高木の針葉樹をどうやって見分けよう

空と雲と山歩き>森歩き>針葉樹の見分け方

画像

先日、山の仲間と飛騨にある位山(くらいやま)・標高1,529mを歩いた。
寒冷地になるので常緑の広葉樹はほとんどなく、落葉広葉樹は、すっかり葉っぱを落として、緑で目立つのは「針葉樹」ばかり。
針葉樹は広葉樹に比べれば、種類が少ないのにも変わらわず、まだまだ見分けることが出来ないものが多い。
樹木の名前は記号に過ぎないのだが、これがわからないと、その次のステップに進めない。
普段は暖温帯に住んでいるので、山を歩いても見かけるのはスギとヒノキが多い、見分けるのは簡単だが、高い山にはもっと多くの種類がある。
その上、針葉樹は成長が早いので高木が多く、広葉樹のように葉っぱをシゲシゲと眺めることも難しい。
さて、どうするか?

ヒノキ:ヒノキ目ヒノキ科ヒノキ属:標高1100mにある赤沢自然休養林にある巨木の一つ。
樹木解説など読むと、自生環境は「本州福島以南九州まで山地のやや傾斜のある適潤地や急傾斜地、尾根筋(APG樹木図鑑)」主幹の樹皮は「赤味の強い茶色で割け幅はスギより広く切れ端を引くと長く連なってはがれやすい(樹皮ハンドブック)」とある。
たしかに、このヒノキもやや傾斜のある場所、樹皮も赤い茶色の縦筋が幾重にも重なり剥がれ落ちている部分もある。
・・・これだ生育地と樹皮を見ればよいのでは!との思いに至る。

画像


サワラ:ヒノキ科ヒノキ属、標高1300mの水木沢の森にある樹齢200余年の大サワラ。
本州から九州に自生、主に冷温帯に自生、湿気の多い肥沃地で渓流沿いに多く生じる。
樹皮は「やや灰色の強い赤茶色、裂け幅はヒノキよりやや狭く、スギに似る。樹皮は幹に密着して裂けにくい。樹皮だけではヒノキ、スギなどと区別するのは困難な場合も多い(同上)」
むむ、なるほど。
写真だけみると、このサワラの樹皮の色の方が赤く見える・・・が樹皮ははがれていなかったので、サワラだ
この巨木は樹名板があったので、間違いないが、やはり見分けは難しい。
葉っぱがあれば気孔帯がヒノキはY字、サワラがx字と判断は容易なのだが。

画像


ネズコ:ヒノキ科ネズコ属、標高1,350m水木沢の稜線近くにあった巨木。水木沢は樹齢200年以上の樹木が林立する原生林の森。
生育地は「日本特産で本州、四国に分布、中部地方以北に多くコメツガと混生する。(低山から)亜高山帯に山地のやや傾斜のある適潤地に自生する」
樹皮は「ヒノキに比べやや平滑で赤味が強い傾向がある(樹皮ハンドブック)」
たしかに、ヒノキに比較すれば平滑に違いない、この暗がりの写真でこの赤味ならヒノキより赤いのだろう。
きっと、こいつは出会っても見分けることが出来る。

画像


スギ:ヒノキ科スギ属、富山の美女平の立山杉の一つ。巨木。里山の植林された杉とは違う、威風堂々たる杉。
樹皮は、「赤味を帯びた茶色、繊維状に縦に細かく裂ける。ヒノキと異なり、樹皮は幹に密着してはがれにくい」
生育地は「本州から九州に分布、西日の当たらない谷間で腐植質に富む肥沃で湿潤な土壌に自生する」
確かに谷筋にこの木はあって、巨大に育っていた。
赤味を帯びた樹皮は一部だが、よく見る里山のスギは確かにうすい茶色。
解説にあるようにヒノキやサワラの方が茶色気が強いかな。確かにこんな老木でも樹皮ははがれていない。

画像


先日 山の仲間と歩いた飛騨の山、標高1300m辺りにあった巨木。
大きな岩を抱え込み、すっくと聳えるこの針葉樹。
葉っぱを見ることが適わないので、生育地と樹皮から見てみよう。
飛騨で標高がこれだけ高いと、気候区分は冷温帯になる。山頂に向かってゆるやかな傾斜地が続く尾根筋にある。
樹皮は横筋でも縦筋でもない、「網目状」にみえる。
網目状の針葉樹マツ科モミ属とトウヒ属か・・・? トウヒは個体数が少ないらしいので可能性は低い!?
モミ属はモミとウラジロモミがあるが、モミは温帯で、ウラジロモミは冷温帯とある。
ということは、これは「ウラジロモミ」、という結論に至る。あたっているかどうかは葉っぱを見ないと分からないが。
葉っぱはモミ属共通の葉の基部が丸く広がり、ウラジロモミは気孔帯が白色で目立っているはず。
なるほどなるほど、生育地と樹皮だけでも結構使える。

画像

画像


ウラジロモミが出てくれば、マツ目マツ科モミ属のモミを知りたくなる。青森以南の本州から九州の山地に自生。
気を付ければ低山でも見ることが出来る。ここは、瀬戸の定光寺自然休養林の見本林の一つ。
樹皮は「白っぽく平滑だが、成木になるにつれて割目が入り、老木では全面に網目状に剥離する。ウラジロミミに似るが多少橙色を帯びる(樹皮ハンドブック)」
見本林だったので若木もあったら、平滑でより白く粒々があった。写真は成木かな、綺麗に網目状になっている、粒粒も残っている。
葉っぱも見れたので、先っぽが二つに分かれて触ると痛い。葉の基部がかわいく丸い。ツガは葉先が少し凹んで触っても痛くない。
見本林の看板に「日本の特産種。陰樹で深根性、肥沃な土壌を好み、大気汚染に弱い。」とある。
空気が汚れた街の近くにはないということか。

画像


標高からモミと混生するのはツガ。
ツガ:マツ科ツガ属、標高600m屏風連山の麓。
自生地は「東北南部から九州の主に中間温帯に自生、山地から丘陵の尾根がや岩場などにやや普通」
樹皮は「網目状〜縦方向に粗く裂け、マツ類に似た風貌がある。多少赤味を帯びる傾向がある。モミとよく混生するが樹皮で区別可能(樹皮ハンドブック)」
このツガは「黒ノ田の大ツガ」と呼ばれ、樹齢300年推定の古木だが、樹皮はどちらかというと縦目に裂けている。
枝ぶりなどマツに似ている。まあマツ科なので当たりまえだが。
全体の枝ぶりは横に大きく張り出して堂々たるツガで、
今はひっそりと植林地帯の中に囲まれているが、昔は麓から眺めて一目でわかるほどの大きなツガだった。

画像

画像


飛騨の位山の名前の由来は、「岐阜県の県木であるイチイの木の産地として有名で、位山のイチイの木を笏(しゃく)の材料として天智天応に献上した際、この木が一位の官位を賜ったことから木はイチイ、 山は位山と呼ばれるようになったという説(飛騨一之宮HP)」がある。
飛騨の位山にはイチイの樹はあったのだが、気が付かず。 写真は上高地のもの。
イチイ:ヒノキ目イチイ科イチイ属、標高1000m上高地梓川沿い。
生息地は「北海道、本州から九州、冷温帯・亜高山帯に自生、北日本に多く時に群生する
樹皮は「赤味が強い茶色で、日本産針葉樹の中では最も赤い部類。縦に薄く裂けてはがれる。年を取ると縦のうねが現れやすく、うろ状になることもある(樹皮ハンドブック)」
このイチイは太陽光が眩しくて、色がわかりにくいが、明らかに赤い??樹皮のような記憶がある。
自然樹形は円錐型になるが、この樹は横に大きく枝が張り出している。上部が円錐になっているにちがいない。
横に張り出しているお蔭で、葉っぱの観察が出来た。
イチイ科にカヤがあるが、温帯にあること、樹皮は灰白色であること、葉先が痛い事で区別が出来る。
カヤの写真もいつか掲載せねば。

画像

画像

画像


シラビソ:マツ目マツ科モミ属:標高2400m 一つはオーレン小屋から硫黄岳への登山道の森、もう一つは蓼科山への最後の急登。樹木全体が標高1400m、ヘブンス園原。
生育地は「福島県吾妻山以南、紀伊半島大峰連峰、海抜1600m〜2400m間に分布、低温で夏は涼しく冬は厳冬、寒さの割には雪の少ない場所で、火山の裾野や中腹の火山灰などが堆積した地帯に自生する。(APG樹木図鑑)」
樹皮は「灰白色または灰青色をして、滑らかで樹脂が多い(同上)」とある。「横長の脂袋のふくらみが所々にある(樹皮ハンドブック)」ともある
八ヶ岳は火山だし、標高が高くなれば、この樹木によく出くわす。陰樹なので極相林となり大きな森を作る。
高山にあり樹皮に白っぽいくて横線が入り脂袋があれば、シラビソ・・・と覚えた。
標高的にはコメツガと混生するが、コメツガは樹皮が縦から網目状となっているので見分けれるはずだ。写真がないのでいつかアップしよう。

自己満足にすぎないが、
こうやって、記事にしてみると、『高木の針葉樹林はどうやって見分けよう』の答えを見つけた気分になってきた。なにやらうれしい。

最後にオオシラビソ、シラビソの仲間で同様に森林を形成する。シラビソより雪に強いので日本海側の多雪地や東北まで分布するらしい。
先日歩いた飛騨の位山からは白山が見える。白山もこの山も冬は雪が深い。遠目に見える樹木はオオシラビソの森。雪山と針葉樹の森は絵になる。
画像 画像

2022年11月27日[記] 2023年4月15日[シラビソ追記]

現在地:空と雲と山歩き>森歩き>針葉樹の見分け方