。これも着生種。10月東三河ふるさと公園:残念ながら花は咲いていない。
「セッコク:セッコク属」
・・・10月東三河ふるさと公園:葉の落ちた節から細い茎を出し白から淡紅の花を1〜2個つける。花は5〜6月でたまたま残ってるのか?
いずれにせよ、公園にあった。きっと、人為的に着生させたのだろう。
2種ともコチョウラン同様に着生種なので、(気のせいか)葉っぱも厚くみえる。根も広く樹上にはっていて、水分の確保をこうやってするのかしげしげと眺めた。
傍からみれば、“変なおじさん”に見えただろう(笑)

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「ハクサンチドリ属:ハクサンチドリ」
・・・亜高山から高山帯の草地に生える。花は紅紫色か白、総状花序につく。唇弁は3裂し、距がある。
白山へ通じる銚子ケ峰の草地。あえぎあえぎの途上で見る印象的な形状だった。
xxチドリという草本はあるが、これは先っぽが尖っている。たくさん花が付くので千の鳥でチドリ。
赤でも白でもない紫!?だが、新種か!? これ目当てに歩く人もいるようだから間違いないだろう。確かに、横から見るとチドリに見える。
その後、あまり遭遇しないが、こんな高所にもラン科がある。

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「イチヨウラン属:イチヨウラン」
・・・千島・北海道から九州の深山の林内に生える多年草。根茎は細く短い。葉っぱは広く1枚。先に1個の花を付ける。1属1種。
5月奥上高地を歩いていると、人だかりができていて数人の人が写真を撮っていた。それがこの花。ちょっと気が付かない。なるほどこんな場所に自生するのか。
根茎は地面にあり、節から1本の太根、1本の茎、1枚の葉、花も1つ・・・すごいなあ、どんな環境に置かれるとこの種が発生するのか不思議。
葉っぱは丸くて、かわいい。一枚で太陽光を受けて光合成をしている。地中ではラン型菌も活躍しているのだろう。
これも山奥に行かねばなかなか見れない。

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「ショウキラン属:ショウキラン」
・・・北海道南西部から九州の山地や笹原に自生。茎は直立して高さ10〜30cm、淡紅色の花をまばらに付ける。葉は退化して鱗片状。
7月飛騨 籾糠山、これも山奥、緑あふれる森の中に元気!?に咲いていた。
葉っぱはない! 正確には葉っぱは退化して鱗片状。
「地生」ランの中の「腐生」ラン。
もともとランは菌類と共生しているので、腐生菌を通じて栄養を得ている。
分化して葉緑素をもたない種類のあるのか・・・進化と変化の結果。

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「ムヨウラン属:ムヨウラン」
・・・これも腐生ラン。常緑樹林内。茎は高さ30から40cm。茎頂に淡黄の花を数個つける。
三河の研修会、葦毛湿原にてこの地に詳しい専門家に場所と名前を教えてもらった。普通の遊歩道から離れたちょっと薄暗い林内にあった。
先生はウスギムヨウランとおっしゃっていた。もしかして薄黄(うすき)かも。
とてもランには見えなかったが・・・まだ開花していない模様。
開花した写真が図鑑にあったので、見ると確かにラン。
愛知県の絶滅危惧?B類、国の準絶滅危惧種に指定されている。
これは自分では、とても見つけられない。

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「ツチアケビ属:ツチアケビ実」
これは実。バナナ型に奇妙な実が多数。尾張のとても身近や低山の林道沿いで7月末に見た。
最初はなにか全くわからない。
・・・山地の林内や笹薮などに自生。これも腐生種。全体が黄褐を帯び多数分岐する。上部の各枝に黄褐の花を総状に着ける。
葉っぱがない、葉緑素を必要としない。これも腐生ラン。
やはり、葉っぱがないと「これはなんだ?」と思ってしまう。
その上、花でなく、初めて見たのが実なら、なおさらわからないはず。
残念ながら、この場所はのちの大雨で流出してしまい。それ以来、お目に掛かっていない。

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「エビネ属:エビネ」
・・・北海道南西部から沖縄の山野の落葉樹林内に自生。花茎は30〜50cm。多数の花が総状につく。
5月鈴鹿山地の高室山、落葉樹林の尾根いの岩影に太陽の光が当たりキラキラ光っていたこの花に気が付いた。
地中にある偽球茎がエビに似ているらしい。エビのネ。
これは腐生ランでない「地生」ラン。
腐生ランとちがって“ラン”っぽい。花も唇弁が目立って、一目でラン科と分かる。
山の中でラン科に出会うこともそうないが、これは山を選べばお目に掛かれる。
エビネ属には、黄色い「キエビネ」、トクサに似てる「トクサラン」、夏に咲く「ナツエビネ」があるらしい。

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「カキラン属:カキラン」
・・・北海道から九州の湿地に生える高さ30〜70cmになる多年草。基部は短い鞘状になって茎を抱く。カキ色の花を茎の上部に10個ほどつける。
6月みろくの森の小湿地に毎年楽しみに観察に行く。
あまり色の無い湿原に鮮やかなオレンジ色が生えて、一目でそれと分かる。
中央部にある唇弁の紅紫色と黄色の班店と、側花弁の黄褐色とのバランスも良くとても印象的。

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「トキソウ属属:トキソウ」
・・・北海道から九州の酸性の湿原に生える多年草。茎の高さ15〜30cmになり、中ほどに葉が一つ。花は淡紅色(トキの羽の色)で先端に一つ。
これもまた、湿原で一目でそれと分かる。カキラン同様に身近な湿原でも見ることが出来る。
日当たりの良い湿原にあるので、葉っぱがあって光合成をして、ラン型菌に助けを借りながらも美しい花を咲かせる。
同種に「ヤマトキソウ」があるらしい。花が小型で上向きに咲くらしい。
花が上向きか下向きかで種が変わるのか!? これから注意してみておこう。

このようにラン科はバリエーションが多い。劇的に多様化しているというのもうなずける。
改めて復習すると、共通する特徴は、真ん中に「ずい柱」という雄蕊雌蕊、そして「唇弁」多くは模様があって昆虫のガイドマーク。上下左右に側顎片、左右対称になっているのが最大の特徴。
この特異な花の形状はポリネターである昆虫との共生関係の中で発達してきている。いつかそこも深く知りたい。
もう一つの特徴は、目に見えないが、ラン型菌根菌と共生していること。
ラン科の種子はホコリのように小さく無胚乳種子らしい。よって目を出すまでは菌と共生して栄養をもらっている(東邦大学 下野准教授 講演会)・・・これも実に興味深い。

奥深きラン科の世界。

2025年2月1日[記]  2025年8月12日[ハクサンチドリなど追記]

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