葉序の進化

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■ 対生から互生は進化か!? ■

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森林インストラクター会“愛”主催のイベント、「子供も大人も樹木博士」。
参加者に10種の樹木のご説明をして、最後にクイズで正解率に応じて認定証をお渡しするという会のメインイベント。
場所は名古屋市「名城公園」、昔は沼地、江戸時代から名古屋城の離宮となり、戦後は公園となった。名古屋市のど真ん中にあり、市民の憩いの場となっている。

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最後のクイズ、10種の樹木葉のサンプルを目の前に、参加者は「う〜〜ん」と唸りながら、我々はヒントをささやきながら、回答をいただく。
もちろん、参加者には葉っぱの特徴を説明している。私も、個々の特徴は分かっているわけだが、この10種が一同に会して初めて気が付いたことがある。
「それにしても、いろんな種類があるなあ〜」だ。今更だ(笑) 

葉っぱの形や並び方には意味があり、特に並びを葉序(ようじょ)という。 
私ははたして体系的にそれを理解しているか?? 
ということで…
葉序の基本は、「輪生」(茎の節に2枚以上の葉が輪を描いてが付く)、「対生」(茎の節に2枚の葉が付く)、「互生」(1枚の葉が付く=節が2つあればズレて付く)の三種類。
1948年植物学雑誌の前川先生の論文による、“「輪生」→「対生」→「コクサギ型」(対生の変則)→「互生」と進化”という説がある。
CPUシミュレーションなどによる理論化が進んでいるものの、100%の解明されていない。

ネズミモチ

ネズミモチ


最初は「対生」
写真は、ネズミモチ:モクセイ科イボタノキ属。
常緑樹には珍しく、単葉で全縁(ギザギザなし)で、「対生」。 
これでもかってぐらい、密生して生えている。(笑) 生命力の高い樹木だ。
対生の中の二列対生(平面的に対生)、十字対生(上下の節が90度ずれて対生、上から立体的にみると十字にみえる)もある。
「単葉」の意味は、葉全体が1枚の葉身からなる葉、まぁよく見る葉っぱのこと。

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写真は、ナンテン(南天):メギ科ナンテン属。
単葉ではなく、「複葉」という。
単葉は、長い進化の歴史の中!?で、ギザギザが入って、だんだん分裂してき、複葉となっていく。
そもそも、葉っぱ、太陽光をいっぱいあびて、光合成して、栄養を作り、自らの成長及び繁殖のエネルギーとするために存在する。
太陽光を受ける為に、葉っぱは進化する。 
通説、種子植物では、単葉よりも複葉の方が同じ葉面積の葉を展開・落葉させるのにエネルギー消費が少なくてすむと考えられているらしい。
なるほど、消費エネルギーの観点ね。 単葉と複葉…複葉が進化系か? 
葉序から話題がそれたが、 葉の形(単葉と複葉)の世界も深い。

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これは、サルスベリ:中国原産、ミソハギ科サルスベリ属落葉高木。夏に美しい赤い花が樹木を覆う。
この葉序が、面白い! 
「コクサギ型葉序」と呼ばれ、右右左左(普通は右左右左)という特異な「互生」と言われるが、
正確には開度が180°、90°、180°、270°、180°、90°、・・・と特異なパターンで周期的に変化する「互生」
上から見ると、良く分かりませんが、太陽視点(斜め上)から見れば、やはり葉っぱの重なりが少なく見える。
でも、このパターンが最適かというとそうでもない。
いわゆる黄金比「1:1.618」、角度にすると「137.55°:222.5°」が最も効率が良いとされ、実際にその開度で葉を出す植物もいる。
と、数字の羅列をしてもわかりにくいので、
乱暴な言い方(笑)にすると、複雑にずれていて対生より太陽光を受ける効率が良くなっているということ。
そこで、この型を「対生から互生への変化の途中の葉序でないか」という…前川先生説。

ネズミモチ

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そして「互生」
常緑樹のヤブツバキ:ツバキ科ツバキ属。対生でなく、節に1葉、ずれて付いていることが良く分かる。
落葉樹は、ブナ:ブナ科ブナ属。
福井大長山でみたブナの葉を下から眺めた絵。初夏の太陽を受けて美しい。
よく見ると、やはり毎節からでる葉がズレて付いている。
「互生」は、一つの葉と次の葉は茎を中心としてある角度をもっているので、葉の付着点を繋ぐとらせん状になる。
互生と螺旋(角度)の関係や「コクサギ型」からこの「互生」へ進化については、まだ理解が付いていってないが…
ちょっとずれて葉が付いていくので、葉っぱの重なりが少なくすみ、太陽の光を効率的に受けれそうではある。
そういう観点から、互生は対生より進化していると良く言われるのは納得。
「対生」→「コクサギ型」→「互生」…奥が深い、深すぎる…

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一方で、葉っぱ一枚一枚に注目するとオーキシンという植物ホルモンがもっと複雑に作用しているのではという学説がある。
オーキシンは、葉や茎に光に対して正の屈光性(向日性)を働きかけ、葉っぱが重ならないように微妙な動きをさせる。
太陽に当たらない側に集まり濃度が高くなると成長が止まる、反対側は成長するので、微妙に葉っぱを太陽側に向けるという実に巧妙な「陽当りを逆手にとる」技を使っている。
写真のように、大木を見上げるとあまり空が見えず、葉っぱで埋め尽くされているのが良い例。
実は、これが、微妙に動かしているだけでなく、長い目で見れば進化していく葉序のパターンを決めているとの研究も進んでいるようだ。
葉っぱの順序のパターンは基本3種だが、この研究が進むと、いつか新たな定説が生まれるかもしれない。
太陽があり、植物があり、動物がいるからこそ人も生きているわけで、太陽と植物の関係はその根幹にかわかる大事な研究。

太陽光を効率的に受ける仕組みが解明されれば、太陽光発電などにも応用できるようになるに違いない。
まだまだ、分からないことが多いこの分野、植物の生きる戦略に学ぶことが多い!

2019年6月29日 [記] 2021年1月月29日[改]

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