樹木は会話するのか!?

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ブナの森。ベルギーブラッセル郊外に広がるソワーニュの森。8割がヨーロッパブナ。
すくすくとまっすぐに伸びてたブナが林立する。
日本のブナは冷温帯や多雪地帯(除くイヌブナ)に多い為か、こんなにまっすぐに育たない。この林立する大きなブナの森は圧巻だった。

最近、読んだ本で新たな森を観る視点を知った。「樹木たちの知られざる生活」ドイツの森林管理官だったピーターヴォールレーベン著
ヨーロッパのブナは、中世で多くは伐採され、現在ほとんどは人工林となり、その反省からか百年単位で管理されている。ブナは400年は生きると言われているが、その前の伐採されるようだ。

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よく歩いたこの森で大きな切り株を見た、数えたら250歳ぐらい。なかなかの巨木。
百年単位で管理させているとは聞いていたが、それなりの年齢で切り倒されるのか。
建材として使うのか・・・寿命を全うできないわけだ。 整然とした森にはそんな理由があるのかと感心させられる。

そして、この本は、ブナの森は個々の樹木が独立して生活しているのではなく、集団で会話し、助け合いながら、自らの環境を作り守りながら生きているという事実を教えてくれる。

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ヨーロッパの中緯度は、冷温帯で、広大な森はブナ林が多い。
ヨーロッパでは民族の木と言われ「ブナ生ずるところ常に土地は美し」というほど。
ベルギー南西部のアルデンヌ山地へ向かうハイウエイもブナを中心とする森の丘陵地帯を超えていく。お気に入りの風景。

森の効用はいくつかあるが、カーボンニュートラルが叫ばれる今時なら、「酸素の供給」だろう。太陽の光と二酸化炭素の吸収から養分と酸素を作る光合成、酸素を吐き出す。
1平方キロメートルで10tの酸素を放出している。人一人は陽当り1kgを消費として、10tなら1万人分か!? 
森の中を歩くと「気持ち良い」のも効用。空気が新鮮だからだが、具体的には樹木には塵やホコリなど大小の物質を除去してくれている。
1平方キロメートルで年間で7000tをフィルター効果がある。日当たり2.7t・・・結構な量だな。
夏場は陽射しも防いでくれるこれも「気持ち良い」効果のひとつだろう。
針葉樹の森に比して、10度程度温度が低くなるとの研究もある。 広葉樹は葉っぱが広く、1平方メートル辺り27平方メートルも面積がある。葉っぱからの気化熱もある。
針葉樹ほどではないが、フィトンチッドによる匂い効果もあるだろう。
森は自らが住みやすい環境を作っているともいえる。

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ブナは400年生きる。ブナの実は5年に1度大量の実をつけるが5年間(温暖化で近年はサイクルが短くなっている)で3万個、80歳から150歳が最盛期らしいが、総合計で180万個の実を作る。
成年に周期があるのは、動物に毎年食べれれると困るので、数年に1度食べきれないほどの量の実をつける。
仮に食べられずに運よく実を出して、成木となるのはこの180万個の内のたった一個らしい。なんという厳しい世界。
幼木も簡単には大きくなれない。広葉樹に覆われた太陽光から地面に届くのは3%! これを懸命に小さな葉っぱで受け取る。
それだけでは生きていけないので、親木は根を通じて幼木に栄養を与えるらしい。動物と同じだ。
植物は根っこ間でもコミュニケーションを取っていると著者は宣う。

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幼木が成木になる最大のチャンスは、近くの成木がなんらかの理由で枯れたり倒れたりした時! 
樹冠にギャップが出来て太陽光が差し込んだ時! このチャンスを逃さず、20年ほどの競争期間があり、この樹冠を奪えた樹木だけが生き残れる。 
幼木は葉っぱも薄く、強烈な太陽光を受けるには分厚さがいる。
その準備だけで3年はかかり、同時に自分を上へ上へと成長させねばならない。
チャンスはあるが、競争は苛烈だ。

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一番の驚きは、樹木間のコミュニケーション
親子だけでなく、同じ樹木同士での根っ子ネットワークで栄養の授受をするらしい!?
隣の木にまで大きく枝を広げない、林冠では無用な競争をしない、お互いに助け合う。異種とはそうでない場合もあるようだが・・・。
木には香りによるコミュニケーションもある。
人も動物もパートナーを決める重要な要素に匂いがある。フェロモンが知らず知らずの決めてになっているとか。
動物に食べられれば、そこに毒素を集める、周りにエチレンを播いて仲間に知らせる(アフリカのアカシアの事例)。
フィトンチッドの一種であるテルペンなどもその一種かもしれない。
漢方薬や薬草だけでなく、タミフル、キニーネ、アスピリン、モルヒネが植物に由来する薬(東山植物園HP)・・・植物の防御能力はまだまだあるに違いない。
化学物資による芳香だけでなく、電気信号も使う。
ナラの木は害虫の食害をうけると、電気信号を全身に送り秒速1?の速さでタンニンを樹皮や葉っぱに送り込む。
もっと広範囲の森には、菌類の菌糸のネットワークを通じて害虫などの情報が知らされる!? 本当か!?と驚かされる。
ウッドワイドウエブと呼ぶ学者もいるよう。
このコミュニケーション能力は、樹木は1本1本が独立しているのではなく、動物同様に社会性があるってことか!?
これからもきっと、驚くべく能力が発見されることだろう。 
なにせ、4億年以上生存競争を勝ち抜いてきた現在の樹木達、まだまだ人類は植物から学ぶことは多い。
2022年2月13日[記]  2月19日[改]

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