赤松と黒松

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■“赤松と黒松は違うんだなぁ”■

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善光寺の「赤松」、見事な枝ぶり。この“くねくね”した感じが芸術に近い!
とても自然樹形とは思えない・・・、枝をくねらせる整形作業が大変だろう。
「牛に引かれて善光寺参り」、長野県長野市にある。赤松が多い。

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兼六園の唐崎松という「黒松」、これも見事な枝ぶり。
さすが、加賀百万石の金沢の庭園。ここは、黒松が多い。
荒々しい樹皮、シャープな葉が姿がカッコいい。

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先日、「なぞとき樹木探偵」というクイズ形式で樹木を説明するイベント参加した。場所は豊川市の東三河ふるさと公園。担当樹木は「黒松」と「赤松」。 
松は松・・・種類なんて興味がないと思う方々が多いのだが、いかに“興味をそそる解説”が出来るかがポイント。

日本に松の種類(マツ属)は数種類、アカマツ(赤松)、クロマツ(黒松)、ゴヨウマツ(五葉松)、リュウキュウマツ(琉球松)、ハイマツ(這松)などなど。
リュウキュウマツは沖縄に、ゴヨウマツは亜高山に、ハイマツは高山帯に自生するので、普段、中部でよく見かけるのはアカマツかクロマツ。この2種はたいていの人は何となく知っている。
見分け方で、一番分かり易いのが、樹皮の色、これが名前の由来になっている。「赤松」は赤く「黒松」は黒い。ただ、幼樹は分かりにくい。
因みに、新芽も「赤松」は赤い。「黒松」は黒・・・白い(笑)

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黒松は樹皮が亀甲状になるので、見た目にカッコよくなる。
亀甲がカッコいいがどうかは個人の趣味だが・・・(笑)
意外に知られていないのが、葉先を触ると、「赤松」は痛くないが、「黒松」はちくっと痛い。葉が硬くて丈夫。
「赤松」は女松と呼ばれる由縁、樹形もコントロールしやすいので盆栽や庭木になる。善光寺の松がその好例。

「黒松」は男松と呼ばれる。
荒々しいカッコよさシャープな樹形はそんな処からも来るかも知れない。その視点でやはり、盆栽や庭園樹に人気が出る。
この写真は高知の桂浜の黒松だが、一見不細工だが、よく見るとカッコ良い! 
これも、個人の嗜好か!

説明すると、「そうなんだ〜」と相当高い確率で言われるのが、自生する環境条件。
「赤松」は山地で、土地が痩せている尾根筋でも生える。「黒松」は海辺、潮風に強く(耐潮性)ので海岸沿いで生きていける。
日本は山地が多いので、赤松が多いだろう。ただ、黒松は海岸沿いでも防砂林や風防林として植栽も進んでいるので結構有名な場所が多い。
日本三大松原は海辺、三保の松原・虹の松原(唐津)・気比の松原(敦賀)、これ黒松。天の橋立も黒松。
冒頭の写真の「赤松」は山の中の長野市、「黒松」は日本海側の金沢・・・それぞれに地にあった松が植えてある。
両種とも、痩せた土地に真っ先に生えてくる、カッコ良く言えば、フロンティア植物。土地が肥えて他の植物が成長できる環境に変るといつかは、駆逐される。
暖温帯なら、尾根の赤松はカシやシイ類に、海岸の黒松はタブノキなど照葉樹林に変っていく。そして、またいつか山や海岸の地形が大きく環境が変わったら、真っ先に生えてくる!
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歴史をさかのぼってみると、江戸時代は本格的に街道が整備された。 一里塚で第一人気がエノキ、二番人気が「松」! そういえば浮世絵に松が良く出てこないですか?と問いかける。
山は赤松、海は黒松の原理に立つと、
中山道は赤松が多い、「中山道 望月の宿」・・・明らかに赤松だろう! 東海道の海沿いには黒松が多い、「東海道 由井の宿」・・・これは黒松でしょう!
イベント舞台である東三河ふるさと公園の近くに、天然記念物の松並木「御油の松並木」がある。弥次さん喜多さんがキツネに化かされたという松並木(笑)。ここは一山超えれば太平洋、きっと黒松!
参加者の方々は地元が多い。「皆さん、今度寄ったら、葉っぱを触って見てください」と投げたら、親御さんもお子さんも笑顔で「触って見ます!」と返してくれました! 
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でも、本当は何の為に「赤い」のか「黒い」のかを説明したい。この答えは持っていない。なぜ?なぜ?の勉強は続く。

-----------------後日---------------------

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山歩きの帰りに、東海道五十三次の35番目の「御油(ごゆ)宿の松並木を確認。やはり、「黒松」だった。
現存する松並木でも当時の雰囲気を残すものとして昭和19年に天然記念物に指定されている。
徳川家康の道路施策、「夏には緑の木陰で陽射しを遮り、冬には風や雪から旅人を守る」(豊川観光協マップ)のが目的だそうだ。
山一つ越えれば三河湾(太平洋)、潮風に耐えるにはやはり黒松が選ばれたのだろう。

2020年11月2日  2021年2月28日[一部改]


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