自然史と火山の姿

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■自然史と恐ろしくも美しい火山の姿■

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国土地理院の地質図は面白い。火山岩(火山で噴出された岩石や流れた岩屑、火山灰)だけを表示できる。これがそれ、中部と関東辺り。

肌色や茶色やピンクがここ15万年以内に爆発して流れ出した火山岩群
逆に色の付いていない衛星写真部分が、堆積岩や変成岩ということになる。
こうやって見てみるとなんと火山関連の岩石が多い事か。
伊豆半島から富士山にかけては火山岩だらけ・・・関東平野を取り巻くように火山がある。
南アルプスと中央アルプスは色なし、つまりプレートに押されて出来た褶曲山地であることがわかる。
北アルプスは色付き、焼岳は今も活発に活動しているが、穂高や槍、笠ヶ岳、立山、鹿島槍、白馬、黒姫、火打と時代は違うが火山が続く。

日本の活火山は111、2003年に火山噴火予知連絡会が「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義し直した。
学生時代に学んだ、「休火山」「死火山」というものはなくなった。火山学というものは、科学の発達とともにどんどん変わっていく。

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八ヶ岳周辺をクローズアップしてみる。
山頂部を占める茶色は「約15万年前から約1万8000年前に火山から噴火した火山の岩石(安山岩・玄武岩)」。
南の編笠山から赤岳、硫黄岳、(北横岳を飛ばして)蓼科山まで、山頂部から東西南北に流れ出て今でも覆われている様子が良く分かる。
北横岳のピンク色は「約1万8000年前から現在まで噴火した火山の岩石(安山岩・玄武岩)」、800年〜600年前にも噴火しているという八ケ岳唯一の「活火山」
その周辺の黄土色2種は「170万年前から70万年前または現在までに流れた火山岩や岩屑の堆積物」、これが大きく裾野を形成している。

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活火山である北横岳を体験できるのが、坪庭・・・浅間山の鬼押し出しにように流れ出た溶岩をまじかで体感できる。
坪庭にはロープ―ウエイで北横岳にはそこから2時間程度で大展望の山頂に立てる。
硫黄岳は古い火山だが、大昔の爆裂火口がまじかで見ることができる。直径1km深さ500mの大迫力の爆発した火口壁。
夏沢峠から山頂への登山道はこの火口沿いにあり迫力ある山歩きを楽しめる。
この幾度にも渡る火山活動が、バリエーションに富む風景が堪能できる理由。

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八ヶ岳は、なんといっても裾野が優美!
これも流れ出る溶岩と岩屑が作り出す曲線美。 
高校時代に初めて歩いた高山、そして、この美しい裾野に魅了された。
今でも日本一の美しい裾野ではないかと確信している。

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同じ縮尺で「御嶽山」周辺を見る。
御嶽山頂は剣が峰。3026m。独立峰では富士山に次ぐ高さ。
山頂周辺は茶色「約15万年前〜約1万8000年前に噴火した火山岩(安山岩・玄武岩)」
周辺の黄土色は「約70万年前〜15万年前に噴火した火山岩(安山岩・玄武岩)」、
2014年に水蒸気爆発を起こして、居合わせた登山者ら58名が死亡した、不明者はまだ5名。日本における戦後最悪の火山災害は記憶に新しい。
西側に広大に広がるピンク色は「約1億年〜約6500万年前に噴火した火山岩(デイサイト・流紋岩)」と古い火山岩が広がる。
日本列島が今の形になったので、1100万年前なのでそれもよりももっと古い時代、ユーラシア大陸にあったころの火山活動になる。

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水蒸気爆発以前に4回、この山を歩いた。
剣ヶ峰からはいつくかの火口湖が見えて、二ノ池はコバルトブルーで殊の外、美しい
ただ、新しい火山は山頂部はどこも荒々しい、こんな荒涼とした厳しい世界が広がる。
このお山は、この1万年で4回はマグマを伴う噴火をしているらしい。(気象庁 火山)
全体の山容も特徴的で、東西側からみると山頂部が広く! そこからの裾野は成層火山然とした曲線
独立峰が故に富士山同様にどの方向から見てもきれいな曲線になっている。
木曽の御嶽山。

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「白山」周辺を見る。
主峰の御前峰はピンク色「約1万8000年前から現在まで噴火した火山の岩石(安山岩・玄武岩)」で、ここも「活火山」。
15万年前〜火山岩の茶色、
北側にひろがる濃いピンクは1億年前〜火山岩、西にある黄色は約2200万年〜、いずれも古い火山岩、
日本列島が今の形になったのが1100万年前だから、それより古い。まだユーラシア大陸に引っ付いている頃。
因みに、白山御前峰の南側が白いが、ここは堆積岩、
恐竜の化石が良く出る「手取層群」で、1億年数千年前のジュラ紀から白亜紀に手取湖という巨大な湖に堆積した地層らしい。
とにかく古い。

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山頂はやはり活火山だけあってまだまだ荒々しい。
1659年(万治2年)の噴火が最も新しい。たったの400年ほど前。
江戸時代の初期、江戸城本丸の造営竣工の年らしい。
白山は加賀の街から見えるので、どんな噴火だったのだろう。
山頂に立つとそのすごさが分かるが、一歩、視点を引いてみると、山容は柔らかく美しい。

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火山は山頂部と裾野が特徴的。
日本三霊山である、御嶽、白山そして立山はいずれも火山。
里から見えることも条件だったが、山頂部の特異な特徴や冠雪時の神々しさ、裾野の美しさ・・・
それが威厳を与える。
写真は、ホームグラウンドの尾張のみろく山(437m)から100km北にある白山(2702m)を眺める。
空気の澄んだ晴れた日に、遠くに白く眺めることができるこの山は、なにか「たおやかで艶めかしい」!
とてもあんな厳しいい火山であることは想像できない。眺める美しさの裏には厳しく激しい自然史がある

 2020年8月23日[記]


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