森に降った雨

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■森に降った雨は何処へ行くのか■

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日本の年間降水量の平均は約1,700mm。山岳地帯など4,000mmを超える。世界平均は780mm。
地球の水の総量は約14億キロ立方メートル、97.5%は海、氷河と山に1.75%、地下の深層に0.73%・・・
川や湖や地下水という人が使える場所に0.02%(サントリー わくわく百科)。
海の水は蒸発して、山にぶつかり、雨になり、森に降り、土壌にしみて、川になり、また海へ、この循環がメビウスの輪のように永遠に続く
たったの0.02%、しかし量にすると280万キロ立方メートル(=黒部ダム2億立方メートルx1,400万倍)、多いのか少ないのか、
・・・想像が出来ないのでこれぐらいにして(笑

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森に降る雨がどこに行くのかを図にしてみた。
雨量は年平均の約1,700mmを目安に考えよう。
ちなみに、降水量はバラツク、土地の起伏形状、気象条件が様々で、山が多い長野は意外に約930mm、新潟は雪が多いので約1800mm、東京は約1500mm・・・(気象庁)

降った雨は、60%(=1,020mm)は樹木に当たって、最終的には地面に到達する。
それ以外の25%が蒸発。15%は蒸散する。蒸発は分かり易い。

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蒸散とは、植物が気孔から水分を空中に放出すること、この数字が意外に多い。
昼間、気温上昇で乾燥や体温上昇すると、植物は体温調整の為に、気孔が負の圧力をかけて導管から水を吸い上げて、気化熱で温度を下げる。
根から90%、葉っぱや茎からも水を吸収する。
夜はイオン濃度差による水分吸収、呼吸で得たエネルギーで導管に「溶質」を送り込みの濃度を高めて、浸透圧が上昇、土壌の水を吸収。
樹木一本辺りだと、数十から数百リットルの水を蒸散する。(植物生理学会Q&A)
乾燥や温度上昇から身を守る為にすごい水の量がいることが分かる。
光合成だって水を使うじゃないかと思ったが、蒸散量の200分の一程度の微量で、空気中の水分で賄えるらしい。( Waseda Univercity 光合成の森)
眼からウロコ。

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さて、話題を戻して、樹木に降り注ぐ雨。
直達雨:直接地面へ、滴下雨:葉っぱを通じてぼたぼたと落ちる水滴、樹幹流:幹を流れ落ちる雨。
葉っぱから落ちる雨やすり抜けて直接降る雨は、経験上も確かに多い。風などで樹木が揺れるとバサバサ水が降ってくる。
もちろん、樹木の種類や樹冠密度によってこの数字は大きく変わる。

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雨水は、樹木を通じて、地面に到達するが、
森の土壌で、「森林の水源涵養機能」と呼ばれる3大機能により、涵養される。
水の貯留機能(=保水力)。二百年以上のブナだと一本で8トンもの水を保水するとか。
また、森の土壌は、裸地に比べれば3倍の浸透力をもっている。
裸地では79mm/時間だが、ブナ林では258mm/時間の吸収力があるらしい。すぐには水として下流へ流さない、洪水の緩和機能
土壌を通ると水質浄化機能が働く。
六甲のおいしい水、南アルプスの天然水など売り物にもなる。
そんなこんなで、水はすぐには川に流れずに、何層もの土壌は「緑のダム」になる。
常陸太田地区の検証で2.1年〜8年が必要だという結果もある。(森林総合研究所)

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森を通じて土壌に到達した雨は、25%(=425mm)が地表流、地表を伝って川へ、
35%(=595mm)は地面に浸透して、地中流として一部は湧き水となる。
一部は地下流として、山を下り・・・いつかは海へ。
トリチウム(半減期12.3年の水素の同位体)などを使った研究では神奈川県の秦野盆地(更新世の扇状地砂礫層)の地下水は7〜8年、
富士山の山麓(約1万年前の溶岩流)の湧水は数年〜十数年かかるとされている。(日本地下水学会)

川の流れだけを見ているとあっという間に海に流れていきそうだが、そんな簡単なものではない。
森に降る雨は、かように長い時間をかけて海に戻る。

山を歩いている時、滴り落ちる雨滴にも行く通りもの別れ道がある。 1滴1滴の道筋を運命を、人になぞられるのは考えすぎか・・・考え過ぎだ。

2020年5月5日[記] 〜新型コロナウイルスの渦中自宅にて、雨の行方を思う


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