チャートとは

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日本には急流が多く、美しい渓谷も多い。
写真は、飛騨川中流にある「飛水峡」と木曽川中流にある「寝覚めの床」
良く岩を観察すると、川の浸食による削られ方が違うことに気が付く。
寝覚めの床は、岩の割れ方が柱状節理的な割れ方で崩れた感じ。飛水峡は、いかにも川に削られていった・・・横傷がたくさんあるように見える。
色は明らかに違う、寝覚めの床は白い、飛水峡は茶色というか色がついている。

この違いは、岩石にある。火山の下にあるマグマが地下で固まった「花崗岩」と深い海で放散虫が堆積して出来た「チャート」
花崗岩は硬いが、チャートは輪をかけて硬い! 

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先日、チャートの山を歩いた。
飛水峡の近く各務原アルプス、山の山頂部がチャートで覆われている。
プチ縦走をしたが、尾根道はチャートの露出が多く、写真のような大岩が散見される。
ぶつかると痛い。普通の岩石の中では最も硬い。
昔は火打石(勢いよくぶつけると火花が散るやつ)に使っていたそうだ・・・それほど硬い。
よって風化にも強く、この地元のアルプスもチャートの山頂部は風化に耐えて独特の山波になっている。

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大岩の上でバックにチャートの山々を背景に記念撮影。
双子岩というチャートの大岩から眺める景色は、凸凹とした山波が続く。
日本昔話に出てくる山、「山」という象形文字そのまままの山、幼き頃の山の絵の山。
・・・そんな印象の山波が続く。

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地質図で眺めると、オレンジ色の縞模様が濃尾平野の北側に層状にならんでいる。
これがチャートの層。 時代はジュラ紀パッショジュアン期、2億5千年前から1億7千万年前の地層。北に行くほど古い。
層状や線上になっているのは堆積岩の付加体が多い。黄色やグレーは泥岩や砂岩、青色は石灰岩(サンゴ礁の死骸等)、東側に広がる赤色系は花崗岩などの火成岩の塊。
チャートや石灰岩などは、遥か太平洋の沖合からプレート上部に積み重なり、大陸にぶつかり上部がはがされて、隆起して今ここにある。
長大な時間を旅して、ここにある。

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チャートは放散虫というプランクトンの死骸が積み重なり、固まってできているのだが・・・放散虫とはなんだろう。
一番参考になったのが、産総研という研究機関の放散虫に関する情報だった。写真はその研究所のポスター、時代と共に種類が変わることが分かる。
「放散虫とは、虫ではなく1mmの1/10以下の海洋プランクトン、5億年前から現在まで変化しながら生きている。ガラス状の硬い殻をもつ原生生物。現在でも800種類以上はいる。」
「世界中の海にいて海面近くから海底5000mの深海まで無数にいる」らしい。
寿命も不明らしいが、死骸はマリンスノーとなって海底に溜まり、気候変動などで大量に死骸が沈殿する時代があれば、地層を作るほどに堆積するということか。

放散虫は時代時代で種類が変わるらしく、放散虫の確定が出来ると時代が確定できる技術が確立した。
「1970年代後半から80年代前半は、日本の地質学における「放散虫革命」と呼ばれる」。

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岩石としてのチャートは硬いだけが特徴でなく、色や種類がたくさんある。
共通するのは二酸化ケイ素を主成分とした石英ガラス質なので、透明感がある。
写真は、飛水峡の近くにある納古山にあった灰色から暗灰色のチャート(と思っている)。黒い筋が縦横に走るのは一種の割れ目。
赤色は含まれた鉄分が酸化したもの、緑だと火山灰が混ざったもの、褐色もある。(「石ころ博士」)

堆積岩なので層状になっていることもある。
数センチ(2〜3cmに見えた)堆積するに2万年ほどかかるという研究もある。
地球の公転周期、地軸の傾き周期で気候変動が万年単位で起きるというミランコビッチサイクル理論と放散虫の興隆との関係を調査している・・・科学技術振興機構

なにげにチャートという世界の入口で調べていると、地球規模の広がりを見せ始める。
岩石の勉強をするということは、そういう事か! 見分けるだけでなく、性質がわかることだけでなく、そんな知らない世界をまた覗いてしまった。
さて、これからどうするか迷いどころ(笑)
2024年2月11日[記]

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