森林浴と科学
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■ 森林浴の魅力と科学 ■
夏に赤沢自然休養林を歩いた。 記憶の中では、これで4回目。
妻とデートで、子供を連れて、山歩きで、今回で四回目。 時代、時代で、同じ赤沢でも見方が変わる。
森林インストラクターになってからは、やはりこの森の果たす役割や樹木について深く知りたくなる。
樹木はもちろんだが、この地が果たす「森林浴」の位置づけは大事だ。
ここは、森林欲発祥の地。2007年には森林セラピー基地などとパンフレットには記載されている。 ただ、xxセラピーなんてなんだか横文字で胡散臭いなぁ(笑)と思っていた。
森林浴の効果でよく話題になるのが、フィトンチッド。
フィトンチッド(ヒノキの香りが代表)など植物の発散する香りが人の身体や気持ちに良い影響を与えるというもの。
フィトンチッドは、1930年ロシアのB.P.トーキン博士がフィトン(植物)がチッド(殺菌する)ことから名付けた。植物の精油に含まれるピネン、リモネンなど殺菌力をもつ成分の総称。
針葉樹にはピネン、カンフェン、(リモネン)が多く、広葉樹にもピネンはあるそうだ。
たしかに、ゆっくり森を歩いて、鼻(「口」ではダメ)からゆっくり息を吸い、肺に満タン 空気を送り込む。
ちょっと大げさに言えば、なにやら、体が新しいなにかに生まれ変わったような、“気持ちが良く”なる。
ヒンヤリした冷気が身体にないって、そんな気になるのか…とか思っていた(笑)
最近は、どんどん科学的に証明されてきている。森林セラピーという名の下に。
森林セラピーの研究は意外!?に進んでいて、
森林総合研究所や日本医科大学など多岐にわたる実験が行われている。
心拍数や自律神経系の活動の指標では、ストレス、疲労、活力について、町や海岸・農地を歩くよりリラックス効果は高いという結果が出ている。
直射日光を遮らない海岸や農地は輻射熱があり温熱環境が不利との条件はあるが…。
ストレスホルモンは唾液中のコルチゾール濃度を測るとわかるらしい。
1キロ程度の森林浴でも、その濃度が高まり、ストレスが減少することが数字で確認できる。
2泊3日の滞在で30日間も持続するそうだ。なるほど、なるほど。
木蔭のやらわかな陽の下、緑の風を受けて、緑の中を歩けば、(視覚、触覚)
美しい鳥のさえずりと清流の流れの音を聞きながら歩けば、(聴覚)
樹木に触れたり、抱き着いたり、葉っぱを触ったり、(触覚、味覚)
時には木の実にもおいしいものがあるが、そんな中で食事をしたりすれば、間違いなく“気持ちが良い”!
これに、「香り(嗅覚)」が加われば、まさに「五感」での体験ができる。
この香り効果の注目点は、免疫系機能の活性化だ。
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)とよばれるリンパ球の一種で腫瘍細胞の監視機能やウイルス感染の防御機能があるこの細胞が活性化するようだ。
これが、人の抗癌機能を高めたり、動脈硬化の予防効果のあるアディポネクチンの濃度を高めるなど実験結果が報告されている。
これから検証が進めば、もっと森林浴やセラピーについての活動が注目されることだろう。
国土緑化推進機構によるフォレストサポーターHPによれば、
欧米等の諸外国では、予防医療が定着し、自然保養地への滞在に対して健康保険が適用され、保養地に医師や自然療法を行う療法士がいる国々がいくつもありある。
わが国においても生活習慣病やメンタルヘルス不全が社会問題化している中で、その流れを受け、豊富に存在する森林を含めた地域の豊かな自然を、ココロとカラダの健康づくりに役立てていこうとする「森林セラピー」の取組が全国に広がってきている。
特定非営利活動法人森林セラピーソサイエティによる認定、森林セラピー基地は全国に63ある。
まあ、赤沢自然休養林の施設も道も立派だが、たとえ設備は整ってない裏山でも近所の公園でも、緑に中をあるけば気持ちが良い。
「気持ちが良い」と感じるのがまずは大事。
それが、科学的に証明が進み、もっとたくさんの人が森林浴の効能に気が付いて、森に目を向けてくれれば、
そんな時代に向かって、森林インストラクターとして活動していかねば…と思いを新たにしている。
2019年7月7日 [記]
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