なぜ、花はカラフルで葉は緑色なのか

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■花の色と虫の関係■

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サツキに頭を突っ込んでおいしく蜜をいただいているカラスアゲハ
このなにげない平和な風景。
この絵に隠された秘密!?を知れば、違う姿に見えてくる。
ちょっとマニアックな世界へのお誘い(笑)

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春はパステルな花が多い。
淡い色合いは、いかにも春らしい。
黄色はフクジュソウ、ムラサキはカタクリ、いずれもスプリングエフェメラル(春の妖精)と呼ばれる多年草。
2月〜3月、里では雪が解け始め、まだ樹木の芽生えが始まる前に、林床で真っ先に太陽の光を浴びて、短い間に成長して子孫を残す。
種子植物が、子孫を残すには、雌蕊に雄蕊の花粉を付け受精する必要がある。そこで出てくるのがポリネーター(送粉者)と呼ばれる昆虫達。
フクジュソウにはハチ、カタクリにはハチや蝶(ギフチョウが有名)が寄って来る。
昆虫はどうやって、そこに花があると分かるのか・・・

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日本養蜂協会HPによると、人は波長400nm~800nmまでが見えて、短波長の紫外線や長波長の赤外線域は見えない。
ミツバチは波長300nm~610nmと紫外線は見えるが、赤や赤外線は見えにくい。
色でいえば「紫外線を含めた紫域」が広く、「青」、「緑」、「黄色」、「オレンジ」までが見えて、赤や紫外線が見えにくいという。
なるほど・・・! 
「黄色」のフクジュソウ、「薄紫」のカタクリは良く見えるわけだ!
さらに、我々には見えないが、蜜標(ハニーガイド)は赤外線で違った色に見えて、花の中へ誘導しているらしい。

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春が過ぎ、4月になるとマメ科フジの花が咲く。
「薄紫色」の美しい。
注意深く花をみていると、ハチがぶんぶん羽音を立てて飛んでいることがある。
ハチはコマルハナバチ、丸みを帯びて毛があってミツバチより一回り大きい北方系のハチ。ヨーロッパでは普通。
フジは薄紫なので、「紫」は良く見えることだろう。
中央の「黄色」はハニーガイド!?か・・・ハチはそこを目掛けて突入しているに違いない。

また、蝶々は、人より広い視覚をもち、「紫外線」から・・・「赤色」まで、それも色受容細胞が6種類もあり、多くの色が判別できるらしい!

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冒頭のサツキカラスアゲハ。5月(さつき)の“なにげない”風景。
サツキは赤・・・赤が見えるのは蝶々、特にアゲハチョウが大好き。
サツキはアゲハチョウ狙いの花ということ。
よく見ると、花の中には赤い斑点があり、あれがハニーガイド(=蜜標)、たくみに蝶をガイドする。
更によく見と、頭一つでているのが雌蕊、雄蕊は奥に5本ある。両方とも先端が曲がっている。
花蜜は最奥にあるので蝶は頭を突っ込む、雄蕊の花粉が体に付く、次の花に移ると、体が出っ張った雌蕊に触れて花粉を付着させる。
なんたる、進化というか変化力! 
この写真一枚にもたくさんの秘密が隠されている事がお解りいただけただろうか!?。

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タテハチョウ科サカハチョウ キク科ヒヨドリソウ イシアブ? ツツジ科コメツツジ ・・・先日に冠山峠で見かけた。
6月からは初夏の花が咲き始め、 白い花 が多くなる。
白というのは、「無色」を意味する。 
そもそも目に見える色の意味は、その波長が反射して目が認知すること。
花が「黄色」に見えるのは、黄色以外は花が吸収して、黄色を反射しているから、目の視覚には「黄色」と映る。
「白」は、すべての波長を反射するから「白」に見えるらしい。「紫外線」をも反射している。ちなみに、すべてを吸収すると「黒」に見える。
ハチやアブにもチョウにだって、「白色」が見える。
それでは、
なぜ、夏は白か・・・紫外線相当強くなり、熱もあるので、花そのものを守る為か!?
夏は「緑」で溢れるので、その中の「白色」は目立つという説もあるが、言い換えれば、「緑」との対比ですべてを跳ね返している「白」は特別な色に見えるに違いない。
花の色が持つ意味合いは「色々」で、実に興味深い。

樹木や花は、長年の変化への対応で、昆虫を獲得する為に、様々な色、形、匂いに分化してきた。
たまたま、人はそれを愛でて楽しんでいる。

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最後は「植物の緑」
植物の葉はたいてい「緑色」、なぜ緑なのだろう?
光合成をする葉緑体が「緑」だから・・・もちろん、そう・・・葉緑体はなぜ「緑」なのだろう?
「緑」に見えるは、主に緑色を吸収していないといこと。なぜ、緑だけ? 
全色を吸収した方が光合成が良く出来るのでは、すると「黒色」になるのでは・・・という疑問が湧く。
確かに可視光線の中心付近の波長で最も光強度の大きい部分が有効に活用されないのか・・・すべては解明されていない。(2009年 植物生理学会QA)
葉緑体は緑を吸収しずらいらしいが、緑を全く取り込んでいないわけでなく、多くの細胞内で反射や散乱を繰り返すことで、それなりに吸収されていて、吸収しきれず漏れて、緑色が見えている。(『植物の生きる「仕組み」66題』)

海中の藻を含めて植物は光合成する組織が「緑色」、4億7千年前に陸に上陸した時も「緑色」、それが今の種子植物の「緑の繁栄」に繋がっている。
面々と続く、「緑の世界」にはなんらかの意味があるに違いない。
強力過ぎて吸収できないのか? 葉緑体の処理速度が遅いのか? 解明されていない世界がまだあの向こうにあるのか?
歴史の必然か、自然史の偶然か・・・これが解ればノーベル科学賞! 

ちょと、恥ずかしながら、動画も撮った。なかなか絵にならないが・・・まだまだ修行は続く。

2020年7月25日[記]  2021月2日7日[一部改]


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