フジとは何か!?
空と雲と山歩き>森歩き>フジとは!?


春日大社 万葉植物園の「藤の園」
春日大社は奈良時代に創建され、中臣・藤原氏の氏神を祀るお社。樹齢700年と言われる「砂ずりの藤」が知られ、社紋も「下り藤」
そんな由緒があり、万葉植物園には「藤の園」があって約20種類200本の藤が植栽されている。
一般的な棚造りではなく、『立ち木造』という見せ方で、見上げることなく人の目線に藤がある。

フジ:マメ目マメ科フジ属
つる性植物、本州から九州の温帯に自生。林縁や明るい林内に普通。ノダフジと中部地方から西、中国・四国・九州に多いヤマフジの2種類がある。
高木に良く登る。奇数羽状複葉。
ノダフジの花は紫色で5月頃に咲き、花序は50cm前後ある。ヤマフジは花期がやや早く、花序は15cm前後で短い。白花もシロバナヤマフジがあり、園芸用に出回るのはたいていヤマフジ。(樹木の葉)
見分けは、花序の長さもあるが、ノダフジはつるが左上に巻き、ヤマフジは右上に巻き上る。
ノダフジは野田藤・・・大阪の野田にあった藤が有名だったそうで、牧野富太郎先生がなずけ親。
「本来は藤の本義はカズラ、すなわちツルのことなので紫藤と書いて初めて藤になるのだが、これは中国産のシナフジとなり、日本産のフジに適用することはできない。日本には二つのフジがあった一つはノダフジ、一つはヤマフジでこの二つの総称がフジである。この二種は日本の特産で中国にないから、(中略)日本のフジを紫藤とかくのは間違っていることを承知しなければならない。」(「植物一日一題 牧野富太郎」)
さすが先生、植物の名前の歴史まで研究されている。

近くの山のノダフジ。芽吹きはじめた樹木を左巻きに上っている。
手入れがされていないとフジが樹木を駆け上がる。4月中旬から5月中旬までお山で良く見かける風景。
つる性植物は、樹木の幹や枝を利用して高所で葉っぱを広げて、太陽の光を獲得する生存戦略。
フジは林業者間では評判が悪い。
なぜかというと、樹木に絡んで成長するのは良いが、年数がたつと幹を圧迫するほど太くなり、「絞め殺し」てしまうかららしい。なるほど、見方を変えるとそうなるかと合点がいく。
この写真の樹木はフロンテア植物のアカメガシワ、そもそもギャップに真っ先に目を出して成長していくので日当たりの良い場所の自生する。
その木に登るとは・・・たしかに日当たりは抜群だろう。
心配は、いつか窒息してしまうこと。
そうなるとフジ自身も倒れるので、その生き方は如何なものかとも思うが、もう子孫は十分に残したので長寿である必要はないということか!?


白いヤマフジ(シロバナヤマフジ)と園芸種である「麝香藤(じゃこうふじ)」
ヤマフジは花序が短い・・・私の親指と人差指を広げた長さ約17cm
麝香藤はシナフジとヤマフジの交雑種らしい。
香りは半端なく、フジってこんな香りがするんだとびっくりするぐらいの香りを解き放っていた。
藤は万葉集にも26種あるらしい。藤の房さがたくさんある様子をそのボリューム感から藤波とよみ、多く見られる(万葉集を詠むHP)
「藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君」
日本には古くからある種だが、園芸種は江戸時代以降、特に明治から非常に増えたようだ。
ヤマフジとの交配してものをヤマフジ系と呼ぶ。


「昭和紅藤」、別名 赤花美短(アカカビタン)
房が大きくて、でも長さは短い
紅が濃いというかピンク色がとても印象的。お気に入りの一房(と呼ぶがどうかは知らない)
「岡山一歳」
カピタン藤(甲比丹藤)というヤマフジ系の色変わりらしい。とても濃い紫色。
カピタンというと花美短と書くかとおもったら、違うようだ。後々の当て字かもしれない。
これもフジヤマ系。


「白野田」
名前の通り、ノダフジの白色。これだけそろうと美しい。ヤマフジではなく、ノダフジ系。
公園で見かける藤棚はノダフジの紫が多い(=山で見かけるノダフジが綺麗に並んでいる)が、白色は新鮮。
ちょうど、藤の園に「高円宮 妃 久子様」ご一行と遭遇、園長の解説を受けておられた。
このフジに見とれていらしたその姿が印象的。
「野田長藤」
これも名前の通り。ノダフジが更に長くなった。
花序は長いが粗い印象。やはりこれだけ並んでいると美しい。
更に長いものに「九尺藤」がある。
フジは環境さえ整えば長寿。熊本の黒木の大藤は約600年、春日大社の砂じろの藤は約700年
ツル性樹木なのに意外、春日大社のように人々が大事に管理していたものが残っているのかもしれない。
鑑賞の花としての歴史は古いが、蔓は丈夫で簡単に切れないことで知られており、フジとクズ(葛)が絡み合ってどうにもならない様を葛藤という。漁網、籠、吊り橋、籠など生活に密着した道具にもなっている(「樹木ペディア」HP)
何気に見ていた山のフジも、公園の藤棚も、TVやネットで見る藤祭りなども、こやって藤の種類や歴史をちょっと調べるとこれから眺めるのが楽しくなる。
2025年4月30日[記]〜万葉植物園 藤の園を鑑賞を機にネットや本で調べて記録
空と雲と山歩き>森歩き>フジとは!?