播種と鉢替

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■森林インストラクター会の研修で「種を播いて、実生を鉢へ移す」を体験■

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種を播いて、実生を鉢へ移し替えをする、初めての経験。
コナラのドングリを集めてくる。地場のドングリであることが大切。
同じ樹種でも地域によって遺伝子が違う可能性があるので、なるべくその地で育てるならその地の種を集める。
地域間とはいえ、人による遺伝子攪乱を防ぐのが目的。
水に放り込み、浮いている種は使わずに、沈んだ種を選ぶ。
軽いものは虫に食われて中身がすくないなどの理由で発芽の確立が低い。
自然界では2週間ほどで発芽するらしい。

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鹿沼土(かぬまつち)という水はけのよい土の上に種を播く。
先生に「なん名前の土ですか?」と聞いたら、参加しているメンバーに「知らないの?」と笑われた。
それほどに有名な土らしい。
『鹿沼土は通気性・保水性がともに高いことと、強い酸性土であるため、主にサツキなどのツツジ科の植物や東洋ランなどの栽培に用いられる。また、雑菌をほとんど含まないため、挿し芽などにも適している。 鹿沼土は水分を含むと黄色くなり、乾燥すると白くなる[2]ので土壌の乾燥が判断しやすく、園芸に優れている。弱点としては保肥性が低いことが挙げられる。 別名「赤玉土」、園芸用としてホームセンター、農業用で農協へ出荷される。』(Wikipedea)
素性は赤城山が噴火したときの軽石で、栃木の鹿沼地方あたりに降り積もった関東ローム層というわれる地層から採取できる。
なるほど、土と名前があるが、軽石が砕けたやつね。

その鹿沼土にバラバラと巻いて、上からちょっとだけ土をかぶせる。保温などの意味があるようだ。
自然界でも、落ちた種の上にには落葉などが積み重なり、近い状態になる。
実際の種は、動物や昆虫に食べられたりして相当数はなくなる。
この人工状態でも、発芽率は約60%らしい。
根っ子と新芽は尖った方から出てくる、根っこは水を求めて下へ、新芽は太陽を求めて上へ…誰にも教われないのに遺伝子に組み込まれている。

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次は鉢替え。
芽が出て半年?ほどで、ポット鉢へ移す。
樹種はヒメユズリハ。
ユズリハ科ユズリハ属、暖温帯・亜熱帯に自生。沿海の常緑樹林内に普通。
密生している実生を鹿沼土から取り出して、広いポットへ移す。
土には鹿沼土と腐葉土をブレンドしている。これからは成長期なので栄養のない鹿沼土だけでは育たない。

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ヒメユズリハの実生にブレンド土をかけて鉢に埋めていく。
ポイントは二つ。
ひとつは、根っこを土の中で広げた状態で埋める。
土をどばーっと入れると偏ったり、切れたりするので、優しく入れてながら、軽い振動させながら根っ子の間に土が入るようにする。
むずかしい。でも、こうやって土をいじったことがないので楽しい。
二つ目は、土は根っ子と新芽の境目までしっかりと埋めること。
根っ子はその役割を新芽もその機能を十二分に発揮できる状態とする。
これはそんなに難しくない。

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ポット苗は2年ほどで成長して、今度は地植えとなる。元の生態系に戻っていく。
自然界では種から実生となり、その生態系の一員となる確率は相当低いだろう。
人が壊した自然は人の手でもとに戻さねば・・・
この研修を受けさせていただいた会社は「地域植生を活かした生態系づくり」に挑む会社
たいへん良い勉強をさせていただきました。
ドングリ一つ、実生一本の大切さが、その積み重ねが生態系なんだということが体験して初めて分かった。

なにより印象的だったのは、ヒメユズリハの実生の根っ子。
この純粋な白さ!
この細さ! 
この根っ子が地上を支えているのか。
水分と無機質の養分を地面から吸い上げて茎と葉っぱを成長させていくのか。
想像以上の“無垢さ”に感激。

2021年10月10日[体験] 10月23日[記]

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