上高地 地形と地質 勉強会

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11月11日、小梨平から穂高を眺める。西穂、奥穂、前穂と穂高連峰。ただただ、美しい。大森弘一郎さん主宰「上高地クラブ」による信州大学名誉教授 原山智 先生との勉強会に参加した。

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主目的は、上高地の地形と地質の勉強。美しい景観を眺めながら、背景にある壮大な自然史の世界を知ることが出来た。

勉強会の“肝”は明神の河原で原山先生が並べた石のグルーピング! 
左から、古い順にチャート、砂岩泥岩、フォルンフェルス、花崗岩、溶結凝灰岩、文像斑岩(たぶん)と並べていただいた。
これだけでは、なんのこっちゃという事になるので、美しい上高地の地形を見ながら復習していこう!


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明神を超えて横尾まで梓川の左岸は、堆積岩 泥岩を中心とした砂岩、チャートからなる。
約1億5000年前の地層。このあ辺りでは一番古い地層、いわゆる日本の国土の土台となっている付加体。
一番わかりやすく見える露頭がここ。河童橋から歩いて、徳本峠への分岐を超えた場所にある。
それも褶曲している。「岩石が出来てから曲がったのではなく、まだ柔らかいときに圧力を受けるとこうなる」
この褶曲状態が露頭の奥にどこまで続いているのか・・・見える2次元でなく、3次元で見えればその凄さがわかるはずだが、想像するしかない。
先生の手にあるのは「泥岩」、「硯のように黒い」。泥岩は粒子が細かいので、優しい流れの処にたまったものが積み重なる。
よって、優しい流れはそう長くはない!?ので泥岩は大きくならない。が、一方で、砂岩は粒子が粗く大きな塊になるらしい。
なるほど!

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火成岩 花崗岩・・・地下深くでマグマがゆっくりと冷えて出来る。ゆっくりなので鉱物の結晶が大きくなる。
白いのは長石や石英、石英の無色透明なものが水晶となる。
寒暖差による膨張率の違いで、バラバラになりやすく、粒状化することを、「マサ(真砂)」化するという。
上高地では、先ほどの泥岩の地層の下から上昇してきた約6500万年前の花崗岩を見ることが出来る。
花崗岩は、常念岳から南に梓川の右岸へと帯状に続き、梓川が西向きに流れるを変える明神あたりで左岸となり、更に南へ続く。
明神あたりに白沢という名前があるが、まさに花崗岩の白色が由来。
このマサ化は中央アルプスや六甲山地でよく見る。両方とも花崗岩の山塊なので、そうなる訳か。
蛇足だが、たまたま写っているニホンザルは、10年前に比べれば数が増えた気がする。
サルが植生や人に悪影響を与えないのか将来が心配。

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白沢から振り返ると、明神岳が真正面に見える絶景となる。
左に2263ピーク、正面が雲に隠れる第5峰、右にコルを経て長七ノ頭が見える。
遡ること176万年前、槍・穂高は巨大なカルデラ火山だった。
これは先生が長年のフィールドワークの末に発見した事実で今は学会の定説になっている。
カルデラは、南北20km東西6km深さは3km!もあった。このコルから右側(北側)はカルデア外輪山の西の端になるらしい・・・!
その火砕流がカルデラにたまって岩石となり、「溶結凝灰岩」となる。
その後、5km!も隆起して、風雪の浸食により今の明神や穂高・槍が形成、
岩石はとても高温により溶結しているのでとても硬質で浸食にも強く、岩の殿堂とよばれる山々となった。
明神岳を目の前に、お話を聞いていると、その壮大な自然史に驚愕しつつも、とても興味深い。

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大きなカルデラといえば、阿蘇のカルデラを思い起こすが、かのカルデラは世界一で南北約25km、東西約16kmもある。
それも、たったの!?9万年前の出来事。
同じように、大きな火砕流が谷を埋め尽くし、溶結凝灰岩となる。浸食されて出来たのが宮崎の「高千穂峡」。
原山先生のサインをいただた「槍・穂高・上高地 地学ノート」にも記載されいる。
たまたま、上高地で勉強する1週間前に撮った高千穂峡の写真。
先生の本にもあるが、槍・穂高カルデラも噴火直後は、こんな姿だったのかも知れない。
176万年・・・途方もない時間の流れに、この荒々しい山容と美しい梓川の流れがあると思うと、見飽きることのない景色がここにある。

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槍・穂高のカルデラ噴火の後、大きな力が北アルプスを持ち上げ始める。
東西からのプレートの圧縮で槍・穂高と笠ヶ岳の間に断層が出来、溶結凝灰岩の下部にあったマグマが冷えてできた花崗岩がせり上がってくる。
たったの140万年前。地上で見ることだできる“世界一若い花崗岩”滝谷花崗閃緑岩
世界レベルでも、こんなに早く地上に出てくることは貴重らしく、プレートの圧力は凄かったということか。
小梨平と明神との間から眺める西穂岳の独標から左側(南側)はその花崗岩で出来ている。
麓にあるウエストン碑がその岩石。
写真は碑の一部と滝谷花崗閃緑岩が写っているが、アップにはしたもののそれが、“解ったなるほど新しいね”ってことにはならない(笑)
ちなみに古い岩はグランマ(=グランドマザーの略)花崗岩というらしい。 

明神からウエストン碑まで、1億5000万年から140万年前までの地形と地質の旅。
そんな事を勉強させていただいて、全員(総勢7名)で小梨平キャンプ場から改めて穂高連邦と明神岳、この美しい景観を眺めた。ますます上高地が興味深い場所となった。

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2023年11月11日ー12日【現地講座日】 11月25日[記]

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