樹形の戦略

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■ 何故、そんな形状になるのか ■

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大好きな裏山の晩秋。ここは尾張の木曽山系の西の外れ、その先は広大な濃尾平野が広がる。
雰囲気、色合い、様々な樹冠、見ているだけで植物の多様性を感じる。
植物には、たくさんの種類がある。日本には約6,000種の植物があるそうだ。その形状は様々。
裏山は最も身近な山で、毎日見るが…マクロの視点で気が付くのは、色と形。
新緑、紅葉、落葉、冬枯れ・・・丸形、卵形、三角形、ほうき型の樹。その組合せがたくさんのバリエーションを多様性を感じさせ、見ていて楽しい。

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ここは中部山岳地帯 八ヶ岳の硫黄岳、赤岩の頭からオーレン小屋へのくだり道。標高は2,000m辺り。
コメツガやオオシラビソの樹林帯。
針葉樹は単幹で枝が横に単純分岐して、上に伸びて高木になるものが多い。裸子植物の本木の代表。
何故、上へ伸びるのか!
太陽光を多く獲得するために、上へ上へと成長する戦略が通説。よって成長も早い。
上への成長スピードが速いので、横枝はそれほどではないので上部より下部が長い、
よって、円錐型となる。
また、針葉樹の多くは裸子植物で、風媒花(風に花粉を乗せて飛ばす)が多いので、風を獲得する為に、高い方が有利になるという説もある。
約四憶年前 古生代石炭紀に裸子植物(≒針葉樹)は現れる。
陸上に進出して、草木から維管束をや木質を発達させて本木となっていく。
四億年前から1憶年前には寒冷期と温暖期が交互にやってくるが、
針葉樹の葉が細いのは、明らかに寒さへの対応と素人には思われるが、長らく寒い時代に進化したのか!?

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これは、関東 丹沢山系の大山(おおやま)の中腹辺り、標高にして600m。
どばっと広がる、広葉樹林帯。被子植物の代表格。
単幹ではあるが、軸幹が分岐して、上にも横にも広がる複雑な枝ぶり。
何故、横に広がるのか!
広葉樹は、上だけでなく、横へ横へと枝を伸ばし葉っぱを広げて、太陽光を獲得する作戦

葉っぱも大きくして、並び方(葉序)もなるべく太陽光を受けようとする。よって、名前は広い葉っぱの樹木。
約1憶年前、白亜紀の初期に裸子植物から被子植物(≒広葉樹)が分化。より種の生存率を高める為に胚珠にカバーを被らせて保護している。つまり、子を被せる。

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動物の多様性が被子植物を広めたという説もある。
裸子植物(≒針葉樹)には装飾性のある花はないが、被子植物(≒広葉樹)には、動物を呼び寄せる機能としての「目立つ花」の種類が多い。
写真は越前赤兎山 小原峠のオオカメノキ、緑の葉っぱに真っ白な花が眩しい。 派手に見せる為に、目立つ花の周囲に更に装飾花と呼ばれるものまで周囲に発達させる。

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裏山のツツジとカラズアゲハ。よく見るとツツジの雄蕊は一部が長く、蝶々のお尻に触れるような形状になっている。
花は人間の為にあるのではなく、動物(含む昆虫)に来てもらうために花を咲かせ、蜜を出し、ポリネタ―(花粉の運び屋)になってもらう工夫をする。
動物の種類が多くなればなるほど、植物もその多様性を増していくのか。動物の種類と共に花の種類も増えていくに違いない。
被子植物(≒広葉樹)の枝ぶりが複雑なのは、空中から見た時に横に広がって視界面積を広げ、昆虫達に見せる為かも…なんて勝手に想像する。

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なんとなく、分かってきたような気がするが、疑問が湧いた。
被子植物(≒広葉樹)も風媒で花粉をまく樹木がある、カバノキ科、ブナ科等…風媒花だな…
「これらの植物が被子植物としては最も原始的なものである…エングラーの体系はそれに基づくも…」(by Wiki)との記述もある。
これらは原始的な種類なので、まだ花が発達していないということか。 
はたまた、カバノキ科もブナ科も寒冷地の樹木、針葉樹とある程度エリアが重なるのでそこに秘密が隠されているのか!?
つまり、寒冷地なら昆虫の種類は少ない、それで「虫媒」でなく「風媒」を選んだのか…!?
越前 苅安山のブナさん教えて、どうしてあなたは広葉樹なのに、枝を複雑に縦横無人に広げているのに 風媒花なの? 原始的なのか、虫が少ないのか!?(笑)

おそらく、「裸子植物(針葉樹)=風媒花、被子植物(広葉樹)…虫媒花が多い」と構図を単純化しすぎなのだろう。もっと樹木の成り立ちは複雑だ。

「上へ」「横へ」ときたら「下へ」=「何故、枝垂れるのか」が理論的にはあるが、この形状は生存するには合理的でない。
枝垂れヤナギ、枝垂れザクラ、枝垂れ梅…植物としては太陽光を競争しながら獲得するには不利な形状。
物理的理由は、引当材が形成されない、伸長と肥大成長のアンバランス(日本植物生理学会QA)だからだが、納得できる理由はその種を人が美しいと思い人為的に増やすから。
おそらく、山の中では他種との競争の中で生きていけない

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さて、改めて 裏山をじっと見る。
広葉樹林が多い、よって樹形は丸っこい。針葉樹はスギ。それはそうだ、この辺りは広葉樹林帯エリア。
アラカシ・・・常緑の広葉樹、コナラ、クヌギ・・・落葉の広葉樹、あれみんなブナ科で風媒花! 花はそんなに目立たない。
ホウノキ、ヤマザクラ・・・落葉の広葉樹、これは虫媒花、花は目立つ!
スギ・・・常緑の針葉樹 樹形は典型的な三角錐。意外に風媒花が多いな!? 
やっぱり古い時代の種なので風媒花なのか…四億年の歴史を遡りたい気分。

「樹形の戦略」なんてカッコよい題材で素人ながら調べたり、想像を膨らませたが、まだまだ不明部分は多い。
・・・研究者には答えがあるのだろうが、まだまだ素人には簡単に理解できない世界がある。
これも、明確な答えが証明できれば、ノーベル科学賞ものか!? 

2019年12月22日 [記]     2020年3月28日[改]

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