APG3と被子植物の進化

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APG体系というのは、1998年に登場したゲノム解析によって分類される被子植物の体系のこと。
それまでは、新エングラー体系やクロンキスト体系が、形態的な特徴でグルーピングされていて見て目にも判りやすかった。
が、今では、遺伝子研究に基づくAPG体系が、ゲノム解析が進むほどに改訂され、現在はATG4(数字はギリシャ文字が正しいが…)まで来ている。
旧体系は単子葉と双子葉の2種類分けとか、離弁花から合弁花へ・・・とか・・・分かりすかった。

因みに、APGとは「被子植物系統グループ (Angiosperm Phylogeny Group) 、この分類を実行する植物学者の団体」(ウイキぺデア)のこと。
APG3の体系がこの一覧。山と渓谷の図鑑などからエクセルに落と込んだ。自分で打ち込まないと記憶に残らない昭和頭だから(笑)
横浜国立大学の生態研究の「APG植物体系と植物の進化〜総論」がとても分かりやすかった。
全体ストーリーはその論文から、抜粋は"xx"とし、出典が別の物は(xx)として、個人の所見も加えて整理してみた。

"被子植物の最大の変化は「花を咲かせる」こと"

花を咲かせることで動物を引き寄せ、花粉や蜜などを与え、花粉を運ばせ雌蕊に受粉させ、結果できた種子を運ばせることで種を爆発的に繁栄させる。
裸子植物は風媒という方法で、乾燥地帯への進出に成功するが、花粉が雌蕊について受精が完了するまで半年から1年もかかるらしい。
被子植物の花は早ければ3分!遅くとも24時間程度で受精が完了するという飛躍的にスピードアップした。(中央大学 知の回廊64)
陸上植物27万種、被子植物は25万種も占めるほどに拡大している。

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最初の現れるのは、"「基部被子植物群」(緑色)、最も原始的な植物は、「アンボレラ(目)」と呼ばれるニュージーランドにある花。他地域ではもう絶滅した。"
始まりは約1億4000万年前。"緑一色の森に白い花が咲く"、そこから被子植物の繁栄が始まったようだ。 "花は、複数の雄蕊と雌蕊が螺旋状の形状となる。"
次に「スイレン(目)」が別れる。花は大柄で白くシンプルで蕊が螺旋状。
その次が「アウストバイレン目」である「シキミ」、小さい黄色い花で花被片や雄蕊も螺旋状・・・よく見れば原始的な形状に思えてくる。
そして、大きなグループの「モクレン類」「単子葉類」と青色エリアに突入する。
「モクレン類」モクレン目が代表だが、「全て木本であり、精油を含み、葉が互生する。花はふつう大きく、3数性の花被片をもつものが多い。多くの場合、雄しべと雌しべが多数あり、らせん状についている。」(Wikipedia)
「クスノキ目」や「コショウ目(exウマノスズクサ科)」や「センリョウ目」は花も大きくないが、花の形状は確かに複雑でない。ウマノスズクサ科は見た目も含めて原始的な印象は受ける。
遺伝的にはモクレンに近いということか。
"「単子葉類」はユングラー体系では、形態的な子葉の数の総意で、双子葉と二分していただ、APGでは一つの大きなグループとしてとらえられている。"
双子葉と単子葉の様に、体系を2分するわけではないが、種類でいえば4分の1を占める。
「ショウブ目」→「オモダカ目(水草や海藻)」→・・→「ユリ目」→「キジカクシ目(exラン科)」と分岐してくる。
ショウブやユリは山や公園でよく見るし、ランも含めて、花の形状も複雑で、昆虫と共に高度に相互に影響を与えながら進化してきた。
昆虫に魅力的に見えるのは、人にも美しくみえるのか!?
ランなどは観賞用に多くの園芸種が作らている。更に進化が進んでいる!?

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最大グループの「新真双子葉類」(オレンジ色)へ、全種の75%を占める。
単子葉と双子葉の違いは、葉っぱの数だけでなく、"花粉の穴も単孔粒型から3つ以上の穴がある三孔型や多穴型が登場する。"
孔は花粉管を伸ばす孔で、多いほど受精確率が高くなる。明らかな進化だろう。そんなこともAPG系統を作っていく中で分かってきた。
"かつて始祖的と言われていた「キンポウゲ目」や「ヤマモガシ目(exハス科)」と「コア新真双子葉類」と呼ばれる大きくは「バラ類」と「キク類」に分かれる。"
「ユキノシタ目」と「キントラノオ目」は新設されたらしい。
ユキノシタ目はバラにもキク類にも属さずに有名処の「マンサク科」「カツラ科」「ユキノシタ科」などが集まった。
"キントラノオ目はバラ科最大の目で、形態・生態共に多様で「適用進化の見本市」と呼ばれる。
渓流の岩に付着する「カワズゴケソウ科」、花被の目立たない風媒の「ヤナギ科」、多肉植物など形態多型が著しい「トウダイグサ科」、マングローブの「ヒルギ科」"などなど。
環境の変化に敏感に対応して進化した科が多いのがその由縁か。
「バラ類」には「マメ類」と「アオイ類」、マメ類には「マメ目」「バラ目」「ブナ目」など馴染みのある名前が多い。
マメはマメ、ブナ目はドングリがマメに近いが・・・花はそんなに似てるかな・・・ゲノムで分析されるとこの辺りがしっくりこない。
「キク類」は、「シソ類」と「キキョウ類」、キキョウ類には「キク目」や「キキョウ目」などがある。
"ほぼ、1億年まえにはほぼすべての双子葉植物が出そろったことになる。"

ちょっと話が戻り、
仮道管を持つヤマグルマにセンリョウが注目され、祖先的と言われていたヤマグルマは1億2100万年前(分子時計)に派生しているらしい。
が、系統から考えれば"一旦導管を獲得した祖先種が進化の過程であえて仮導管に戻ることにはどのような適応的意義があるのだろうか"と課題を呈している。
風媒花も系統全体に散らばっていることから"一度虫媒という性資を獲得した後に「風媒に戻るという進化」をしたのである"・・・実に興味深い分析をなさっている。
ヤマグルマはともかく、虫媒から風媒という先祖返りは、環境の変化が引きおこしたもので、虫がいない環境への変化が風媒化へと進化しているはずだ・・・と続く。
イネやブナもそれに当てはまるが、そうなのか!? 今の花の形態は風媒の姿で虫媒花の時代があったとしたらどんな花だったのか。
APGというゲノム分析と分子法というDNAの置換速度を利用した手法により、分岐の時代が明らかになり、そんなことも明らかになってくる。
風媒は風媒のまま進化したという選択肢はないのか・・・仮導管は仮導管のまま進化したということはないのか
・・・ゲノム解析が進めば進むほど、まだまだ知らない世界が見えてくるに違いない。
知らない世界が見えてくると、植物の見方も、観察方法も変わって来る。
知りたくて知りたくでわくわくする世界。 ほんとうに興味深い。
2022年12月30日[記]

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