日本一の紅葉

【日本一の紅葉】

空と雲と山歩き>山で思うこと>日本一の紅葉

■私版「山がくれた百のよろこび」8■

画像


涸沢カール「日本一の紅葉」と言われております…なぜ日本一なのか
標高が高く、寒暖差があり、摂氏八度以下の冷気…
特に夜の急激な冷え込み…
澄んだ空気…
谷が東向きで十分な日当たり…
適度な湿度…

画像


が、涸沢にはもうひとつの最大の特徴
それは、カール地形で風の影響が最少ですみ、落葉が最後まで残ることです
つまり、
紅葉の初めから終わりまで鮮やかな葉を見ることができる
そんな様々な種類の黄葉と紅葉が織りなす錦の絵模様

画像

 
ここへ到達するまでには長い時間が必要です
上高地から横尾まで3時間、横尾から涸沢カールまで3時間
お気に入りは横尾から本谷橋を渡り、屏風を巻きながら、涸沢谷にはいってからが圧巻
氷河に削られたこの谷は深く、曲がりくねって、涸沢圏谷に至る

画像

 
5万年の時間をかけて削られた谷、
岩が崩れて谷に流れ込み岩錐となる
植物はそこに根付き、生長しては枯れ子孫を残し、幾世代にも渡って、この地で生きている
黄葉するカツラ、ダケカンバ、
紅葉するミネカエデなどのカエデ類
何よりも、赤い実と深紅の紅葉をするナナカマド!
そんな紅葉と黄葉のトンネルを歩く

画像

 

画像

 

いろんな山を歩きましたが、ここほど感嘆の声を聴く場所はりあません
登山者は、涸沢の美しさを称え、
それが、見ている自分にも共鳴する
男性は“おぉ〜すげ〜”、女性は“きれい〜”と
特に“美しい〜”という声が上がるほど、
ここは、本当に「美しい」

画像


秋は人を感傷的にする
紅葉と自分を重ね合わせ、その時々の心象風景となる

画像

 
紅葉は樹木の一年間の「長い旅路の果て」、
冬に備えて、葉っぱを切り落とし、光合成という活動を休止するのです
色が変わるのは、幹とのパイプが遮断され、色素が抜けて行くから…やがては落葉
それを人生の“旅路の果て”と重ね、人は感傷的になる

画像


もちろん、そう思うが故に、紅葉も黄葉も美しいのかもしれません
でも、落葉は次の春への準備なのです
次のステップ…そうとらえるとまた、更に美しい
自分の今年の歩みを振り返りながら、紅葉を眺めます…
しんどいことや苦しい気持ちは落葉の如く切り落とし、楽しいこと来年に期待して準備をすることにしましょう

画像


登るほどに黄葉はまぶしく
周囲の山々も北アルプスらしく岩峰と黄葉が美しい

画像


振り返れば、涸沢谷の向こうに常念山脈が見える

画像


さあ、涸沢が見えてきました

画像


三千メートルの高峰に取り囲まれた圏谷カール
夏よりこの秋に人が集まる場所、9月下旬から10月上旬、紅葉のピークは数日しかありません
毎日、山小屋に千人、テントで千人
それぞれの人が、それぞれの思いで、この圏谷めがけて登ってきます

命がけで岩峰を登るクライマーも、
紅葉目当ての山ガール、山ボーイも、皆が間違いなく、感動する場所です

画像 画像
画像 画像 画像
2013年11月10日〈記〉 2019年10月12日〈改〉


現在地:空と雲と山歩き>山で思うこと>日本一の紅葉